第59話 人の恋路を邪魔するやつは

文字数 661文字

「私、この小説を読み始めたんだけど」
 メシヤたち以外の、一般的な高校生も登場する。名前はまだ無い。

「登場人物の女の子が全員ロングヘアなのよね。なんて言うか男の願望丸出しで、作者に気持ち悪さを感じたわ」

「だってこれは創作物でしょ? なんであんたの好みに合わせないといけないのよ」
 少女Aの友人かどうかは不明だが、そばに居たBが反論した。

「表現の自由なんて紋切りの言葉を持ち出すまでもないけど、あんたがそうした洒落っ気の無い女性キャラを好きなように、彼には彼で好きなキャラがあるのよ。男も女もね。作家に嫌々書かせるようなことがあっては、文学界の大いなる後退と衰退だわ」
 どうやら、文芸部員らしい。

「いかにもな美形でスタイルも良くて利発で楽しくて・・・。妄想の世界に住んでるのよね。こんな女いるわけないのに」
 抱えている。かなり抱えている。

「あんたはそうじゃないキャラが好きなんでしょ? だったらそのポリシーを貫けばいいじゃない。だけど、他人がなになにを好きと言っていて『それは間違ってるからこういうものを好きになれ』だなんて、余計なお世話よ」
 文芸部室が武道場になりそうな勢いである。

「私はね、こういう目立つ男子や女子ばかり取り上げられるのが、気に入らないのよ。もっとこう、控えめだけど芯のある子も・・・」

「誰々くんが好きとかそういう人間の本質的な部分にまで首を突っ込んで、土足で上がり込む気? あんたは博愛主義者なんかじゃないわ。ただそう言ってる自分が好きなだけなのよ」

「違うわよ!」

「あんたは同情心から人を好きになるの?」



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み