二度目のプロローグ
文字数 3,841文字
くん、と身体が引っ張られる感覚が有って、私はそのまま光のトンネルを猛スピードでくぐり抜けた。
(何処へ運ばれるんだろう?)
不安と期待が心に入り混じった。
(もしかして、やり直せるかもしれない)
あの少女らしき声の主は「私の世界」と言っていた。まるで世界の創造主のような物言い、不思議な空間、そして私に未来を見せた能力。……ただの少女でないことは確かだ。
彼女の特殊な能力を使えば、エンとマキアが生存している時間軸まで戻りたいという私の願いが叶うかもしれない。
(お願い、私を届けて……!)
少ししたら、眩しくて閉じていた瞼が光で刺激されなくなった。
私は恐る恐る目を開けて周囲を窺った。飛び込んできたのは緑色。目が慣れるにつれ認識できた。緑は葉っぱの色で、私は高い樹木が乱立する森の中に佇んでいた。
空が遠いな。ここは何処だろう? マキアが自爆した二つ目のアジト付近の景色ではないようだけれど……?
「ひっでぇ傷だがまだ息が有るな。面倒くせぇ……」
聞き覚えの有る声がすぐ傍で不満を呟いた。私の右隣にはルパートが立っていた。
「せ、先輩!?」
「うぉっ、何だぁ!? 急に大声出すな馬鹿、ビビっただろーが!」
毒づくルパートの様子に、エンとマキアを失った悲壮感は見られなかった。
「何ぽや~っとしてんだよ、立ったまま寝てたんかよ?」
「い、いいえ……」
「ならさっさと確認しろ」
「確認……?」
「ああもう、俺がやるから寄こせ!」
ルパートは私が担いでいたショルダーバッグから書類を引ったくった。
「エリアス・モルガナン。29歳男性、身長188センチ。黒髪の剣士。捜索対象者はコイツで間違い無いな」
「……へ?」
ルパートは書類と地面を見比べていた。彼の視線を辿った私は驚愕した。
「え、あ、エリアスさん!?」
一メートル先の大地にエリアスが横向きで倒れていた。顔も身体もかなり汚れていて、衣服が一部破れて出血の跡が見える。大変だ!
「エリアスさん、どうしたんですか!? しっかりして下さい、エリアスさん!」
私はエリアスに駆け寄って彼の状態を調べた。肩と脚に引っ搔き傷と嚙み傷を見つけたので応急処置を施した。傷から判断して狼系のモンスターにやられたんだろう。
ん? あれ、これ前にもなかった? 行き倒れたエリアスを私とルパートが見つけて……。
「ウィー、おまえはこの冒険者と知り合いだったのか?」
ルパートが私を訝しんだ。もしかして、これは……。
私は状況を確認する為に彼に質問した。
「……何言ってるんですか、彼は先輩だってよく知るエリアスさんでしょう?」
「いや、俺はこの人を今日初めて知った。受付業務にはほとんど関わらないからな」
「本当に? エリアスさんとは初対面なんですか?」
「そーだよ。常連の冒険者パーティとなら顔馴染みだがな。この人は資料によると、フィースノーのギルドに来たのはごく最近らしいじゃねーか。むしろおまえがよく知ってたな? ……まさか口説かれたとか?」
「………………」
ルパートはエリアスを知らなかった。ということはつまり……。
「ルパート先輩、今日は何月何日ですか!?」
「はぁ? 日付が何だよ。おまえさっきからおかしいぞ?」
「いいから答えて!」
「ワケ解んねぇ……。深緑の月、11日だよ」
それは私とエリアスが初めて出会った日にちだった。私は拳を造った両手を振り上げて叫んだ。
「よぉーーーーっしゃあ!!!!」
私の剣幕に驚いた(引いた?)ルパートが数歩後退りしていたが構うものか。私の身体は歓喜に震えた。
戻った、私は過去を遡ったのだ!
