第12話

文字数 573文字

 ハルです。

 オレたちは、数え切れないくらい楽曲を練習してきた。リハーサルも念入りにやらせてもらって、すでに目をつぶってもできるにはなっている。

 あとは生活指導が呼びに来れば、舞台袖まで歩いて行くだけ。

 ところが、だ。

 テツが全員に気合いを入れたところで、サナが泣き出してしまった。緊張しすぎて泣けてきたんだろうな。
 サナに泣かれては、オレたちは2コ上の兄キとして、無理にでも落ち着きを見せるしかないじゃないか。

 テツがテーブルの上のティッシュを取って、すぐにサナの涙を拭いてやっていた。幸い化粧がくずれるほどの大泣きではない。

「これまでと同じだろう」
「サナがまん中で、オレたちが周りを固める」

 と、テツがぼそっと言う。
 
 オレたちはこんなところで必要もないのに、サッとサナを囲んでみせた。
 サナは少しはにかんだようにテツを見てから、オレたちに軽く微笑んだ。

 間もなく、ノックの音と同時にドアが開き、生活指導が行くぞと合図してきた。
 
 オレたちはサナを囲んだまま、サナの歩調に合わせて、デビューのステージへ向けて歩き出した。

              
              
             (デビュー編 終わり)

 
 次回からは、「生活指導氏の解説」「メンバーのつぶやき」「ひみつのこと」「気になるアレ」などがあり、連載は続きます。
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