第二十二話 かんきょーてきおーのーりょく

文字数 1,305文字

どうやら、あの洞窟がゴブリン達のねぐらとなっているようですな。
じゃあ、さっそく族長に話をつけにいくわよ!
いえ、もう少し待って、ゴブリン達の規模や警備体制などの情報を得た方がいいでしょう。
ええー。
大丈夫かなあ、アシュタロト……。
ああ見えてもトップクラスの大悪魔。
数々の修羅場を経験しておりますから、心配は無用かと。
それに、もともとゴブリンは動物好きですから、それほどひどい事態にはなりますまい。
さっきもそんなこと言ってたわよね。畜産がどうとか。
左様です。魔界の畜産業は、ほぼゴブリンが手がけておりますな。
「ほぼ」ってのは?
豚はオークの担当ですな。
やっぱ共食いじゃん……。
どう、何か動きはあった?
いえ、今のところは何も。
入り口の見張り役は、一定時間毎に交代しているようですな。
ゴブリンって意外としっかりしてるのね。
社会性の高さでは魔界でも随一ですな。
協調性に富んでおり、よく働きよく遊びます。
魔界においても、農業や土木建築等、チームワークが必要な面で特に力を発揮しております。
ふむふむ。集団行動に向いてるわけね。
子だくさんで兄弟姉妹が多いのも、集団の結束力を高めていますな。
そんなに多いんだ?
「ゴブリン皆兄弟」という言葉も広まっているくらいですからな。
そういえば、ゴブリンには弱点ってないのかしら?
そうですな。個体単位でいうと、ゴブリンは人間より体格も力も劣ります。
へえ。人間より力がないなら、もし族長が従わない場合でも何とかなりそうね。
また、寿命は人間と比べるとかなり短くなっております。
だいたい十五年から、長くて二十年といったところですかな。
ずいぶん早く死んじゃうのね。
ただ、これは個体として見れば弱点ですが、種族全体で見ればメリットとなりますな。
どうして?
子だくさんの話と関連しますが、次々に世代を交代することで、その時々の環境に適した形に変化していくことができるからですな。
つまり、暑さや寒さなど、その土地や時代による環境の変化に柔軟に適応できる、と。
なんか難しいわね……。
例えば火山の近くに住むと、暑さや火に対する耐性を持って生まれた者が生き残っていき、世代を重ねるうちに火山に適したゴブリンの一派ができあがる、と。
へえ、便利なものね。
でもわざわざ厳しい場所に住まなくてもいいような…。
人間に追われるなどして、厳しい環境を選択しなければならない場合もありますからな。
そっか……。
また、ゴブリンの場合は、なんでも食べる雑食性も環境への適応性を高めています。
なんでも?
道ばたの雑草から、木の実、木の幹、木の根っ子に至るまで。
好き嫌いがないのは、お嬢にも見習っていただきたいところですな。
へええ。木の根っ子なんか食べるんだ……。
……。
動物は?
各種動物の肉もよく食べますな。
……。
その……環境適応能力とかで、こっちのゴブリンが猫を食べるようになった、なんてことはないわよね?
フン、何を言い出すかと思えば。
全く、お嬢の想像力には驚かされますな。
そ、そうよね、アハハ……。
さすがの我でも思いつきませんでしたが、言われてみれば確かに。
お嬢もやりますな。ハハハ……。
ハハハ……じゃないわよ!
アシュタロト、ヤバいじゃん!!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

エルスリーゼ
魔王の娘。世間知らずでわがまま放題。

アシュタロト
エルスリーゼの教育係。由緒ある大悪魔だが、姫のおてんばっぷりに手を焼いている。

ベリアル
エルスリーゼの教育係。教育面はアシュタロトに任せて日向ぼっこをしていることが多い。

エチゴヤン

本名は越後屋六右衛門スケヤス。魔界と人間界を行き来して商売をしている。

おじいさん

一行が最初に訪れた村で農業を営んでいる。

魔王

エルスリーゼの父。

ヴィンドルフ

盗賊団『暁ノ狼』の頭領。

クラウス

勇者を目指している少年。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色