第31話
文字数 1,110文字
龍に乗るのなんて初めてで、どうなることかと思ったけれど、
龍の背中の上は、まるで魔法がかかったように心地よく、
風を切りながら進んでいくと、
辺りの景色が、キラキラと輝いてみえた。
途中、たくさんのモンスターがうろついていたが、
黒龍の姿をみると、恐いのか、パラパラと散っていった。
もしかしたら、ここでは一目置かれている存在なのかもしれない。
しばらくそんな感じで亜空間を泳ぐように進んでいくと、
空気がどんどん冷たくなっていき、
辺りの様相が変わりだした。
少しスピードを落とし、辺りをさぐるように動く私達。
カナトさんの体は、ブレスレットから無機質に張られた
今にも消え入りそうな弱弱しいバリアに守られていた。
そしてカナトさんの体は、気を失っている為か、
亜空間に漂ってゆっくりと流されかかっていた。
紗奈ちゃん、カナトは意識を失っていても、
無意識に外部に警戒しているのかも。
…それか、そのブレスレットの力なのか……。
ずっと亜空間の敵と戦ってただろうし、
多分、僕と黒龍の気配を感じ取っているんだと思う。
抱きしめたカナトさんは、23歳の姿ではなく、
写真でみた姿……。
多分18歳くらい……の姿になっている気がした。