第1話:ひまわりと太陽(その1)

文字数 1,005文字

それは、いつもと変わらない朝だった。

ひまわりは、使い慣れているタロットカードを手際よく机の上に並べる。

そして一呼吸してから1枚カードを開いた。

そのカードは「運命の輪」。
リング(輪)が描かれているカードである。

「運命の輪・・・。
はて?誰かと出会う予感・・・?」

何気ない朝の日課である占いであったが、このタロットカードが示した通り、この瞬間から、ひまわりの未来が大きく動き始めたのだった。

*************

キーンコーンカーンコーン

県立北宮高校の朝のチャイムが校内に響ひびきわたる。

本鈴が鳴る前に教室に入ろうと、生徒達は少しあわてながら廊下を走り出した。

「ひまわりちゃ~ん!」

名前を呼ばれたひまわりは、はっと気づいてふり返る。

「ミドリちゃん、おはよう」

「おはよう~!
ねえ、ねえ、ひまわりちゃん、今日の私の運勢どうだった?」

「えーとね・・、確か今日は勉強運が良いみたいですよ」

「あ!じゃあ、この前のテストの結果が良いのかな?」

「かもしれないですね♪」

夏野ひまわり、高校1年生。

成績、スポーツなど特に目立ったこともなく、ちょっとおとなしめのどこにでもいそうな普通の女の子。

ただ、少し人と違っているところといえば「占い」の技術を持っているところかもしれない。

今日の運勢を一通り聞いたミドリは、ひまわりの顔をぐっとのぞきこんだ。

「ひまわりちゃんの『タロット占い』って、ほんとにすごく当たるよね。
昨日の恋愛運も当たったし、一昨日の健康運も当たったし、絶対将来『カリスマ占い師』になれるって!」

そう誉められたひまわりは、あわてて首を横にふる。

「ないです!ないない!
私の占いは単なる趣味レベルですから!
当たったのも偶然ぐうせんなんですよ」

ミドリは顔をしかめる。

「偶然って・・
だってひまわりちゃんのおばあさんは、テレビや雑誌で取り上げられるぐらい有名な占い師じゃない。
絶対、その才能を引きついだのよ!」

「いや・・そんなことは・・・」

そう言ってひまわりは、下を向いてしまった。

友達のミドリは、そんなひまわりに毎日ヤキモキしている。
ひまわりを誉ほめてもいつも自信なさそうに否定するからだ。

「もーっ!
ひまわりちゃんったら、いっつも自信がないんだから!
絶対、ひまわりちゃんは占いの才能があるって!
占いマニアの私が言ってるんだから、もっと自信持ちなさい!」

「ハハハハ・・・」

ミドリに今日も説教されて、ひまわりは苦笑いするしかなかった。

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