この時間軸ではまだエンとマキアが生きている。信じ難いが時間を操作できるなんて、あの少女らしき声の主は「神様」と呼ばれる存在なのかもしれない。
「うう……ん?」
よっしゃあよっしゃあ叫ぶ私の声にエリアスが反応した。今回は背負う前に起こしちゃったな。
「……えっ? ここは? ……キミ達は?」
目覚めたばかりのエリアスに私は自己紹介をした。
「あ、どうも。冒険者ギルドのロックウィーナとルパートです。行方不明だった貴方を捜しに参りました」
「え、ああ、それは世話を掛けた。すまな……ええっ!?」
「失礼しまーす」
私はエリアスから上半身に着込んでいた鎧を脱がして、転がっていた大剣と共にルパートへ押し付けた。ついでに私のショルダーバッグも。
「はい、先輩の担当。私が彼を背負いますから周辺監視もよろしくお願いします」
「お、おう」
テキパキと動き指示を出す私にルパートもエリアスも目を丸くしていた。私にはのんびりしている時間が無いのだ。
ここから十日後にエンとマキアが死亡する。……何もしなければ。
少女は「過去を書き換えたら未来も変わる」と言った。ならば前回と違う行動、選択をすれば二人の死を回避できるかもしれない。
「さて、じゃあ街まで戻りましょう。せぇーのっ!」
エリアスの腕を肩に掛けた私は、腰を跳ね上げて一気に彼を背負った。
「えっ、ええ!?」
おんぶされたエリアスは私の背中で暴れた。こうなるのは知ってた。二回目だからね。
「なっ、駄目だ、降ろしてくれ! 私は自分で歩ける。女性に背負われるなど……」
強がっているがエリアスは後日、実はこの時は天に召されそうだったとルパートに打ち明けている。無理はさせられない。
「大人しくして!!」
私はピシャリと言い放った。
「ご自分の身体なんだから判るでしょう? 貴方の身体は限界なんです。そして負傷者を街まで送り届けるのが私の仕事です」
「だ、だが女性に……。せめてあちらの男性に担がれたい」
「それはできません。ルパート先輩にはモンスターと遭遇した際に、戦ってもらわなければならないので」
いざという時に荷物は簡単に投げられるが、怪我人を乱暴には扱えないからね。
以前はすぐに手ぶらになろうとするルパートに苛ついていたが、ガロン荒野やアンダー・ドラゴンのアジトでの彼を見て考えを改めた。ルパートは本気で私や要救助者を護ろうとしてくれた。
「……女性に背負われることに抵抗を感じるエリアスさんのお気持ちは解りますが、どうか私に任せて下さい。これまで私は何人もの男性を背負ってきました。大丈夫です。森を抜けた先に馬車を待たせてありますから、そこまで我慢して下さい。安全な街に着いたら支え役をルパート先輩にバトンタッチします」
私は背中のエリアスを振り返って微笑んだ。危ない。お互いの顔が接近し過ぎてキスをするところだった。
「じゃ、じゃあ行きますね……」
高身長で筋肉質な身体はやっぱり重かったが、私はエンとマキアを助けられるかもしれないという希望で気分が高揚していたので、悪路も苦とせずエリアスを搬送した。馬車が待機している地点まであっという間な感覚だった。
背中からエリアスを降ろす時、背後から一瞬だけ彼に抱きしめられた気がした。
☆☆☆
翌朝。私は冒険者ギルドの受付カウンター内で報告書を作成しつつ、エリアスの来訪を今か今かと待っていた。
未来を変えるには私一人の力では不安だ。エリアスもルパートもキースもガッチリ巻き込むつもりだった。
だからこそ昨晩、業務終了時刻と共にルパートを私の部屋に引っ張り込み、過去を遡ったことを説明して彼に協力を求めたのだ。
しかしルパートは笑いやがった。殺したいほど憎たらしい顔をして「ウィーちゃん頭大丈夫?」とほざきやがった。
