第35話 武丸慶次《けいじ》✖︎網川樹々《じゅじゅ》
文字数 1,201文字
「2回戦をはじめる! 武丸慶次 、網川樹々 ! 前へ!」
2人が広間中央に進み出た。
「はじめ!」
「俺、女の子を殴る趣味なんてないんだが、どうしたらいいんだよ」
慶次 は最初から戸惑っている。
慶次 は得物は使わず、素手の武闘家タイプだ。
対する樹々 は、ステッキを構え、攻撃に移ろうとする姿勢。
「よう、瑠川 」
「あら大海 ちゃん。武丸君、困ってるみたいね」
「へへ、あいつはお調子もんだけど、筋は通すやつだからな。女の子に手をあげることは絶対ないだろうな」
「武丸君はどのタイプ?」
「みてのとおり、近接型の格闘家だ。極限まで鍛え上げた肉体で、相手をぶちのめす。それだけだ」
「心気は?」
「あいつは不器用だからな。まぁ見てなって」
樹々 がステッキに心気を込めた。
しっとりと、かつ十分にステッキに心気が充満する。
同時に、樹々 の身体も心気に包まれる。
「行きます!」
地を蹴り、樹々 が慶次 に接近し、ステッキで打撃を繰り出す。
なかなかのスピードだ。
慶次 は素手で受けていく。
樹々 は思った。
「私の心気を込めた打撃を素手で難なく受けてる。こいつ、頑丈さが異常!」
一方慶次 は、仏頂面で頭を捻っている。
「どうしようかなあ、受けてるだけじゃ勝てないし、かといって女の子を殴れねぇし……」
樹々 の攻撃は何ら響いていないようだ。
樹々 は飛び退き、距離をとった。
「あ、あの!武丸さん!」
慶次 は驚いて応える。
「は、はい!」
「真面目にやってください!」
「え、ま、真面目にやってます! 考えてます!」
「何をですか?!」
「何をって……。君が女の子だから……」
「女だから何ですか?! だったら、そんなこと言ってられないようにしてあげます!樹々 の、召喚術!」
樹々 は目を瞑り、ステッキの先端に手の平をかざし、神経を集中した。
するとステッキの先端から黒い雲がモクモクと立ち上がり、たちまち男性の人型に造形されていく。
やがて屈強な格闘家風の男性の、影のような姿が造形された。
「それは召喚じゃないのでは……?」
慶次 が言った。
「召喚はここからです!」
樹々 は再びステッキに手の平をかざした。
ステッキからパッと上がった光が、造形物に吸収されていく。
「少年漫画ゴロゴロボールの主人公の思念を注入しました!」
「えっ?! あの大人気の?! 俺大好きなんだ!」
慶次 が叫ぶ。
「さあ戦いなさい、召喚影!」
「武丸君が言うとおり、あれは厳密には召喚じゃないわね。樹々 ちゃんの心気による造形と、彼女が考える理想の格闘家像を心気に凝縮して造形物に込めたってところか。ちょうどロボットにソフトをインストールするように」
瑠川 が言った。
「しかし、あの造形物やプログラムを込めた心気凝縮、あの子も只者じゃないわ。心気の量もさることながら、質も、天登 のような実用向きというよりも、アートのような創造性を感じるわね」
2人が広間中央に進み出た。
「はじめ!」
「俺、女の子を殴る趣味なんてないんだが、どうしたらいいんだよ」
対する
「よう、
「あら
「へへ、あいつはお調子もんだけど、筋は通すやつだからな。女の子に手をあげることは絶対ないだろうな」
「武丸君はどのタイプ?」
「みてのとおり、近接型の格闘家だ。極限まで鍛え上げた肉体で、相手をぶちのめす。それだけだ」
「心気は?」
「あいつは不器用だからな。まぁ見てなって」
しっとりと、かつ十分にステッキに心気が充満する。
同時に、
「行きます!」
地を蹴り、
なかなかのスピードだ。
「私の心気を込めた打撃を素手で難なく受けてる。こいつ、頑丈さが異常!」
一方
「どうしようかなあ、受けてるだけじゃ勝てないし、かといって女の子を殴れねぇし……」
「あ、あの!武丸さん!」
「は、はい!」
「真面目にやってください!」
「え、ま、真面目にやってます! 考えてます!」
「何をですか?!」
「何をって……。君が女の子だから……」
「女だから何ですか?! だったら、そんなこと言ってられないようにしてあげます!
するとステッキの先端から黒い雲がモクモクと立ち上がり、たちまち男性の人型に造形されていく。
やがて屈強な格闘家風の男性の、影のような姿が造形された。
「それは召喚じゃないのでは……?」
「召喚はここからです!」
ステッキからパッと上がった光が、造形物に吸収されていく。
「少年漫画ゴロゴロボールの主人公の思念を注入しました!」
「えっ?! あの大人気の?! 俺大好きなんだ!」
「さあ戦いなさい、召喚影!」
「武丸君が言うとおり、あれは厳密には召喚じゃないわね。
「しかし、あの造形物やプログラムを込めた心気凝縮、あの子も只者じゃないわ。心気の量もさることながら、質も、