新五幕 マキアとエンとの再会(2)
文字数 4,030文字
☆☆☆
嵐のような会議は終わった。峠二つ越えてやって来たレクセンの二人を休ませる為に、会議室に集まった私達は一旦解散となった。
午後からいよいよアンダー・ドラゴンのアジトの一つへ向かい、モヒカン構成員達を蹴散らし、首領との繋がりを持つ連絡係を捕縛する。未来を変える大切なミッションだ。絶対に失敗はできない。
「おーいウィー、持ち物チェックは終わったかー? メシの時間まで一緒に何かしねぇ?」
ニッコニコ顔で私の部屋を訪れたルパートは、扉を開けた私の肩越しに、部屋の中でくつろぐキースの姿を見て戦慄した。
「なっ……何でキースさんがここに!?」
キースは優美な笑みを浮かべて答えた。
「もちろん隙有らばロックウィーナに手を出そうとする、キミみたいな不埒な輩 を監視する為にですよ。あとはホラ、僕も独りで部屋に居るとエリアスさんに襲われるかもしれないので。ここに避難させてもらいました」
「魅了したの自分じゃん……」
「ちなみにエリアスさんは今どうしているか判りますか?」
「魔王様を誘って訓練場へ行ったみたいだな」
「ああ、雑念を払いに行ったのですね。キミにも必要なことだと思いますが……。あーコラコラ、言ったそばから彼女のベッドに腰掛けない。彼女の隣に並ぼうとしない。キミも僕が持ってきた折り畳みイスを使いなさい」
「監視なんてしなくても大丈夫なのに……」
不貞腐れながらも折り畳みイスを広げるルパートへ、キースは冷めた様子で問い掛けた。
「ふふふ、どの口がそれを言うんですかね。大丈夫な男はね、見えない所でこっそり女性の手を握ったりしませんから」
「手ぐらいいいじゃん!」
「本当にいいと思っていたら堂々としますよね? やましい気持ちが有ったから、コソコソ隠れて触っていたのではないですか?」
「うっ……」
「キミもエリアスさんも、気安く女性の肌に触れ過ぎです」
「でもさ……二十代後半の男女だぜ? そのくらい……」
キースの顔から笑みが消えた。丁寧口調と共に。
「ルパートおまえ、ぶっちゃけて聞くけどさ、ロックウィーナと即ベッドインしたいとか思ってないか?」
「!」
キースのそのものズバリな質問もそうだが、ルパートの目が泳いだことに私はとても驚いた。
おいぃぃぃぃぃ!!!! そのつもりだったんかーい!
「待て、誤解するな。無理矢理する気はねーぞ! 俺だってもうウィーを傷付けたくない。ちゃんとウィーの許可が出るまで待つつもりだから!!」
ルパートは必死に自己弁護した。でもね、そうじゃない。ルパート、そうじゃないんだよ……。
「ルパート、性欲を前面に出すな」
「解ってるよ! でも惚れた女を前にして……。気持ちだけでは収まらないんだ」
「……それは僕だって男だから解る。だがな、ロックウィーナは戸惑っている。交際期間ゼロで二人の男からプロポーズされたんだぞ?」
キースが私の気持ちを代弁してくれた。
「混乱している彼女をよそに、おまえとエリアスさんはどんどん先へ進もうとしている。当事者である彼女の気持ちを置いてきぼりにして」
そう! 私も何度かそれを感じていた!
