孤独と変身

文字数 469文字

たとえばこの先結婚したり子を授かったり反対に何もかもうまく運ばず実家に帰り親の脛をかじりながら生きることになったとしても、正しい意味でずっと孤独でいたいと思う。矛盾みたいな気もするが私は、他人との関わりではなく孤独の中でこそ人のかたちは変わると思っていて、でもよく考えればほんらい変身はごく秘密裡にとり行われる儀式であるから矛盾ではないのかもしれない。とにかくそうやってかたちを変えていくことが差し当たり私にとっては生きることの内実で、だからつまりはそういうことだ。私にとって私が変わる瞬間というのはたとえば朝日が差しこむ風呂場とか、それが北海道の山のなかにある露天風呂だったりすればなおさらで、朝の光をはんぶん透過してはんぶん反射する水面を見ているような時だ。でも風呂のなかでは眼鏡もコンタクトレンズもしていないからそういう景色は〇・一未満の視力でぼんやり見るしかないのだが、でも一人きりであれば、記憶の中でその景色をいかようにも鮮明にきちんとディテールまで思い出すことが可能になる。そしてその光を見る前の自分に私は戻ることができない。
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