第30話

文字数 376文字

スピンオフ篇#階段1

 お父さんとの思い出は、いつもわたしを内側から支えてくれるはずだった。でも、もうだめかもしれない。チャンスは何度もあったのに、どのユニットにも入れなかった。

 1年前にオーディションに受かってこの階段を駆け上った時には、気持ちも階段もキラキラしていた。でも今のわたしは、同じ階段をすっかり気落ちして降りている。

 やっぱりわたしは弱い。人と競ったり、一歩でも前に出ようとする気迫が足りない。

 このまま寮に帰って、すぐにみんなと顔を合わせるのもつらい。ちょっとブラブラして帰ろう。わたしが安心してブラブラできるのは、そのへんの商店街くらいだけど。

 あ、ポスターがある。
 近くでお祭りやってるんだ。
 行ってみよう。

 門限を守らないと、ヤマノウチさんにこってりしぼられるらしいけど、まだ間に合う。何となく見て回って、焼きそばでも食べて帰ろう。
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