「迫る側からしたら判らないだろうが、女性が男性と密室で二人きりになる恐怖は相当なものだ。そんな状況で口説こうとしても、ロックウィーナは怯えて余計に心を閉ざすだけだぞ?」
「あ……」
ルパートは私を見た。私は何も言わなかったが、表情でルパートは察したようだ。
「ゴメン……。怖い思いをさせてしまっていたんだな」
「彼女と親しくなりたいのならもっと開けた場所へ行け。街で買い物とか、屋台で食べ歩きとか、公園で散歩とか。焦らずにゆっくり進むんだルパート。ロックウィーナに考える時間を与えてやれ」
ルパートは素直に頷いた。
「……うん、そうする。ありがとうキースさん。それとウィー、本当にゴメン」
解ってくれたようだ。ホッとして、私もキースに礼を述べた。
「ありがとうございますキース先輩。私が言いたくて、でも上手く言葉にできなかった気持を、先輩が全部言ってくれました」
キースは私に微笑んだ。
「……僕もね、この忌まわしい瞳のせいで、好きでもない相手に何度も言い寄られたことが有るんです。僕は男だけど、それでも自分の意思を無視されて押し倒されることは怖かったです」
「キース先輩……」
キースは簡潔に言ったが、長い間ずっと苦しんできたのだろう。長い前髪の間から僅かに覗く、哀しそうな瞳がそれを物語っていた。
「僕の話はこれでおしまい。さ、ルパート、健全な行動なら邪魔しませんからロックウィーナとお喋りでもしなさい」
「あ、うん、そうだな……」
ルパートは頭を掻きながら私へ話し掛けた。
「俺達、何度も一緒に買い物したりメシ食ったりはしたけど、業務の延長みたいな感じだったよな」
だよね。プライベートな時間でも上司の接待をしている嫌な気分だったよ。
「だからさ……今度はそういうんじゃなくて、その、仕事抜きで普通の男女として街へ遊びに行ってみないか……?」
……へ? 仕事抜きで遊びに……?
「それはデートですか? デートと言うヤツですか先輩!?」
生まれて初めてデートの誘いを受けた私は、思わず素で聞き返してしまった。ナンパされたこととプロポーズは有るんだけどね!
「ばっ、馬鹿! あからさまに言うな!」
ルパートは唾を飛ばす勢いで慌て出した。どうしたん? え、まさか恥ずかしがってるの?
「私とのベッドインを企んでいたくせに、何でデートの単語ごときで照れてるんですか! 変なとこで純情ですね? 無駄に可愛いじゃないですか!」
「うるせぇ知るか!! おまえだって顔が赤いじゃねーか!」
「だって普通の男女交際に憧れてたんだもん! デートに誘われるの初めてなんだもん!」
「おまえも可愛いな!」
二人して耳まで赤くして何を言い合っているんだろう私達は。すっかり穏やかな表情に戻っていたキースは、こちらを眺めながら自分で淹れたお茶を飲んでいた。
「二人ともほほえましいです。うん、アンドラの件が片付いたら街でリフレッシュしてきなさい。ま、僕もロックウィーナの保護者として付いていくんですけどね」
「付いてくるんかよ!!」
ルパートが大声で突っ込んだ。
☆☆☆
11時。私とルパート、キースは早めの昼食にしようと食堂へ向かった。途中で妻子持ちのベテラン職員セスと会い、彼も一緒のテーブルに着いた。
妙に意識し合って視線を合わせられないルパートと私を見て、セスはニヤニヤして言った。
「そっか~、ついに言ったのかルパート」
「え?」
「うん? まだウィーに告白してないのか? じゃあ今の無し」
「阿保かオッサン、そこまで喋って無しにできるか!」
ルパートはセスを軽く睨んだ後、
「……ウィーに好きだって気持ちは伝えたよ」
ぶっきらぼうだが正直に述べた。そのルパートの背中へ、セスは祝福の張り手をぶちかました。
バシーンと良い音が食堂に響いた。
「いってえぇ!」
「よく告白した、それでこそ男だ!! あーもー、ずっとヤキモキしてたんだぞー?」
「へ? セスさん、俺がウィーを好きだって知ってたのか!?」
「当たり前だろーが。俺がウィーに群がる男達を遠ざけていたのは、半分はおまえを応援する為だったんだぞ?」
「そ、そうなのか? 俺の気持ちって周りに駄々洩れだったのか!?」
羞恥心で頭を抱えるルパートへ、低い声で追い打ちが入った。
「おまえ以外の男はみんな気づいていたろうさ。まったく、無自覚というのはタチが悪い」
「永遠にお父さんポジションで良かったのに」
鍛錬を終えたエリアスとアルクナイトだった。石鹼の良い香りがするのでシャワーも浴びてきたようだ。
