空の味(5/23)

文字数 459文字

空を眺めるといいよ
先輩に教えてもらってから
毎朝、空を眺めるのだが
老眼が良くなったかどうかは分からない

空を舐めるといいよ
同僚に教えてもらってから
毎朝、空を舐めようとするのだが
一度も舐められたことがない

泳ぐ人
飲む人
掬う人
漂う人
掴む人

空は何でもありだ
心が広くて自由だ

僕は空を塗りたい
空色以外の色に塗りたい
あるいは染めたい

色が変わったら
味も変わるのだろうか?
舐めるといいよと教えてくれた同僚が
舐め方を教えてくれないのは
彼も舐めたことがないからじゃないかと思っている

僕は空を空でない存在にしたい

空が空だから
眺めたり
舐めたり
泳いだり
飲んだり
掬ったり
漂ったり
掴むのだ

空が空でなくなれば
空は僕だけの空になる
僕が僕でなくなれば
僕は空だけの僕になる

だから
僕は空を塗りたい
空色以外の色に塗りたい
あるいは染めたい

舐めることもできないのに
どのようにして塗るのかを考えながら
空を眺め続ける
今日はいつになく空色をしている
どうせ塗ることなんてできっこない
そんな余裕が聞こえてきたので
空色の絵具を空に向けてぶちまけたら
頭から僕が空色になった

空の味がした
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