だから私は言い返した。明日になれば判る。エリアスさんが私に会いに来て、手の甲にキスをして、私と先輩にパーティを組むよう要請して来ると。
私が知っていてルパートの知らない未来を示した。それでも奴はヘラヘラしていたけど。笑っていなさい、いくら否定してもその時は確実に来るんだからね。
「ウィー、エリアスさんは来たかぁ?」
机に向かう私の頭の上からムカつく声がした。昨日のことを回想していた私は、ルパートによって現在へと引き戻された。
「来ます。そろそろのはずです」
「おまえの手の甲にキスとか……ぷっ。おまえ知らないだろうが、あの人お貴族様だぞ? おまえなんかを相手にするかよ。恋愛小説読み過ぎ」
私が反論しようとした正にその時……、
「ウィーお姉様ぁ、お姉様に会いたいって人がいらしてますぅ」
受付嬢リリアナが私を呼んだ。キターーッ!! カウンター正面に身なりを整えた貴公子然としたエリアスが立っていた。
「え、アレ誰だ……?」
「エリアスさんですよ」
私はルパートに余裕の笑みで返した後、いそいそとエリアスの元へ向かった。ルパートも私の後を追ってきた。
他のギルド客の邪魔にならないように、エリアスを窓の在る壁際へ誘導した。
「ロックウィーナ嬢、昨日は大変世話になった」
エリアスは右手を胸に当て、左腕を折り曲げて背中に回してお辞儀をした。
「……騎士の挨拶じゃん」
ルパートが小声で呟いた。先祖が騎士だったというし、勇者の一族モルガナン家は騎士の作法が浸透しているのだろう。
そしてエリアスは私の右手を取った。いきますか、手の甲にちゅー。私の話を信じていないはずのルパートが身構えた。
しかしエリアスはキスをせず右膝を折って床に付けた。姫君に忠誠を誓う騎士のように屈んで見せた。カッコイイ。
そして彼は低く響く声で言った。
「レディ、私と結婚してくれ」
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(何処へ運ばれるんだろう?)
不安と期待が心に入り混じった。
(もしかして、やり直せるかもしれない)
あの少女らしき声の主は「私の世界」と言っていた。まるで世界の創造主のような物言い、不思議な空間、そして私に未来を見せた能力。……ただの少女でないことは確かだ。
彼女の特殊な能力を使えば、エンとマキアが生存している時間軸まで戻りたいという私の願いが叶うかもしれない。
(お願い、私を届けて……!)
少ししたら、眩しくて閉じていた瞼が光で刺激されなくなった。
私は恐る恐る目を開けて周囲を窺った。飛び込んできたのは緑色。目が慣れるにつれ認識できた。緑は葉っぱの色で、私は高い樹木が乱立する森の中に佇んでいた。
空が遠いな。ここは何処だろう? マキアが自爆した二つ目のアジト付近の景色ではないようだけれど……?
「ひっでぇ傷だがまだ息が有るな。面倒くせぇ……」
聞き覚えの有る声がすぐ傍で不満を呟いた。私の右隣にはルパートが立っていた。
「せ、先輩!?」
「うぉっ、何だぁ!? 急に大声出すな馬鹿、ビビっただろーが!」
毒づくルパートの様子に、エンとマキアを失った悲壮感は見られなかった。
「何ぽや~っとしてんだよ、立ったまま寝てたんかよ?」
「い、いいえ……」
「ならさっさと確認しろ」
「確認……?」
「ああもう、俺がやるから寄こせ!」
ルパートは私が担いでいたショルダーバッグから書類を引ったくった。
「エリアス・モルガナン。29歳男性、身長188センチ。黒髪の剣士。捜索対象者はコイツで間違い無いな」
「……へ?」
ルパートは書類と地面を見比べていた。彼の視線を辿った私は驚愕した。
「え、あ、エリアスさん!?」
一メートル先の大地にエリアスが横向きで倒れていた。顔も身体もかなり汚れていて、衣服が一部破れて出血の跡が見える。大変だ!