「お疲れさまです」
「あ、ああ、どうも……」
労 ったキースへ引き攣 った笑顔でエリアスは返した。魅了効果はもう消えたようだが、彼はしばらくキースに逆らえないだろう。
「あ、どうも皆さーん。俺達も相席させて下さーい!」
賑やかな明るい声。マキアとエンが料理が乗った盆を抱えてこちらへやってきた。会議中に怖がらせたかなと懸念したが、彼らは気にしていないようで安堵した。
「俺達はレクセン支部から来たマキアとエンです。あなたもギルド職員の方ですか?」
マキアは初めて会うセスへ挨拶した。髭面の山賊にしか見えないセスはニカッと笑った。
「おう、出動班のセスだ、宜しくな。ギルドの立ち位置は……そうだな、ロックウィーナの親父みたいなモンだ」
いつの間に。
「そんでコイツが婿 予定」
セスは隣に座るルパートの肩を組んだ。
「は? 有り得ない」
「そうだぞ、チャラ男は断じて違う。数えて三番目の男だ」
即座にエリアスとアルクナイトが不快感を露わにした。そしてキースの目が光った気がした。
「セス? 決めつけは良くないと以前お話ししましたよね? 一時間くらい」
「あ、キース……いやキースさん、すみませんでした」
セスはキースに説教を受けたことが有ったんだったな。雉 も鳴かずば撃たれまいに。
恋バナ大好きマキアくんは当然だがこの話題に食い付いた。相棒のエンは静かに食事をしていた。
「ロックウィーナさん、ルパートさんとお付き合いされているんですか?」
「してない」
エリアスが代わりに答えた。
「あ、じゃあエリアスさんと?」
「違う」
今度はルパートが否定した。
「え、じゃあロックウィーナさんはどなたと?」
「誰とも付き合ってないぞ。馬鹿二人が勝手に発情して、小娘につきまとっているだけだから」
魔王が説明した。
「そっかぁ、ロックウィーナさんは今フリーなのかぁ」
何気なく呟いたマキアを、エリアスとルパートの鋭い視線が射貫いた。まさに死線。
「ひっ!?」
マキアはエンの陰に隠れて、キースが溜め息を吐いた。
「ああもう、二人とも、そういう態度はいけませんよねぇ……?」
「あ、そうだな」
「大人げ無かった」
途端に萎 れるエリアスとルパート。キースの天職は猛獣使いなんじゃないかしらと、私は密かに思ったのだった。
嵐のような会議は終わった。峠二つ越えてやって来たレクセンの二人を休ませる為に、会議室に集まった私達は一旦解散となった。
午後からいよいよアンダー・ドラゴンのアジトの一つへ向かい、モヒカン構成員達を蹴散らし、首領との繋がりを持つ連絡係を捕縛する。未来を変える大切なミッションだ。絶対に失敗はできない。
「おーいウィー、持ち物チェックは終わったかー? メシの時間まで一緒に何かしねぇ?」
ニッコニコ顔で私の部屋を訪れたルパートは、扉を開けた私の肩越しに、部屋の中でくつろぐキースの姿を見て戦慄した。
「なっ……何でキースさんがここに!?」
キースは優美な笑みを浮かべて答えた。
「もちろん隙有らばロックウィーナに手を出そうとする、キミみたいな不埒な
「魅了したの自分じゃん……」
「ちなみにエリアスさんは今どうしているか判りますか?」
「魔王様を誘って訓練場へ行ったみたいだな」
「ああ、雑念を払いに行ったのですね。キミにも必要なことだと思いますが……。あーコラコラ、言ったそばから彼女のベッドに腰掛けない。彼女の隣に並ぼうとしない。キミも僕が持ってきた折り畳みイスを使いなさい」
「監視なんてしなくても大丈夫なのに……」
不貞腐れながらも折り畳みイスを広げるルパートへ、キースは冷めた様子で問い掛けた。
「ふふふ、どの口がそれを言うんですかね。大丈夫な男はね、見えない所でこっそり女性の手を握ったりしませんから」
「手ぐらいいいじゃん!」
「本当にいいと思っていたら堂々としますよね? やましい気持ちが有ったから、コソコソ隠れて触っていたのではないですか?」
「うっ……」
「キミもエリアスさんも、気安く女性の肌に触れ過ぎです」
「でもさ……二十代後半の男女だぜ? そのくらい……」
キースの顔から笑みが消えた。丁寧口調と共に。
「ルパートおまえ、ぶっちゃけて聞くけどさ、ロックウィーナと即ベッドインしたいとか思ってないか?」
「!」
キースのそのものズバリな質問もそうだが、ルパートの目が泳いだことに私はとても驚いた。
おいぃぃぃぃぃ!!!! そのつもりだったんかーい!
