第1話:ひまわりと太陽(その11)

文字数 1,157文字

放課後の校舎はほとんど生徒達もいなくなり、昼間の騒がしさがウソのように静まり返っている。

ひまわりは太陽に引っ張られ、誰もいない4階の多目的教室に連れてこられた。

太陽とは面識もなく、いったい何の用なのか全く分からない。

「あ・・・あの・・・話って・・・」

突然「ダン!」と太陽が壁に手を当て、ひまわりにグイっと顔を近づけて言った。

「あんた、占いしている時に魔法を使っただろ?」

「へ?」

予期もせぬことを言われ、ひまわりはしばらくポカーンと口を開けていた。

占いをしている時に魔法?

魔法なんて使った記憶もないし、そもそも魔法なんてこの世の中にあるんだろうか?

「う・・・占いは確かにやりましたけど、魔法は使ってないですよ?」

ひまわりがそう答えると、太陽は
「まだとぼける気か!?」
と、全くひまわりの言葉を信用していない様子である。

『え・・・この人、優等生の桐島くんですよね?
もっと普段はにこやかでさわやかで優しいはずなのに、今目の前にいるこの人は誰なんです?』

太陽が突然見せたギャップに、ひまわりは頭の中がゴチャゴチャになった。

だが太陽は、そんなことおかまいなしにどんどんつっかかってくる。

「それともあれか!?
おまえも、おれの魔力が弱いからってバカにしてんのかよ」

「ま・・・魔力?」

またもや聞きなれない言葉が出てきて、ひまわりは首をかしげた。

「くっそーっ!!
ばーちゃんも大地もみんなしておれのことバカにしやがって!!」

そう言いながら太陽は壁をダンダンと叩いている。

なんかよく分からないが、どうも家族らしき人達に太陽はバカにされているようだ。

1人悔しがっている太陽に、恐る恐るひまわりは声をかけた。

「す・・・すいません・・・
私、本当に何にも分からないんですけど・・・」

「え?」

困惑しているひまわりの顔を見た太陽は、
「あんた・・・魔法を使っていることに気づいてないのか?」
と言うので、ひまわりは驚き、
「魔法なんて使えるわけないじゃないですか!
そんなの映画やマンガの世界のお話でしか見たことがないですよ」
と答えた。

太陽はみるみる青くなって、1人ブツブツ何か言っている。

「え・・・もしかしておれ・・・また見間違えた?
いやいや、絶対『魔法陣』見えたって・・・」

そんな怪しげな言動を繰り返す太陽から、ひまわりは一歩一歩離れながら、
「あの・・・私はこれで・・・」
とその場から立ち去ろうとしたので、太陽があわてて引き止める。

「ちょっと待った!
おれのヒミツを知ったからには、ただでは帰せないんだよね♪」

にっこり笑顔の太陽だったが、いつものようなさわやかスマイルではなく、何か嫌な予感を感じさせる笑顔だった・・・。

太陽にグイグイ引っ張られ、どこかに連れていかれているひまわり。

どこに行くのか、何をされるのか全く分からず、不安な気持ちでいっぱいだった。
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