「エリアスさん、どうしたんですか!? しっかりして下さい、エリアスさん!」
私はエリアスに駆け寄って彼の状態を調べた。肩と脚に引っ搔き傷と嚙み傷を見つけたので応急処置を施した。傷から判断して狼系のモンスターにやられたんだろう。
ん? あれ、これ前にもなかった? 行き倒れたエリアスを私とルパートが見つけて……。
「ウィー、おまえはこの冒険者と知り合いだったのか?」
ルパートが私を訝しんだ。もしかして、これは……。
私は状況を確認する為に彼に質問した。
「……何言ってるんですか、彼は先輩だってよく知るエリアスさんでしょう?」
「いや、俺はこの人を今日初めて知った。受付業務にはほとんど関わらないからな」
「本当に? エリアスさんとは初対面なんですか?」
「そーだよ。常連の冒険者パーティとなら顔馴染みだがな。この人は資料によると、フィースノーのギルドに来たのはごく最近らしいじゃねーか。むしろおまえがよく知ってたな? ……まさか口説かれたとか?」
「………………」
ルパートはエリアスを知らなかった。ということはつまり……。
「ルパート先輩、今日は何月何日ですか!?」
「はぁ? 日付が何だよ。おまえさっきからおかしいぞ?」
「いいから答えて!」
「ワケ解んねぇ……。深緑の月、11日だよ」
それは私とエリアスが初めて出会った日にちだった。私は拳を造った両手を振り上げて叫んだ。
「よぉーーーーっしゃあ!!!!」
私の剣幕に驚いた(引いた?)ルパートが数歩後退りしていたが構うものか。私の身体は歓喜に震えた。
戻った、私は過去を遡ったのだ!
この時間軸ではまだエンとマキアが生きている。信じ難いが時間を操作できるなんて、あの少女らしき声の主は「神様」と呼ばれる存在なのかもしれない。
「うう……ん?」
よっしゃあよっしゃあ叫ぶ私の声にエリアスが反応した。今回は背負う前に起こしちゃったな。
「……えっ? ここは? ……キミ達は?」
目覚めたばかりのエリアスに私は自己紹介をした。
「あ、どうも。冒険者ギルドのロックウィーナとルパートです。行方不明だった貴方を捜しに参りました」
「え、ああ、それは世話を掛けた。すまな……ええっ!?」
「失礼しまーす」
私はエリアスから上半身に着込んでいた鎧を脱がして、転がっていた大剣と共にルパートへ押し付けた。ついでに私のショルダーバッグも。
「はい、先輩の担当。私が彼を背負いますから周辺監視もよろしくお願いします」
「お、おう」
テキパキと動き指示を出す私にルパートもエリアスも目を丸くしていた。私にはのんびりしている時間が無いのだ。
ここから十日後にエンとマキアが死亡する。……何もしなければ。
少女は「過去を書き換えたら未来も変わる」と言った。ならば前回と違う行動、選択をすれば二人の死を回避できるかもしれない。
「さて、じゃあ街まで戻りましょう。せぇーのっ!」
エリアスの腕を肩に掛けた私は、腰を跳ね上げて一気に彼を背負った。
「えっ、ええ!?」
おんぶされたエリアスは私の背中で暴れた。こうなるのは知ってた。二回目だからね。
「なっ、駄目だ、降ろしてくれ! 私は自分で歩ける。女性に背負われるなど……」
強がっているがエリアスは後日、実はこの時は天に召されそうだったとルパートに打ち明けている。無理はさせられない。
「大人しくして!!」
私はピシャリと言い放った。
「ご自分の身体なんだから判るでしょう? 貴方の身体は限界なんです。そして負傷者を街まで送り届けるのが私の仕事です」
「だ、だが女性に……。せめてあちらの男性に担がれたい」
「それはできません。ルパート先輩にはモンスターと遭遇した際に、戦ってもらわなければならないので」
