拐かし 始末屋石田光成④

[歴史]

26

1,662

0件のファンレター

 武芸の心得がある小夜は、打刀と脇差を帯びても、ふらつきませんね。石田は小夜の腰を撫でた。

 喜助とお京の夫婦が仙台から江戸へ出た。夫婦は千住大橋南詰め中村町の、飯屋も営んでいる旅篭中村屋に逗留した。中村屋の飯屋で昼飯を食していると、筋向かいの口入れ屋青葉屋の番頭の吉二が飯屋に来て、奉公先を世話するという。
 夫婦は妙だと思いながらも、ほかに頼る当ても無いので青葉屋の番頭の話を承諾した。

 半月ほど、喜助とお京は口入れ屋の青葉屋で奉公人と下女の仕事をした。
 その後、廻船問屋紀州屋に奉公したが、喜助は女房のお京と臥所を離され、喜助は荷物運び、お京は下女の仕事となって、顔を見る機会がなくなった。そうこうするうちに、荷物運びの人足はいらぬ、と紀州屋から追いだされた。
 喜助は何度も紀州屋へお京を訪ねるが、紀州屋は知らぬ振りだ。口入れ屋の青葉屋に女房のお京の行方を問いただすが、番頭の吉二は知らぬ存ぜぬと白を切って埒が開かない。
 そこで喜助は始末屋の石田に、女房お京の捜索を依頼した。単なる人捜しでは無いのは明らかだ。石田は、喜助の依頼を与力の藤堂八郎へ伝えた。
 藤堂八郎と石田は、秘策を思いついた・・・・。