第22話 スクラップマウンテン

文字数 840文字

「大谷がホームランを打った後の兜、サマになってるねエ」
 キングの風格がある。

「甲冑も似合いそうですわ」
 レマは強い男が好きである。

「兜の英語はヘルメットなんだから、そのまま打席に立ってもいいね」
 古今東西のヘルメットもバラエティ豊富だ。

「昔は新聞紙で兜を作ったわね」
 昭和っぽいところがあるマリア。

「紙てっぽうとかな」
 いまどき新聞なんてというトピックがあったばかりだが、読むメリットでは無く、物理的に生活の役に立つネタばかりが投稿された。

「メシヤさま、スクラップ帳を持っていらっしゃいますね」
 検索すれば記事は出て来ると馬鹿にされるので、誰もやらなくなってしまった。競争相手がいないので、この手間を惜しまなければ独走することが出来る。

「あたしも聞いたことあるけど、頭角を現していく記者はスクラップを怠らないそうね」
 スクラップも積もれば、宝の山だ。

「検索すれば出て来ると言うが、検索で表示できなくすることくらい容易だからな」
 日常会話が、優先的に表示されるネット情報からだけになっていないか。

「どんなに自分が印象に残った出来事でも、日常に忙殺されると頭から忘れ去られるんだよ。こういうのを見返すのってすごく頭が整理される感じがあるんだ」
 メシヤのスクラップ帳は袋に入れるタイプではなく、ハサミで切り取ってページに直で貼り付けるタイプだ。スティック糊は欠かせない。

「現代人は大量の情報を浴びているように錯覚しちゃうけド、偏っている感は否めないネ」
 流して良い記事と駄目な記事とを選別している編集長がいるかのようだ。

「証拠を出そうと思ってあのページに飛ぼうとした時には、綺麗さっぱり無くなっていたりしますわ。スクショは画像をいじっているモノもあったりしますし、追及しても逃げられることがあります」
 サイバー空間でいくら小細工をしたところで、痕跡は隠せない。

「新聞記者がどの程度過去の文献を遡れるかに力量が問われるな」
 戦前戦後くらいまでしか参照できないようでは、記事にも厚みが無い。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み