第10話 体育国防論

文字数 808文字

「我がクラスは体力低下とは無縁ね」
 現代人の運動能力低下が叫ばれて久しい。

「体が動いた方が何をするにも得だからね」
 メシヤは不用意な動きをするので、向こうから来た人とよくフェイントの掛け合いになる。

「真面目な話、体力低下を誘導して国家を破壊する工作は、普通に行われています」
 筋トレ自体はブームであるが、汗をかいて働くという価値観は失われていないか。

「自分の身を守るためにモ、必要だヨ」
 女の子だとみくびってエリに襲い掛かると、返り討ちに遭う。

「若い野球選手で言われてることなんだが、洋式トイレの悪影響が出てるらしいんだ。どうも膝関節と足首の硬い若者が多い」
 イエスの家にも和洋両方有るが、和式で無いと落ち着かない。

「野球って膝がすごく大切だよね。打撃で不振に陥ったら、サードかショートでノックを受けて一塁への送球までする練習をやるといいらしい。守備も柔らかい膝使いが必要だし、投げる動作と打つ動作は繋がってるんだ」
 中日の右投げ右打ちの選手に試してもらいたい。

 スランプに陥った主軸打者が、みずからノックを打つというのも効果的だ。打撃のどこが崩れているのか、すぐさま分かる。

「わたくしも外のトイレで便座にすわるのがどうも苦手でして・・・。和式のほうが衛生的にも身体的にも優れている気がしないでもないのですが」
 レマの間節群は言うまでも無く柔軟である。

「コサックダンスなんかもいいと思うヨ。体が全身バネになる感覚かナ」
 ウサギ跳びなどが危険だとやり玉に挙げられたが、格闘家やアスリートで取り入れている選手は実際居る。真偽のほどやいかに。

「しゃがんだ位で転ぶ連中が信じられないわ。プロミネンスお構いなしに地べたに座って、そのお尻で家の中にも座るわけでしょ。お尻は着けちゃ駄目ね」
そう言いながら、見事なウンコ座りを決めるマリア。

「あの~、マリアさん? そのスタイルで角棒持ったりしないでくださいね」
 昔取った杵柄である。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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