第43話 ビーチでハプニング ~驚きの体験~

文字数 1,986文字

旅では全く予想外のことが起きる。
その驚きの体験もまた旅の良い思い出となる。

ケアンズでのこと。
この街はとても暑い。夏好きの私にとっては良い街である。
8月とは言え南半球にあるオーストラリアは真冬。
ところが、真冬であってもここケアンズは熱帯気候の為、夏同然の暑さ。
多くの人たちが短パンにタンクトップという出で立ちで街を歩いている。
街外れともなると、現地の男たちはビーチのように上半身何も着ずに歩いている人もいる。
上半身何も着てなくても常夏の街外れではまったく違和感がない。
「よし、やってみよう!」
郷に入れば郷に従え。早速、私もTシャツを脱ぎ、それに習った。
上半身何も着ずに外を歩くのは、地元の祭りの時以来である。
勿論、日常で上半身何も着ずに外を歩くのはこれが初めてのこと。
実際にやってみると、これが意外と爽快。いかにも……
――夏!
実際は冬なのだが、まさに夏!という感じである。
街中で上半身何も着てなくても全く気にならない。
さすがに市街地ではこの格好は無理だが、ここは街外れ。
むしろ、この格好の方が景色に溶け込み正しいようにも思えた。
あたかも現地の男たちの仲間入りをした気分。楽しい。
「あはは!これはイイぞ!」私は解放感に浸りながら言った。
「ははは」広沢は、そんな私を見て笑っていた。
私たちはバスに乗りビーチへと向かった。
真冬ではあるが、この暑さ。なんともここケアンズでは真冬でも泳げる。
そこで私たちも真冬に海水浴をしようというわけである。
数日前にいたメルボルンは南極に近くとても寒かった。
ところが、ここケアンズは赤道に近くとても暑く海で泳げる。
この事実からもオーストラリアの広大さがうかがわれる。
真冬に泳ぐ楽しさ。それだけでもワクワクする。
さらには、日光浴、魚との戯れ、トロピカルドリンク、などなど楽しい計画に期待を膨らむ。そしてビーチに到着。
ところが、なんと!ここでもまたもや思わぬ……
――ハプニングが起きた!
ビーチに到達した私たちの目の前には驚くべき光景が広がっていた。
なんとも、その海水浴場には……
――誰も居なかった……
驚いたことにビーチには人っ子一人いない。全くの無人。
謎である。こんなにも暑いのにビーチには誰もいない。
現地の人は冬には泳がないのだろうか。いやいや、観光客すらいない。謎である。
「不思議だな。誰もいない」私は言った。
「そうだな」広沢も周囲を見渡し言った。
「サメでも出たんじゃね?」思いつくまま私は言った。
「どうだろうなぁ」広沢は首を傾げた。
適当な会話をしつつビーチをどんどん進んでいく。
誰もいない謎のビーチ。ところが、これがまた、じつは……
――最高だった!
白い砂浜がずっと先まで続いている。
目を凝らしてそのずっと先を見ると、そこに人影がポツリ、ポツリと見えるだけ。
私たちのいる周囲には誰一人としていない。海水浴場としては有り得ない景色。
これは、まさに、まさかの……
――プライベート・ビーチ!
美しい常夏の南国ビーチが完全貸し切り状態。まさかのハプニング。
やはり人食いザメや海水ワニでも出たのだろうか。
いずれにしても、このような素晴らしいビーチの貸し切り体験など、なかなか出来ない。
もはやサメでもワニでも何でも来い!という気分。
堅実で慎重派の広沢は海には入らなかった。(うむ、冷静かつ正しい判断!)
その一方で、無謀で冒険野郎の私はせっかくなので海にも入ってみた。(おぃい!)
ここは海水浴場であり、遊泳禁止の看板も出ていない。
浅瀬で少し泳ぐだけなら大丈夫だろう。そう考え、一応用心しつつ、海に入り少し泳いだ。
貸し切りのビーチで泳ぐ気分は格別であった。
じつはここでも私の夢が1つ叶った。
私は南国のビーチが好きで、ずっと憧れがあった。白い砂浜に蒼い海が広がる。そのような絵ハガキを見つけるといつも買っていた。
絵ハガキには人は写ってはいない、無人のビーチ。
いつか、この絵ハガキのようなビーチに行ってみたい。その夢が叶ったのである。
この誰もいないビーチで記念撮影をした。
――パシャリ!



落ちていたヤシの実を抱え、ヤシの木の前に立った。
広沢がシャッターを切る。
――パシャリ!



まるで絵ハガキのビーチの中に自分が写り込んだようである。
偶然にも無人のビーチだったからこそ撮れた写真なのである。
これもまた、旅の良い思い出となった。

ビーチに誰もいないというハプニングには驚かされた。
そのおかげでとても美しい景色と出会うことができた。
そうである。

――じつのところ誰の人生にも「まだ見ぬ美しい景色」が無限にある

旅はそれを私たちに教えてくれるのである。

次回、私たちは密林のジャングルを探検することとなる。

【旅のワンポイントアドバイス43】
熱帯地域では真冬でも泳げるものの、ビーチにほとんど人がいないこともあるので用心が必要。場所によってはサメだけでなくや海水ワニにも気をつけることが必要。


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