「待て、誤解するな。無理矢理する気はねーぞ! 俺だってもうウィーを傷付けたくない。ちゃんとウィーの許可が出るまで待つつもりだから!!」
ルパートは必死に自己弁護した。でもね、そうじゃない。ルパート、そうじゃないんだよ……。
「ルパート、性欲を前面に出すな」
「解ってるよ! でも惚れた女を前にして……。気持ちだけでは収まらないんだ」
「……それは僕だって男だから解る。だがな、ロックウィーナは戸惑っている。交際期間ゼロで二人の男からプロポーズされたんだぞ?」
キースが私の気持ちを代弁してくれた。
「混乱している彼女をよそに、おまえとエリアスさんはどんどん先へ進もうとしている。当事者である彼女の気持ちを置いてきぼりにして」
そう! 私も何度かそれを感じていた!
「迫る側からしたら判らないだろうが、女性が男性と密室で二人きりになる恐怖は相当なものだ。そんな状況で口説こうとしても、ロックウィーナは怯えて余計に心を閉ざすだけだぞ?」
「あ……」
ルパートは私を見た。私は何も言わなかったが、表情でルパートは察したようだ。
「ゴメン……。怖い思いをさせてしまっていたんだな」
「彼女と親しくなりたいのならもっと開けた場所へ行け。街で買い物とか、屋台で食べ歩きとか、公園で散歩とか。焦らずにゆっくり進むんだルパート。ロックウィーナに考える時間を与えてやれ」
ルパートは素直に頷いた。
「……うん、そうする。ありがとうキースさん。それとウィー、本当にゴメン」
解ってくれたようだ。ホッとして、私もキースに礼を述べた。
「ありがとうございますキース先輩。私が言いたくて、でも上手く言葉にできなかった気持を、先輩が全部言ってくれました」
キースは私に微笑んだ。
「……僕もね、この忌まわしい瞳のせいで、好きでもない相手に何度も言い寄られたことが有るんです。僕は男だけど、それでも自分の意思を無視されて押し倒されることは怖かったです」
「キース先輩……」
キースは簡潔に言ったが、長い間ずっと苦しんできたのだろう。長い前髪の間から僅かに覗く、哀しそうな瞳がそれを物語っていた。
「僕の話はこれでおしまい。さ、ルパート、健全な行動なら邪魔しませんからロックウィーナとお喋りでもしなさい」
「あ、うん、そうだな……」
ルパートは頭を掻きながら私へ話し掛けた。
「俺達、何度も一緒に買い物したりメシ食ったりはしたけど、業務の延長みたいな感じだったよな」
だよね。プライベートな時間でも上司の接待をしている嫌な気分だったよ。
「だからさ……今度はそういうんじゃなくて、その、仕事抜きで普通の男女として街へ遊びに行ってみないか……?」
……へ? 仕事抜きで遊びに……?
「それはデートですか? デートと言うヤツですか先輩!?」
生まれて初めてデートの誘いを受けた私は、思わず素で聞き返してしまった。ナンパされたこととプロポーズは有るんだけどね!
「ばっ、馬鹿! あからさまに言うな!」
ルパートは唾を飛ばす勢いで慌て出した。どうしたん? え、まさか恥ずかしがってるの?
