第22話 重ならない視線<甘えか思いやりか>

文字数 7,874文字


 朝ごはんとお弁当の用意をしようと制服に着替えて下へ降りると
「おはよう愛美」
 そう言えば、
「今日はお母さん朝のうちはいるんだっけ?」
「金曜日は愛美に任せっきりにしてしまったから」
 お母さん居るんだっけ?逆に金曜日はお母さんがいると思って、買い物行くのも夕ご飯作るのも忘れかけていて、金曜日の空木君の前で晒した放課後の失態を思い出す。空木君が……忘れるわけないよね。
「それよりも慶久はいつもギリギリなの?」
 お母さんがまだ降りてこない慶の部屋のある2階を見やる。
「早かったり遅かったりだよ」
 最近慶が友達と遊んでるんだか勉強してるんだかで、帰りが遅い事は言わないでおく。
「どうする? 愛美が食べるならお母さんも一緒するけど」
 昨夜のお礼も改めて言いたかったから
「それじゃ先に食べようかな」
 お母さんと二人で朝ご飯を済ませてしまう。
 いい加減慶を起こしに行かないと遅刻と言う時間になって
「おいねーちゃん。何で起こしに来ねーんだよ? いつもは入って来んなって言っても入って来るくせに」
 間違いなくお母さんがいる事を忘れていたとは思うけれど
「ちょっと慶久! お姉ちゃんに起こしてもらってそんな言い方してるの?」
 お母さんにばっちり聞かれてしまう。
「うぜぇ」
 お母さんを見て、言葉通りいやそうな顔をしてそのまま洗面所へ行ってしまう。
「ちょっと愛美、慶久はいつもあんななの?」
 ちょっとお母さんのご機嫌がナナメっぽい。
「今は寝起きだからじゃないかな?」
 普段からあんな感じではあるけれど、もう少し可愛げはある。
「ちょっと慶久。あんた学校でもそんな喋り方してないでしょうね?」
 そんな慶に朝からお母さんの説教が始まる。
「朝からうっせーよ! イチイチおせっかいだっつうの」
 朝から小言を言われるのがしんどいのは分かるけれど
「いつもみたいに普通にしゃべれば、お母さんにも誤解されなくて済むのに」
 いつも思うのだけれど、どうしてわざわざ誤解されるような言い方をするのか。
「愛美、お母さんが出た後からもし慶久がこんな喋り方をしたらすぐに連絡してきなさい。お母さんが注意するから」
 でも私相手だと、そこまで乱暴な言葉は使わないから
「うん分かった」
 こう返事をしたとしても、実際には電話をかける機会は無いのだ。
「ほんとうぜぇ。俺もう行くわ。ババァはもう帰ってくんな」
「慶!」
 朝から小言を言われて腹立ったのは分かるけれど、今のはいくら私でも頂けない。
「ホント慶の奴……」
 言い方は散々注意しているのに。
「はぁ……あの子いつもあんな感じなの?」
「いや今日は珍しいよ。思わず私も注意しちゃったくらいだし」
 かばうつもりはなかったのだけれど、今の今だからか
「愛美、家族を大切にすることは良い事だけど、ちょっと慶久に“甘く”ないかしら」
 言わんとする事は分からなくはないけれど、これは“甘さ”なのかな。
 いつも慶には注意してるはずなんだけれど、なんだか最近この距離感が分からない。
 そんな事を考えている間に、
「じゃあ私も学校行くね」
 時間になったから、
「愛美も気を付けて行ってらっしゃい」
「うんお母さんもお仕事頑張ってね」
「そうそう、今日の夕ご飯は作り置きしておくから」
 お母さんのありがたい言葉を背に、今朝はいつも通りに起きた分ゆとりをもって登校する。



