第4話 シドニー写真の撮り方 ~隠れ絶景スポット(写真有)~
文字数 2,217文字
ちょっとした工夫で楽しさは増す。
旅においても少しの工夫で楽しい思い出をたくさん作ることができる。
シドニーでのこと。
私と広沢は入国審査を終え、待望のシドニーの街へと繰り出す。
空港の観光案内所で貰った市街地図を片手にシドニー・ハーバーを目指す。
目的地はシドニーの象徴オペラハウス。
海に突き出した岬の先端に、大きな鳥が羽根を広げたような形状の美しい白色の屋根が見える。
海岸沿いの道を異国の風景を楽しみながら歩きオペラハウスに到着。
「おぉ、これがオペラハウスかぁ」
空に高くそびえる三角形の屋根を見上げる。
写真で見ていたオペラハウスが、今、目の前にある。
ひとしきり感動が込み上げてくる。
屋根の形状があまりにも面白く、遊園地のアトラクションのようで登ってみたくなる。
……が、「日本人学生ハメ外す」と朝刊のニュースになるといけないのでやめておこう。
シドニーの街はとにかく美しい。何処を切り取っても絵ハガキのようだ。
普通に街を歩いていても、思わず写真を撮りたくなる場所が至る所にある。
広沢もそこかしこにカメラを向けてシャッターを切る。
しかし、あることに気がついた。
――いや、待てよ……
このような美しい景色の中、果たして普通に写真を撮っても良いのだろうか。
いや、良くないだろう。
自分たちが写真に写る時には、美観を維持する為の何かしらの手立てが必要だ。
絵ハガキのような美しい街の中、ただ漫然と立ちつくした姿で自分たちが写り込むのは、あまりにも味気ない。これではせっかくの景観も台無しだ。
この美しい街並の中に写り込むのであれば、やはりそれなりに美しく写り込むべきではないだろうか。私は広沢に提案した。
「俺たちが写る時はポーズを決めて写ろうぜ」
タレント写真集のごとく、シドニーの美しい街に溶け込むように格好をつけて写ろうというのである。
「おぉ、やってみよう」広沢も同意。
――シドニー撮影会、開催!
私は海辺の石段に足を掛け、メンズなんたら のモデルのように思いっきりポーズを決めた。
実際やってみて判ったことがある。
「うぐっ、なるほど、こ、これはこれで……」
――は、恥ずかしぃい……
マンガのような大きな汗がタラリとこめかみ辺りに貼りついている気がする。
誰が見ている訳でもないが、思いのほか恥ずかしい。
ポーズを決めつつ「くっ、広沢、早くシャッター押してくれぇえ!」と心で念じる。
ところが、カメラを構える広沢が笑顔で言った。
「おっ!それ、いいぞ!」
どうやら、傍から見ると、好評らしい。
自分の頭の中でも、自分のポーズと景色を合成させてみた。
やはり、ただ突っ立っているよりは、確実にポーズを決めた方がよい。
「俺は間違っては……いない……」
恥ずかしさを感じつつも、ボソッと尾崎豊のように自分にそう言い聞かせた。
――パシャリ!
ポーズをとるのは恥ずかしいが、せっかく美しい海外の街に来たのだ。
少しでも良い写真を撮りたい。その想いが勝ったわけである。
――ところが……
このモデルのような写真を数枚撮ると、すぐに慣れてしまった。
味を占めた私たちは、次々とポーズを決めて写真を撮った。
写真集の海外撮影のようで、益々楽しくなってきた。
ロックス地区。レンガ造りの家が立ち並ぶ古い街並み。
アーガイルセンター広場には、大きな石板に人型のシルエットが彫られた記念碑がある。
「うむ、次はどんなポーズで撮ろうか」
シャッターを押す広沢に構図を伝える。
「あの石碑を画面右に入れて、あの位置まで写真に収めてくれ」
「うむ、了解」
――パシャリ!
もはや本気で写真集でも出すのだろうかというノリである。
そんな中、ここで途轍もなく素晴らしい出来事が起きた。
この写真撮影方法が、さらに良い効果を生み出した。
記念に残る良い写真を撮ろうと「ここぞ」という美しい景観のスポットを探し始めた。
すると偶然にも素晴らしい「隠れ絶景スポット」を見つけてしまったのである。
――おおおおおっ!
「ここは絶景だなぁ」
あまりの美しさに驚嘆の声を上げた。
そこは高台にある天文台の裏。そう裏である。
たまたま、「なんとなく気になる小径」を見つけ入って行くと天文台の裏側に出た。
そこに驚くほどの絶景スポットがあった。
誰もいない静かな場所。小高い丘に見事な大木があり、ハーバーブリッジが一望に見渡せる。
日本から持ってきたガイドブックにも載っていない「隠れ絶景スポット」である。
「おぉ、ここは素晴らしい写真が撮れるぞ」
アングルを指定して、ポーズを決めた。
――パシャリ!