「私とのベッドインを企んでいたくせに、何でデートの単語ごときで照れてるんですか! 変なとこで純情ですね? 無駄に可愛いじゃないですか!」
「うるせぇ知るか!! おまえだって顔が赤いじゃねーか!」
「だって普通の男女交際に憧れてたんだもん! デートに誘われるの初めてなんだもん!」
「おまえも可愛いな!」
二人して耳まで赤くして何を言い合っているんだろう私達は。すっかり穏やかな表情に戻っていたキースは、こちらを眺めながら自分で淹れたお茶を飲んでいた。
「二人ともほほえましいです。うん、アンドラの件が片付いたら街でリフレッシュしてきなさい。ま、僕もロックウィーナの保護者として付いていくんですけどね」
「付いてくるんかよ!!」
ルパートが大声で突っ込んだ。
☆☆☆
11時。私とルパート、キースは早めの昼食にしようと食堂へ向かった。途中で妻子持ちのベテラン職員セスと会い、彼も一緒のテーブルに着いた。
妙に意識し合って視線を合わせられないルパートと私を見て、セスはニヤニヤして言った。
「そっか~、ついに言ったのかルパート」
「え?」
「うん? まだウィーに告白してないのか? じゃあ今の無し」
「阿保かオッサン、そこまで喋って無しにできるか!」
ルパートはセスを軽く睨んだ後、
「……ウィーに好きだって気持ちは伝えたよ」
ぶっきらぼうだが正直に述べた。そのルパートの背中へ、セスは祝福の張り手をぶちかました。
バシーンと良い音が食堂に響いた。
「いってえぇ!」
「よく告白した、それでこそ男だ!! あーもー、ずっとヤキモキしてたんだぞー?」
「へ? セスさん、俺がウィーを好きだって知ってたのか!?」
「当たり前だろーが。俺がウィーに群がる男達を遠ざけていたのは、半分はおまえを応援する為だったんだぞ?」
「そ、そうなのか? 俺の気持ちって周りに駄々洩れだったのか!?」
羞恥心で頭を抱えるルパートへ、低い声で追い打ちが入った。
「おまえ以外の男はみんな気づいていたろうさ。まったく、無自覚というのはタチが悪い」
「永遠にお父さんポジションで良かったのに」
鍛錬を終えたエリアスとアルクナイトだった。石鹼の良い香りがするのでシャワーも浴びてきたようだ。
「お疲れさまです」
「あ、ああ、どうも……」
「あ、どうも皆さーん。俺達も相席させて下さーい!」
賑やかな明るい声。マキアとエンが料理が乗った盆を抱えてこちらへやってきた。会議中に怖がらせたかなと懸念したが、彼らは気にしていないようで安堵した。
「俺達はレクセン支部から来たマキアとエンです。あなたもギルド職員の方ですか?」
マキアは初めて会うセスへ挨拶した。髭面の山賊にしか見えないセスはニカッと笑った。
「おう、出動班のセスだ、宜しくな。ギルドの立ち位置は……そうだな、ロックウィーナの親父みたいなモンだ」
いつの間に。
「そんでコイツが
セスは隣に座るルパートの肩を組んだ。
「は? 有り得ない」
「そうだぞ、チャラ男は断じて違う。数えて三番目の男だ」
即座にエリアスとアルクナイトが不快感を露わにした。そしてキースの目が光った気がした。
「セス? 決めつけは良くないと以前お話ししましたよね? 一時間くらい」
「あ、キース……いやキースさん、すみませんでした」
セスはキースに説教を受けたことが有ったんだったな。
恋バナ大好きマキアくんは当然だがこの話題に食い付いた。相棒のエンは静かに食事をしていた。
「ロックウィーナさん、ルパートさんとお付き合いされているんですか?」
「してない」
エリアスが代わりに答えた。
「あ、じゃあエリアスさんと?」
「違う」
今度はルパートが否定した。
「え、じゃあロックウィーナさんはどなたと?」
「誰とも付き合ってないぞ。馬鹿二人が勝手に発情して、小娘につきまとっているだけだから」
魔王が説明した。
「そっかぁ、ロックウィーナさんは今フリーなのかぁ」
何気なく呟いたマキアを、エリアスとルパートの鋭い視線が射貫いた。まさに死線。
「ひっ!?」
マキアはエンの陰に隠れて、キースが溜め息を吐いた。
「ああもう、二人とも、そういう態度はいけませんよねぇ……?」
「あ、そうだな」
「大人げ無かった」
途端に