第七話 秘められた能力!?
文字数 1,439文字
せっせ、せっせ。
あ、水が足りないみたいね。
こっちは……うん、大丈夫。
あのグータラで食っちゃ寝生活を送っていた姫様が、今では早寝早起きしてお仕事に……アシュタロトは感激しています!
あら、姫様からプレゼントなんて珍しいですね。
いつも他人から奪うだけなのに……。
……って、きゃああああ!
い、いもむし……とってぇ!!(泣
おお、こりゃあ大きないもむしじゃのう。
どれ、逃してやらんとな。ほれ。
ねえ、いもむしって野菜の葉っぱを食べちゃうんでしょ?
じゃあ、おじいにとっては敵みたいなもんじゃない。逃がしちゃっていいの?
敵……と言えばそうなるのかもしれんの。
じゃが、いもむしも美味い野菜を食べたくなるものじゃろ。
まあ、どうせなら美味しいほうがいいだろうけど……。
せっかく作ってるのに、取られたらもったいないじゃん。
野菜を作っているのはワシじゃが、ワシが作れるのはこの世界のおかげじゃよ。
それが誰のものかなんてことは、人が勝手に決めたものじゃないかの。
そうそう。今日はこれから出かけないといかんから、あとのことは頼んだぞ。
このペースなら、おじいが帰ってくるまでにだいぶ進みそうね。
がんばらなくちゃ!
あ、あそこに何か動くものが……。
あれは……野良スライムです!!
え? スライムって魔物でしょ?
なら、味方ってことじゃない。
いえ、お嬢。
人間界の魔物は野良化しておりますゆえ、我らには従いませぬ。
以前の人間と魔族との戦争の際にはぐれたりして、魔界に帰れなくなった者達の子孫が、野良魔物として人間界に住みついているのです。
むしろ、我らを敵だと思って襲いかかってくるかもしれませぬな。
我らはか弱い猫ですからな。
お嬢に守っていただくしかないでしょうな。
フッ……ご安心下さい。
仮にもお嬢は魔王様のご息女。常人とは違います。
そっか……!!
今まで魔法とか使えた試しがなかったけど、ピンチによって秘められた能力が目覚めるってわけね……!
いえ、姫様の魔法の能力はゼロです、ゼロ。
これっぽっちもありません。皆無です。
授業だってサボってばかりでしたし。
才能もなく努力もせず、いきなり覚醒して特別な能力をゲットなんて都合のいい話はありません。現実を見て下さい。
ま、まあ、そりゃそうかもしれないけど……。
じゃあ常人と違うって、どういうことよ?
魔界広しといえど、お嬢の頭ほど頑丈なものは滅多にござらぬ。
身体も頑丈ですが、とりわけ頭の硬さは抜きん出ています。
いざとなれば釘を打ち、壁を破ることさえ可能かと。
いけない、姫様!
スライムがもうすぐそこまで来ています!!
当たって砕けろといいますし、まずはドーンと頭突きでやってやりましょう!
えーい、もうこうなったらどうにでもなれよ!
いくわよ!!
ドーーーーン!
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