 学校へ着いて自分の教室の机にカバンを置いたところで
「ちょっと愛美さん知ってる? 蒼依さん戸塚君と付き合い出したんだって」
 咲夜さんの話を聞いて、もう少しで準備していた教材を落とすところだった。
「その反応は愛美さんも知らなかったって事?」
 ああ、端から見たらそう見えるのかもしれないけれど、私がびっくりしたのはそこじゃない。
「蒼依さんひどいよね。あたしたちに内緒でさ」
 でも、詳しいいきさつを知らない咲夜さんが、蒼ちゃんに腹を立てているように見えたから
「違うよ、私は蒼ちゃんから相談を受けていたんだけれど……」
 周りを見ると、もう結構噂が広がっているみたいで、蒼ちゃんを遠巻きに見ている人、あからさまに落ち込んでいる男子、周りもその話題が多いのだろう、時折蒼ちゃんの方を見て話をしているグループも多い。
 そんな教室の雰囲気に慌てた私の一言に
「あの戸塚君と付き合うのに相談?」
 咲夜さんが眉を顰めるように聞いてくる。
 え。そんなに戸塚君って人気あったのか。今までそんな話題出た事無いと思うんだけれど。
 幸い周りは蒼ちゃんに集中していて、こっちに気を取られた人はいないようでほっとする。周りを確認した私は改めて、咲夜さんに聞き直す。
「そんなに戸塚君って人気なの? 今まで話題に出た事無いと思うんだけれど?」
 いくら男子に興味が無い私でも、話題に上がれば全く記憶にないって事はさすがに無いと思う。
「そりゃ戸塚君だよ? 下手に話題に出して抜け駆けされてると思われたら大変だもん」
 え。なんなのか。その協定みたいな牽制みたいなの。
 今度は私がびっくりして声が出せないでいると
「そりゃ愛美さんは癒しの副会長がいるから、気にならないだろうけど、戸塚君ってサッカー上手いし、スポーツ推薦も取れるって言うくらい将来も有望だから」
 有望だから、人気って事なのか。でもそれとこれは話が別だと思うんだけれど。
「でも初めて男の人と付き合うのに、相談って変かな?」
 初めて男の人と付き合うなら、不安とかもあると思うんだけれど。
 特に蒼ちゃんは戸塚君の方から、よく知りもしないうちに声をかけられてるんだから。そんな蒼ちゃんの性格を理解しきれていないのか、
「へぇ。戸塚君相手でも相談って、蒼依さんって男子の理想高かったんだね」
「蒼ちゃんはそういう子じゃないよ」
 咲夜さんの蒼ちゃんに対する言葉に険が含まれているのを感じて、自分の言葉に後悔する。まさかそう言う捉えられ方をするとは思わなかった。
 言い換えれば、そこまで戸塚君の人気が高かったと言う事なんだろうけれど。
「いやそれでも、この学校一のスポーツイケメン相手に相談って……あたしなら喜んで一発OK出すけどなぁ」
 その上そこまでイケメンなのか。
 前にも言った通り、私は容姿にはあまりこだわらない。
「でも好みなんて人それぞれだから、理想が高いとか低いとかじゃないと思うけれど」
 そんな統一的な基準で決めてしまったら、世の中の男性全員に失礼だと思う。
「癒しの副会長のご尊顔を毎週見てるとそうなるのも分かるけど」
 いやだから私は容姿をあんまり気にしないんだってば。
「実際さっきも言った通り間違いなくスポーツ推薦貰える上にイケメンだからなぁ」
 咲夜さんがその戸塚君の事を思い出しているのだろう、うっとりした表情をしている。私は戸塚君の表情どころか、姿すら知らない。部活動割り当て費で見た名前くらいしか知らないし、興味もないのだ。
 だた、そんな咲夜さんの雰囲気、教室の雰囲気を感じて、嫌な予感がした私は
「とりあえず今はここだけの話にしておいて。お願い」
 咲夜さんに今の話の口止めをお願いする。
「まあ愛美さんのお願いだから、あたしからは何も言わないけれど」
 何か含みを残したような咲夜さんの返事と共に、始業の予鈴が鳴る。
 その時に見えた蒼ちゃんの表情は、不安に押しつぶされそうな表情だった。


