第138話 earth-friendly

文字数 808文字

「草の伸びが早くなってきたわ」
 これを放置すると、街がどんどん荒廃する。

「刈るだけでもしないとね」
 メシヤは鎌をかけるタイプではない。

「焚き火がやりづらくなって、草の処理に困るんだよな」
 近隣から煙たがれる。草をゴミ袋に詰めて運ぶ労力は、馬鹿にならない。

 メシヤの農園を見ると、刈った草がそのまま土壌に残っている。マルチと呼ばれる畑の被覆は通常黒いビニールで施されるが、メシヤは草マルチを実践していた。

「メシヤさま、これは地球に優しい畑作りですわ」
 どのマルチでも乾燥や温度変化を和らげる効果があるが、草マルチなら通気性も良くなり、水分調整も楽になる。畑の団粒構造にも繋がるのだ。

「そういえバ、メシヤの畑は作物が生き生きしているヨ」
 刈り取った草が土壌改良の効果をもたらし、肥料をやる必要が無くなる。邪魔だと思われていた雑草が、こうしたことで適材適所になる。

「雑草も本望じゃ無いかしら」
 やむにやまれぬ雑草魂。

「この調子で害虫の活用法も見つけてもらいたいもんだ」
 食べるのは御免蒙る。ここに書くのが憚られる活用法もあるが、颯爽と駆け回るGのレコンキスタは筆者には受け付けられない。

「ミミズがいっぱいダ!」
 ミミズは肥沃な土を作ってくれる。「植物が生えている土はミミズの体を何度も通ってきている」とは、かのチャールズ・ダーウィンの言葉だ。

「ミミズが何の分類か知らないけど、こういうのや虫を毛嫌いし過ぎなのよね」
 軍手越しだが、マリアがひょいと摘まんだ。虫が怖い、草が触れない、だから汚れ仕事をやらなくて良いなどというスタンスを許していては、生命力が培われない。草ぼうぼうの自治体が散見されることと、無関係では無いだろう。

「ミミズだってオケラだって、みんなみんな生きているんだからね」
 ボールと友達ならドライブシュートを打てるが、エコ活動はミミズと友達から始めよう。

「これがやなせたかしさんの作詞とは知りませんでしたわ」





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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