いざという時に荷物は簡単に投げられるが、怪我人を乱暴には扱えないからね。
以前はすぐに手ぶらになろうとするルパートに苛ついていたが、ガロン荒野やアンダー・ドラゴンのアジトでの彼を見て考えを改めた。ルパートは本気で私や要救助者を護ろうとしてくれた。
「……女性に背負われることに抵抗を感じるエリアスさんのお気持ちは解りますが、どうか私に任せて下さい。これまで私は何人もの男性を背負ってきました。大丈夫です。森を抜けた先に馬車を待たせてありますから、そこまで我慢して下さい。安全な街に着いたら支え役をルパート先輩にバトンタッチします」
私は背中のエリアスを振り返って微笑んだ。危ない。お互いの顔が接近し過ぎてキスをするところだった。
「じゃ、じゃあ行きますね……」
高身長で筋肉質な身体はやっぱり重かったが、私はエンとマキアを助けられるかもしれないという希望で気分が高揚していたので、悪路も苦とせずエリアスを搬送した。馬車が待機している地点まであっという間な感覚だった。
背中からエリアスを降ろす時、背後から一瞬だけ彼に抱きしめられた気がした。
☆☆☆
翌朝。私は冒険者ギルドの受付カウンター内で報告書を作成しつつ、エリアスの来訪を今か今かと待っていた。
未来を変えるには私一人の力では不安だ。エリアスもルパートもキースもガッチリ巻き込むつもりだった。
だからこそ昨晩、業務終了時刻と共にルパートを私の部屋に引っ張り込み、過去を遡ったことを説明して彼に協力を求めたのだ。
しかしルパートは笑いやがった。殺したいほど憎たらしい顔をして「ウィーちゃん頭大丈夫?」とほざきやがった。
だから私は言い返した。明日になれば判る。エリアスさんが私に会いに来て、手の甲にキスをして、私と先輩にパーティを組むよう要請して来ると。
私が知っていてルパートの知らない未来を示した。それでも奴はヘラヘラしていたけど。笑っていなさい、いくら否定してもその時は確実に来るんだからね。
「ウィー、エリアスさんは来たかぁ?」
机に向かう私の頭の上からムカつく声がした。昨日のことを回想していた私は、ルパートによって現在へと引き戻された。
「来ます。そろそろのはずです」
「おまえの手の甲にキスとか……ぷっ。おまえ知らないだろうが、あの人お貴族様だぞ? おまえなんかを相手にするかよ。恋愛小説読み過ぎ」
私が反論しようとした正にその時……、
「ウィーお姉様ぁ、お姉様に会いたいって人がいらしてますぅ」
受付嬢リリアナが私を呼んだ。キターーッ!! カウンター正面に身なりを整えた貴公子然としたエリアスが立っていた。
「え、アレ誰だ……?」
「エリアスさんですよ」
私はルパートに余裕の笑みで返した後、いそいそとエリアスの元へ向かった。ルパートも私の後を追ってきた。
他のギルド客の邪魔にならないように、エリアスを窓の在る壁際へ誘導した。
「ロックウィーナ嬢、昨日は大変世話になった」
エリアスは右手を胸に当て、左腕を折り曲げて背中に回してお辞儀をした。
「……騎士の挨拶じゃん」
ルパートが小声で呟いた。先祖が騎士だったというし、勇者の一族モルガナン家は騎士の作法が浸透しているのだろう。
そしてエリアスは私の右手を取った。いきますか、手の甲にちゅー。私の話を信じていないはずのルパートが身構えた。
しかしエリアスはキスをせず右膝を折って床に付けた。姫君に忠誠を誓う騎士のように屈んで見せた。カッコイイ。
そして彼は低く響く声で言った。
「レディ、私と結婚してくれ」
…………………………………………。
…………………………………………。
…………………………………………。
……………………あれ?