第14話 ミッシェルたちとの再会 ~実現した言葉~

文字数 1,613文字

また逢いましょう、という言葉。
その言葉が現実となる時、そこに大きな感動が生まれる。

メルボルンでのこと。
メルボルン駅からクルマに乗せてもらいアマンダの家に到着。
かなり遠くから迎えに来てくれていたことを知った。本当にありがたい。
私と広沢は心から「センキュ・ソウ・マッチ」とアマンダに伝えた。
アマンダは玄関の扉を大きく開き手を添え「どうぞ」と私たちを家の中へ招き入れてくれた。
海外で友人宅を訪問するのは初めてのことであり、私は早くも感動してしまった。
靴を履いたまま家に入ることに不思議な感覚を覚えつつ部屋の奥へと歩を進める。
奥のリビングには一人の少女が待っていた。
リビングで待っていたのは、そう、ミッシェルである。
「おぉ、ミッシェル!」
私たち二人はミッシェルを見て声を上げた。3年の月日が経ち、当時11歳の小学生だったミッシェルも、現在は中学生。背も高くなり美しい少女になっていた。
ミッシェルも最高の笑顔で私たちを迎えてくれた。
じつはこの時、少しばかり……
――不思議な現象が起きた
ミッシェルは私たちの顔を見ると、すっと歩み寄り「コンニチハ」と言い、おもむろに両腕を差し出してきた。
ふと気づくと、「ハロー」と言いつつ、私も自然とハグをしていた。
この出来事が、とても意外で不思議であった。
じつは、私はハグがかなり苦手なのである。むしろ、どちらかと言うとハグは好きでは無い。どういうわけか人に身体を触れられることが好きではない。
私は侍気質なので人に触れられそうになると「無礼者ぉ」と、斬り捨てそうになる、というのは勿論、ものの例えではあるが、そんな感じである。(一体、いつの時代の人なのだろうか)
実際、私はこれまでにハグという行為をしたことが一度も無い。
それなのに、そんな私が自然とミッシェルとハグをしているのである。
――うむ、不思議だ……
この出来事が本当に不思議だった。
私が人生でハグをしたのは、この時だけである。
作家という職業をしていると、極々稀に(・・・・)読者の方から「ハグしてください」と言われることがある。
私は「握手でもよろしいですか」と言って丁重に断り、ハグをすることをハグらかしている。(ハグだけに)
――その私がハグとは……
おそらくオーストラリアというハグが習慣になっている土地に来たことで、自然とそれが抵抗なく出来たのではないかと思われる。
これは異国の地における、少しばかり不思議な体験となった。
こうして私たちはアマンダに続きミッシェルとの再会を果たした。
ミッシェルたちが日本に来た時には、まだ小さかった為に日本に一緒に来られなかったミッシェルの弟ネイスン(10歳)とも初対面を果たした。
リビングでミッシェルたちと日本に来た時の話をして盛り上がっていると、そこにさらに嬉しい出来事が起きた。
ミッシェルの友人のベンも駆けつけてくれたのである。ベンも私たちの友人である。
「おぉ、ベン!」
ベンも背が高くなり、立派な少年になっていた。
さらには、ミッシェルの彼氏のロビーと父親のクリスも合わさり、私たち二人の歓迎会を開いてくれた。
その夜は宿泊までさせてもらえることとなった。
ミッシェルたちが日本を去る時、お互いに「また逢いましょう」と言った。
その言葉がここメルボルンで現実となり、とても大きな感動が生まれた。
こうしてミッシェルたちとの再会が叶ったのである。
この出来事もまた、旅の良い思い出となった。

遠く離れたオーストラリアでの友人たちとの再会。
それはまるで奇跡のような素敵な出来事であった。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ素敵な出来事」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私たちは現地ならではの英語の身に着け方を知ることとなる。

【旅のワンポイントアドバイス14】
旅先で、会うことが出来る人がその地にいる場合は、会っておくとよい。異国の地での再会はとても大きな感動を生む。それもまた旅の良い思い出となる。


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