第58話 秘密録音

文字数 699文字

「パワハラや不貞行為を暴くためと言えば聞こえはいいが」
 相手の了承もなく録音したデータを元に、告発する事例が増えている。

「俺はキライですね」
 気ままな日常会話も、ままならない。

「日本では秘密録音罪や盗聴罪というのがあるわけではないけれど、その他の法律に引っかかって来るわね」
 オブライエンを盗聴しようとしても、不可能である。

「問題なのは社会正義からではなく、強請(ゆす)りたかり目的の奴らですよ」
 白馬は捜査において、盗聴器を使うことはない。

「その辺りは日本の判例を見ると、バランスが取れてるわね」
 証拠能力としては認められても、その音声データをもってしてただちに録音内容どおりの事実を認定されるかと言えば、そう簡単にはいかない。証拠能力と証明力は異なるのだ。

「どこかでカメラが回ってる、誰かに音声を録られてる、そんなことを考え出したら、気が休まらなくなりますよ」
 そうしたデータの扱いようによっては、設置者の両手が後ろに回る羽目になる。

「マリアちゃんたちは大丈夫?」
 メシヤ周辺は、世界中からターゲットになっている。

~~~

「もしそんなの仕掛けられたら恥ずかしいな~。僕ふだんから独り言が多いらしいから」
 どういう話の流れでそうなったのか。

「あんたの独り言なんて、誰も興味ないわよ」
 (適当に脈絡のない台詞を大声で挟むと、撹乱は出来るかな)

「マリアさまは女性ですから気をつけないと」
 裁紅谷姉妹にとっては、専門分野である。

「心配ないわ。小さい頃に教わったのよ。場所も誰が取り付けたかも簡単に発見できるわ。それとね」
 マリアは殺気を隠そうとしない。

「仕掛けたやつをギッタンギッタンにしないと気が済まないわ!」



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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