第37話 全員シャツイン

文字数 822文字

「衣替えですわね」
 レマが夏の制服に袖を通している。

「北伊勢高校の制服、可愛いよネ」
 夏服はどこも大差ないように見えるが、細かいところでデザインに力が入っている。

「ウチの制服って風通しよくて、肌に心地いいのよ」
 天然素材なのだろう。

「カッターシャツを外に出す人もいるけど、僕はIN派だな」
 腹を壊しやすいメシヤ。

「制服ってのもあるが、普段着でもそうしたいところだ」
 イエスもIN。

「暑いのかと思いますが、現場作業でシャツを出すのは危険ですわ」
 裾が引っかかると、思いがけない事故に遭う。

「それで言うト、エレベーターやエスカレーター、バイクに乗るときも長いものは巻いておかないト」
 エリの髪もかなり長めである。

「シャツを入れるのがダサいってのはいまも残ってるけど、やや反転傾向ね。入れる派も増えてきたわ」
 Tシャツはまだしも、Yシャツを出すのは嫌がる人も多い。

「出してると脚が短く見えるよね。指摘してた人もいたと思うけど」
 流行というのは恐ろしい。反対派をねじ伏せてしまう。

「昭和の写真を見ると、体操着は見事にINされていますわ」
 下パーツの面積の多い方が、全体として安定感がある。

「腰回りがさびしいかラ、工夫が欲しいところだヨ」
 制服・スーツなら、ベルトで個性を出せる。

「体操着は?」
 マリアは体操着自体をお洒落にしてほしいようだ。

「長ズボンなら通し紐の色で差を出せるな。夏は・・・」
 北伊勢高校野球部のユニフォームは、赤と青が使われている。高校サッカーに比べて、高校野球はデザインがおとなしめだ。

「鉢巻きはどうでしょう?」
 鉢巻(はちまき)(たすき)は見た目の溌剌(はつらつ)さや汗止めのためだけではない。身体の可動域を増やし、開きがちの頭蓋骨を締める目的がある。

「夏はそれもありね。冬場、シャツをINするのは賛成だけど、なんか上の方がアンバランスよね」
 トランクス初登場時のGジャンの丈感がある。

「エリを立てればOKかモ!」
 プロ野球にも襟付きが導入されたばかりである。




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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