第1話:ひまわりと太陽(その12)

文字数 930文字

今、ひまわりの目の前には、大きな和風造りの門がそびえたっている。

家を取り囲む塀の周りをずっと歩いてきたが、一般的な大きさの家が3、4軒ほど入りそうなぐらい広大な敷地だ。

太陽に無理やり引っ張られて、この豪邸に連れてこられたひまわりだったが、 門にかかげられていた表札の名前を見て「あれ?」と思った。

かかげられていた表札の名字は「雨夜」。
あまり見かけない名字ではあるが・・・

「雨夜・・・
あれ?この名字どこかで見たことが・・・?」

だが、どこで見たのかは思い出せない。

そうこうしている間に門から太陽が中に入り、
「おい、こっちだ」
と呼ぶのであわててついて行く。

「ここ・・桐島くんのお家なんですか?
でも・・名字が違いますよね?」

「うちじゃないけど、ばーちゃんち。
実家は高校から遠いから、ここで下宿させてもらってるんだ」

「へー・・にしても、大きなお家ですね・・」

門をくぐってからも、家の玄関にたどりつくまで、うっそうとした木々が通路の両端に森のように生えているので、そこを歩くと、まるで緑のトンネルをくぐっているようだった。

その長いトンネルを抜けると、絵葉書の写真のような日本庭園が広がり、その真ん中に和風のお屋敷がドンと建っていた。

「ただいまー」

太陽が玄関を開けると、
「太陽様、お帰りなさいませ。
あら?お客様もご一緒ですか?」
と着物を着たお手伝いさんらしき人が現れた。

お手伝いさんは、ひまわりをチラッと見て満面の笑みで、
「もしかして、太陽様の彼女さんですか?」
と聞いたため、ひまわりは一気にカーッと真っ赤になった。

「ちがいます!ちがいます!」と、
あわてて訂正しようとしたが、
「まさか。 趣味じゃねーよ」
と太陽がばっさり斬ったので、思わず拍子抜けした。

いや、まあ、確かに彼女じゃないので否定してくれて全く構わないのだが、「趣味じゃない」とまではっきり言われると、若干心がチクッとするものである。

でも気が弱いので、結局のところ何も言えないのだが・・・

「それより、ばーちゃんいる?」

「ハイ、大奥様はいらっしゃいますよ」

「じゃあ、例の『助手』を見つけて来たって伝えてくれ」

「ハイ、かしこまりました」

2人の会話を聞いていたひまわりは首をかしげた。

『助手?助手って何だろう・・・?』
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み