第58話 秘密録音
文字数 699文字
相手の了承もなく録音したデータを元に、告発する事例が増えている。
「俺はキライですね」
気ままな日常会話も、ままならない。
「日本では秘密録音罪や盗聴罪というのがあるわけではないけれど、その他の法律に引っかかって来るわね」
オブライエンを盗聴しようとしても、不可能である。
「問題なのは社会正義からではなく、
白馬は捜査において、盗聴器を使うことはない。
「その辺りは日本の判例を見ると、バランスが取れてるわね」
証拠能力としては認められても、その音声データをもってしてただちに録音内容どおりの事実を認定されるかと言えば、そう簡単にはいかない。証拠能力と証明力は異なるのだ。
「どこかでカメラが回ってる、誰かに音声を録られてる、そんなことを考え出したら、気が休まらなくなりますよ」
そうしたデータの扱いようによっては、設置者の両手が後ろに回る羽目になる。
「マリアちゃんたちは大丈夫?」
メシヤ周辺は、世界中からターゲットになっている。
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「もしそんなの仕掛けられたら恥ずかしいな~。僕ふだんから独り言が多いらしいから」
どういう話の流れでそうなったのか。
「あんたの独り言なんて、誰も興味ないわよ」
(適当に脈絡のない台詞を大声で挟むと、撹乱は出来るかな)
「マリアさまは女性ですから気をつけないと」
裁紅谷姉妹にとっては、専門分野である。
「心配ないわ。小さい頃に教わったのよ。場所も誰が取り付けたかも簡単に発見できるわ。それとね」
マリアは殺気を隠そうとしない。
「仕掛けたやつをギッタンギッタンにしないと気が済まないわ!」