「うむ、これはイイ」広沢が唸った。
高台から見渡すシドニーの街の景色は、まさに絶景。
こうして私たちはシドニーの街を十二分に楽しんだ。
「あぁ、このポーズ、ちょっと恥ずかしいなぁ」
正直、そのようにも感じるが、やはり旅の思い出は楽しい方がよい。
シドニーの美しい街でおこなった写真撮影会は大正解である。
本当にこれはやって良かった。とても良い思い出となった。
海外の美しい街ではポーズを決めて写真を撮る。
その少しの工夫でとても楽しい写真となる。
そうである。
――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ楽しい工夫」が無限にある。
旅はそれを私たちに教えてくれるのである。
次回、私たちはシドニーの青年との会話からハプニングを体験することとなる。
【旅のワンポイントアドバイス04】
海外の景色は美しく、どこを切り取っても絵画のよう。海外での写真撮影時は、周囲の景観に溶け込むようポーズを決めて撮ると良い思い出となる。
旅においても少しの工夫で楽しい思い出をたくさん作ることができる。
シドニーでのこと。
私と広沢は入国審査を終え、待望のシドニーの街へと繰り出す。
空港の観光案内所で貰った市街地図を片手にシドニー・ハーバーを目指す。
目的地はシドニーの象徴オペラハウス。
海に突き出した岬の先端に、大きな鳥が羽根を広げたような形状の美しい白色の屋根が見える。
海岸沿いの道を異国の風景を楽しみながら歩きオペラハウスに到着。
「おぉ、これがオペラハウスかぁ」
空に高くそびえる三角形の屋根を見上げる。
写真で見ていたオペラハウスが、今、目の前にある。
ひとしきり感動が込み上げてくる。
屋根の形状があまりにも面白く、遊園地のアトラクションのようで登ってみたくなる。
……が、「日本人学生ハメ外す」と朝刊のニュースになるといけないのでやめておこう。
シドニーの街はとにかく美しい。何処を切り取っても絵ハガキのようだ。
普通に街を歩いていても、思わず写真を撮りたくなる場所が至る所にある。
広沢もそこかしこにカメラを向けてシャッターを切る。
しかし、あることに気がついた。
――いや、待てよ……
このような美しい景色の中、果たして普通に写真を撮っても良いのだろうか。
いや、良くないだろう。
自分たちが写真に写る時には、美観を維持する為の何かしらの手立てが必要だ。
絵ハガキのような美しい街の中、ただ漫然と立ちつくした姿で自分たちが写り込むのは、あまりにも味気ない。これではせっかくの景観も台無しだ。
この美しい街並の中に写り込むのであれば、やはりそれなりに美しく写り込むべきではないだろうか。私は広沢に提案した。
「俺たちが写る時はポーズを決めて写ろうぜ」
タレント写真集のごとく、シドニーの美しい街に溶け込むように格好をつけて写ろうというのである。
「おぉ、やってみよう」広沢も同意。
――シドニー撮影会、開催!
私は海辺の石段に足を掛け、
実際やってみて判ったことがある。
「うぐっ、なるほど、こ、これはこれで……」
――は、恥ずかしぃい……
マンガのような大きな汗がタラリとこめかみ辺りに貼りついている気がする。
誰が見ている訳でもないが、思いのほか恥ずかしい。
ポーズを決めつつ「くっ、広沢、早くシャッター押してくれぇえ!」と心で念じる。
ところが、カメラを構える広沢が笑顔で言った。
「おっ!それ、いいぞ!」
どうやら、傍から見ると、好評らしい。
自分の頭の中でも、自分のポーズと景色を合成させてみた。
やはり、ただ突っ立っているよりは、確実にポーズを決めた方がよい。
「俺は間違っては……いない……」
恥ずかしさを感じつつも、ボソッと尾崎豊のように自分にそう言い聞かせた。
――パシャリ!
ポーズをとるのは恥ずかしいが、せっかく美しい海外の街に来たのだ。
少しでも良い写真を撮りたい。その想いが勝ったわけである。
――ところが……
このモデルのような写真を数枚撮ると、すぐに慣れてしまった。
味を占めた私たちは、次々とポーズを決めて写真を撮った。
写真集の海外撮影のようで、益々楽しくなってきた。
ロックス地区。レンガ造りの家が立ち並ぶ古い街並み。
アーガイルセンター広場には、大きな石板に人型のシルエットが彫られた記念碑がある。
「うむ、次はどんなポーズで撮ろうか」
シャッターを押す広沢に構図を伝える。
「あの石碑を画面右に入れて、あの位置まで写真に収めてくれ」
「うむ、了解」
――パシャリ!
もはや本気で写真集でも出すのだろうかというノリである。
そんな中、ここで途轍もなく素晴らしい出来事が起きた。
この写真撮影方法が、さらに良い効果を生み出した。
記念に残る良い写真を撮ろうと「ここぞ」という美しい景観のスポットを探し始めた。
すると偶然にも素晴らしい「隠れ絶景スポット」を見つけてしまったのである。
――おおおおおっ!
「ここは絶景だなぁ」
あまりの美しさに驚嘆の声を上げた。
そこは高台にある天文台の裏。そう裏である。
たまたま、「なんとなく気になる小径」を見つけ入って行くと天文台の裏側に出た。
そこに驚くほどの絶景スポットがあった。
誰もいない静かな場所。小高い丘に見事な大木があり、ハーバーブリッジが一望に見渡せる。
日本から持ってきたガイドブックにも載っていない「隠れ絶景スポット」である。
「おぉ、ここは素晴らしい写真が撮れるぞ」
アングルを指定して、ポーズを決めた。
――パシャリ!
「うむ、これはイイ」広沢が唸った。
高台から見渡すシドニーの街の景色は、まさに絶景。
こうして私たちはシドニーの街を十二分に楽しんだ。
「あぁ、このポーズ、ちょっと恥ずかしいなぁ」
正直、そのようにも感じるが、やはり旅の思い出は楽しい方がよい。
シドニーの美しい街でおこなった写真撮影会は大正解である。
本当にこれはやって良かった。とても良い思い出となった。
海外の美しい街ではポーズを決めて写真を撮る。
その少しの工夫でとても楽しい写真となる。
そうである。
――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ楽しい工夫」が無限にある。
旅はそれを私たちに教えてくれるのである。
次回、私たちはシドニーの青年との会話からハプニングを体験することとなる。
【旅のワンポイントアドバイス04】
海外の景色は美しく、どこを切り取っても絵画のよう。海外での写真撮影時は、周囲の景観に溶け込むようポーズを決めて撮ると良い思い出となる。