第36話    カケルとミライ   ②

文字数 1,917文字

カケルは自分がどういう経緯で組織に来たのかがわからなかった。物心がつく前から実の両親の事は何も知らず、
 カケルは組織の中で成長していった。訓練生時代は、仲間が#自動人形__オートマドール__#に襲われ次々と命を落していった。そして、離脱したものは、二度と姿を見せる事はなかった。
 アルカナの隣には、今で言う東京ドームより倍ぐらいの広さの練習場が併設されていた。戦いに出る前の子供達は、このドーム場内でマシンの操縦の仕方や実際の戦闘に備えた訓練をしていた。カケル達は、それは生きるための訓練だと言い聞かされていた。#自動人形__オートマドール__#が自由意思を持ち、人間を凌駕しようとした殺伐な次代ー。その為、それには何の疑問を抱く者はいなく、カケル達は当然の事だと認識していた。

 そんなある日の事だった。友人の一人がマシンに乗っての訓練中に重症を負い、組織の#自動人形__オートマドール__#に抱きかかえられそのまま姿を現さなくなった。通り過ぎざま、まるで深い深い暗い宇宙にいるかのような静寂で重い空気に包まれた。カチカチと、足音だけが木霊したのだった。


 それから5日後ー、少年は姿を姿を現した。
「レオ、大丈夫だったか?何もされなかったか?」
「俺は大丈夫だよ。」
レオは、カケルに言った。何処かしら顔が歪んでいたのだ。
「お前…よく戻ってきたな…」
「まだ、戦えるだろって…しかし、何で俺だけ、助かったんだろう?」
少年は無理に笑っているように感じた。しかし、顔が明らかに歪んでおり般若のお面の様な形相になっていた。
「なあ、お前、サイモンに何かされなかったか…? 」
「いや…」
レオは、何処かしら明らかに何かを隠しているかのようだった。
「なあ…お前、今度、マシン見に行くか?レイジが凄いの連れてくるんだ。…」
カケルは話を変えた。
「お、おう…それは、面白そうだな…」
レオは明らかに無理しているようであった。
 すると、通りで、少女が泣きながら走っているのが見えた。
「どうしたんだう?あの子…」
「あ、あの娘はやめとけ。やばい娘だから。」
「何で…?」
「俺達と次元が違うんだよ。」
「どう言う事ー。俺達と同じジェネシスじゃないかー?」
カケルは訝しがり、じっと少女を見る。
「そのまんまだ。あの子は特別なんだ。何があっても同情しては駄目だ。」
レオは激しく首を横に振った。
「何で…?だって…」
「驚異となるからだよ。さ、行くぞ。」
レオは、カケルの背中を押した。


その次の日の事だったー。

組織の中で事件が起きた。
試用中の#自動人形__オートマドール__#が、突如、暴走し施設内の者を襲いかかってきた。

少女が突如暴走したマシンに追われていた。


少女は泣きながら逃げていた。
例の、この前レオと見た少女である。確か、レオを抱いたマシンと共に歩いてもいたー。

少女は出っぱった石に躓き、うつ伏せで倒れた。そこに#自動人形__オートマドール__#が、四足走行で犬の様な走りで猛スピードで、迫ってくる。 

カケルは、どうにかしてその少女を助けようと思った。
カケルは咄嗟に少女とマシンの間に立ちはだかると、じっと睨みつけた。しかし、どう頭を捻っても策は思いつかない。

ー読め…!読むんだ…!流れを読め…!

 カケルは戦いがそこまで好きではなく、得意でもなかった。傷つけ傷つき合うことに疑問を感じていたのだけど。そのため、ひたすら頭脳を使う事で、解決に導こうと考えていた。
 カケルは、ひたすら睨みを聞かせ僅かな電流の流れや向きを計測した。そして、マシンの電磁波の流れを先読みすると、 素早く身を躱わす。マシンは、次々と高速パンチを繰り出すが、カケルはそれを猫のようなスピードで交わすと、マシンの額目掛けて磁石を投げつけた。
 すると、自動人形は小刻みに激しく振動し始めた。#自動人形__オートマドール__#の身体は、徐々に錆を生やし、ガチガチ大きな音を立てながら、ゆらゆら揺れたのだ。ーと、その瞬間、バチバチと強烈な電圧で彼は包まれた。
カケルは、少女を起こすと、今のうちにその場から立ち去った。
少女は恥ずかしそうに
「ありがとう。」
と言い、その場を走り去った。

「カケル、大丈夫だったか?」
バズーカを携えたレオが、後方から声を掛けてきた。
「うん。」
「いや、そっちの大丈夫じゃなくて。ほら。アイツだよ。」
「ただの女の子じゃないかー?」
「あの子、怖いだろ?」
「そうか…?それより、お前、助けてくれたんだな…」
「ああ。コレか?組織から掻っ払って来たものだよ。ホントに凄い威力だよな…」
レオは、感心してバズーカの中を覗いていた。
 それが、カケルが初めて#力__スキル__#を発動した日でもあった。
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