第十四話 誰のせい
文字数 1,136文字
おや、どうした? 食が進んどらんようじゃが。食べんと身体に毒じゃぞ。
昼間のことなら、そう気にすることはない。片付けや修繕も、数日あれば終わるじゃろ。
ねえ、おじい。あたし……ここに来ちゃいけなかったんじゃないかな……。
だって、だって……! あたしのせいって、皆が……。
あたしだって、がんばってた! スライムのことだって、退治したら皆ほめてくれたし……。
なのに、皆があたしのせいだって……! あたしが来てから悪いことばかりだって……!!
あたしが……あたしが来なかったら、村の皆は今まで通り静かに暮らせてたんでしょ!?
静かに暮せる、か……それは本当に良いことなのかの?
今までたまたまこの村は大きな被害に遭わずに来られた。じゃが、それはたまたまじゃ。
自分の思い通りにならないのが、この世の中というもんじゃろ。
思い通りに生きてきた人間は、思い通りにならないことがあると、自分は悪くない、悪いのは他人だと責めたくなるもんじゃ。
世の中には、思い通りにいかんことなんて山ほどある。色んな人間がおるし、色んな考え方がある。
今回のことだって、誰のせいなんて言い出したらキリがありゃせん。仮にお前さんのせいだと言うのなら、お前さんを村に引き入れたワシのせいでもある。
色々な壁に直面して得た経験は、自分らが前に進むための力になる。
そのためには、村の中に閉じこもって静かに暮らせるよう願うだけでは足りんのじゃないかの。
で、でも……やっぱり何もないなら、その方がいいんじゃないの……?
もし村から出なかったら、せがれは死ななかったかもしれん。
せがれが死んだのは悲しいことじゃし、もう会うことができないというのは辛いことじゃ。
じゃが、ワシは自分の子が自分の目と耳で世界を知ろうとして村を出たことを誇りに思っとる。
あやつが、この世界のどこかで、あやつ自身の生きる道を見つけたはずじゃと、そう信じとる。
少し話しすぎたの。何にせよ、今回のことは村の連中にとっても、いい経験になったはずじゃ。
あやつらのこと、どうか許してやってくれんかの。本来は気のいい連中なんじゃが、他人と触れ合うのに慣れとらんからの。不器用なんじゃよ。
辛いことを思い出させちゃって……その……ごめんなさい。それと、村のことも……明日、皆にちゃんと謝ってみる……。
ふむ、そうか。お前さんがそうしたいのなら、それがいいかもしれんの。
さ、もう休んだほうがいい。明日もやらなきゃならんことは山ほどあるでの。
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