十五 捕縛

文字数 877文字

  紀州屋内の絶叫を聞き、紀州屋の外で待機していた石田の仲間と、町人を装って待機していた藤堂八郎たち町方と多恵之介と佐恵が、いっき紀州屋に雪崩こんで、血飛沫が飛び散った奥座敷で腰を抜かしている紀州屋の主の荘兵衛と、青葉屋の主の青右衞門、番頭の吉二、紀州屋の奉公人たちを捕縛した。
 石田と小夜は、手や腕を斬り跳ばされた用心棒や、腕を折られた用心棒たちを見た。
 紀州屋の奥座敷と奥庭に倒れている用心棒は十五人。紀州屋をはじめ、皆、死罪になる者たちだ。裁きで死罪が下されるまで死なぬように、皆、町方に傷を血止めされ、折れた腕を添木されている。

「女たちはどこに、何人居るっ。牢問を受けて苦しみたくなければ吐けっ」
 藤堂八郎が紀州屋の主の荘兵衛をの捕縛縄を締め上げて厳しく問いただした。
「御堀端の二つの土蔵に三十二人いる・・・」
「女たちは土蔵だっ。
 岡野っ、ここで手下と此奴らを見張り、此奴ら我詮議して余罪を聞き出せっ。
 抜け荷もしているはずだっ」
「はいっ」
 松原っ、野村っ、外に居る手下を率いて、土蔵と廻船の用心棒と人足を捕らえろっ」
「はいっ」
 藤堂八郎は捕縛した者たちを松原源太郎と岡野智永と手下たちに任せ、同心野村一太郎を引き連れて紀州屋を出た。

 藤堂八郎と野村一太郎は外で待機している手下と共に、お堀端にある土蔵とお堀の廻船を囲み、捕り方を率いて、掘端の土蔵と掘に浮んだ廻船にいる用心棒と人足を取り押さえた。
「女たちはどこだっ。吐けっ」
 藤堂八郎が用心棒を問いただした。
「地下の座敷牢に居る・・・」
「地下にはどうやって行くんだ。吐けっ」
 野村一太郎が用心棒を締め上げた。
「長持ちの下に地下への入り口がある・・・」と用心棒。
「土蔵の長持ちの下だっ長持ちをどかせっ」
 野村一太郎が手下たちに長持ちを移動させた。地下への降り口が現われた。
 手下たちは拐かされた女たちを保護した。喜助の女房の京も無事だった。
「女たちを、みな、見つけたなっ」
「はいっ」
「皆を北町奉行所へ保護せよ。用心棒たち此奴らを紀州屋にしょっ引けっ」
 藤堂八郎は、野村一太郎と手下たちに命じた。 
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