第30話 レストランでの出来事 ~日本人特有の行動~

文字数 1,440文字

人に言われて、へええ、と驚くことがある。
自分では気づかぬところに日本人らしさは出るものである。

アリススプリングスでのこと。
街のレストランで少しばかり面白い体験をした。
それは夜の街で食事をしようと小さな食堂に入った時のこと。
店内に入ると正面に大きなガラス張りのショーケースがある。
その中に、様々な食べ物が並べられている。
どうやら、そこから何を食べるかを決めて、奥のテーブル席で食べる、というシステムらしい。
私たちはガラスケースの中を覗き込んだ。
フライドポテトやフライドチキンなど、よく知っている食べ物の他にもいろいろな料理がズラリと並べられている。
「う~ん、どれにしようか」
私と広沢は何を食べようか真剣に考えていた。
ところが、ここで少しばかり面白い出来事が起きた。
私たちの様子をガラスケースの向こう側から眺めていた女性店員が声を掛けてきた。
「ユー・ジャパニーズ・ライト?」
「あなたたち日本人でしょ?」という意味である。一瞬……
――え?
となったが、すぐに「どうしてわかったのだろうか?」と気になった。
私たちが欧米の人たちを見た時に、オーストラリア人、英国人、米国人、の見分けがつかない。
それと同じで、オーストラリアの人たちからみると、日本人なのか他のアジア人なのかは見分けが難しいという。
それなのに、この店員さんは、私たちを日本人だと「わかっているわよ」と言わんばかりに声を掛けてきたのである。
どうやら、これには理由がありそうだ。
これは少しばかり不思議に思えたので、私は尋ねてみた。
「そうです。日本人です。どうして日本人だと判ったのですか?」
すると、その女性店員はこう答えた。
「何を食べようか、真剣に考えて、なかなか決まらないからよ」
「え?それで判ったの?」
私は少しばかり驚いた。
どうやら、同じアジア人の中でも「何を食べるかなかなか決まらないのが日本人」というのが、日本人判別方法というのである。
――これは面白い!
彼女が言うには、他のアジア人は、店に入ってきてすぐに「これと、これを下さい」と、何を食べるのかすぐに決めて注文する。
しかし、日本人は何を食べるのかを考えるに必ず時間を掛けるというのである。
「あぁ、そうなんだぁ」
私は彼女の話を聞いて、こんな場面でも国民性が出るのか、と、とても面白く感じた。
言われてみれば、確かに日本では何を食べるのか考えるのに時間を掛ける人が多い。
その意味でも、日本人は食に対する関心が高いのかも知れない。
これは日本にいる時には全く気付かなかったことだ。
ここオーストラリアに来て、海外の人から日本人を見ると、そのように見えるのである。
――外から見るとわかる
そう、これはご存じシャア・アズナブルの言葉。
ここでもまた、この言葉を体験することとなった。
まさか食堂のメニュー選びに「日本人」が出てしまっているとは思わなかった。
やはり、内からは判らなくとも、外から見るとわかることがあるのである。
この出来後はとても面白く、印象に残るユニークな思い出となった。

確かに人から言われる言葉は当たっていることも多い。
他者からの言葉には真摯に耳を傾けようと思い至った。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ大切な学び」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

【旅のワンポイントアドバイス30】
海外だからこそ見えてくる日本人らしさというものがある。そのようなことを知るワンシーンに出会ったことをしっかりと覚えておくと、それも旅のユニークな思い出となる。


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