第38話 隠れミノフスキー粒子

文字数 837文字


 スマホは作れるが、その機能が失われた世界。



 バブル時代、いくら派手な生活をしようとも、後ろめたいことをしようとも、現代ほどスキャンダルに発展することは無かった。

 ターニングポイントはカメラ機能付き携帯。憧れの職業であるはずの芸能人は、プライベートなど壊滅状態となりはてた。

 そこへ、われらのメシヤが疑問を呈した。
「小さい頃に描いてた、理想の社会とは違ってしまったなあ」

 メシヤ少年は一体どうやってそこへたどり着いたのか、電波障害を起こし、電子機器を無力化する粒子を発見していた。

 この粒子を散布すれば、遠距離ミサイル攻撃も無力化できる。戦争のありかたを変えてしまうほどの大発見であった。

「まったくこの通りじゃ無いけど、現代科学の基礎知識2050年版にはさらっと書いてあったんだよね。しかも、どうやらはるか太古の昔からあったらしい」

 機動戦士ガンダムにおいて、記録媒体が磁気テープやフィルムカメラであるのも、ミノフスキー粒子の影響下でハードディスクや携帯電話の類いが使えないためである。

「これを適宜用いれば、僕が生まれる前のあの熱い時代が再燃するんじゃないかな」
 大人数で集まって、見つめる先が画面なのは、やはり寂しい。

「ガンダムでも描かれてるけど、隠れミノフスキーで得られる物もあるんだ」
 時代に逆行するわけではない。特殊な力場の形成も可能になり、核エネルギーから直接電力を発生させることが出来るようになる。タービンは不要なのだ。

「危ない使い方もあるにはあるけど・・・」
 メシヤの感応波が聖剣を増幅させることにも通じる。

「野菜作りやキャンプがブームになってるのは良い傾向かな。電子機器に囲まれてると、どうしてもインスピレーションが鈍る気がする」
 コンピューター少年のメシヤが言うと、妙な説得力がある。

「『会議の資料がいまどき紙で』って、シニア世代をやりこめる目的でよく使われる論調だけど、そういうのも陥りがちな穴だなあ」
 カミの同音異義語から、何かを感じ取れないだろうか。




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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