 昼休み何とか蒼ちゃんの話を聞きたかったのだけれど、授業が終わって声をかける前に教室を出て行ってしまう。
 朝も一言も声をかけれられてないし、昼休みもいつも私の所に来ていた蒼ちゃんは来ない。一方実祝さんもまた、教室の雰囲気に我関せずで恐らく食堂へ行ったのか、教室にはいない。
「愛美さんが珍しく一人。あたしが一人寂しくお昼をする愛美さんに付き合ってあげよう」
 私が二人を見ている間に咲夜さんがこっちに来て、いつも通り購買で買ったおにぎりを口に入れる。
「私はいつもお弁当で、蒼ちゃんも実祝さんも普段は食堂だよ」
 ただ私がお弁当を食堂に持って行ってるだけで。
「相変わらず愛美さんのお弁当は美味しそうだねー」
 私がお弁当の蓋を開けると、咲夜さんが感嘆する。
「これくらいならすぐに作れるようになるよ」
 前に蒼ちゃんにしたのと同じような返事をすると、話を戻して咲夜さんが続きを口にする。
「でもいつも三人で、いや最近は二人でよくお昼してたよね」
 ――蒼依戸塚君の事、好きになってみる――
 蒼ちゃんの言葉を思い出した私は
「ひょっとしたら戸塚君と一緒にお昼してるのかも」
 ――好きになってみるって言ってたから――
 相手の良い所、良いなと思える所を見つけようと思うと一緒の時間を増やすのはありだと私は思う。もちろん朝の険の事もあるから、後半は口にはしていない。それでも
「蒼依さんも薄情だよねー。男が出来たらすぐにこれかぁ~」
 咲夜さんの言葉に込められた険が強くなる。
「でも、付き合いたてだったら少しでも一緒にいたいと思うものなんじゃ?」
 経験は無くてもそれくらいは私にも分かる。
「それにしたって、今までずっと一緒にお昼してたのに、一言も無し?」
 それでも、咲夜さんの蒼ちゃんに対するネガティブは止まらない。それでも蒼ちゃんが幸せになれるなら良いとは思うけれど、やっぱり色々何かが引っ掛かる。
「それより、もう来週中間テストだね」
 だから、これ以上蒼ちゃんに対する悪い印象を聞きたくなかった私は話題をそらす。
「今度は始めから愛美さんに教えてもらうから大丈夫。前にも中間試験の時にはお世話になるって言ったし」
 もう咲夜さんの中ではその気になっていたみたいで
「教えるって放課後に?」
 だったら慶のごはんの事もあるから――あ。
「いや~そうじゃなくて、愛美さんの家で出来たらと」
 って私の家でなのか。
「でも私の家弟いるから、がさつでうるさいよ?」
 その上、慶は最近帰りも遅いから、それだと勉強にならない気がしたから、実祝さんと同じ内容で一度断る。
「そう言えば弟クンの弁当も作ってるって言ってたっけ?」
「それもあるけれど、ちょっと聞いてみてからだから、明日か明後日返事でも良いかな?」
「あたしはいつでも大丈夫」
 何となく私の家ですることが前提となっていそうだけれど、実祝さんがOK出さない事には勝手には言えないよね。私も咲夜さんも食べ終わって
「じゃあその話楽しみにしてるから」
 そう言ってまた別のグループの所に行ってしまう。本当にクラスになじむのがうまい人だと思う。
 そんな咲夜さんを見送っていると、実祝さんが帰って来たから小さく手を振る。実祝さんはそんな私に気が付くと、視線だけを合わせて自分の席に着く。
 実祝さんもそうだったけれど、蒼ちゃんが帰って来たのは昼休みの終わる直前だったから結局どちらとも話せないまま、気になる事、気がかりな事だけを増やして午後の授業が始まる。


 午後の授業も終わった終礼の時
「今回の中間から赤点でも追試は無いからなー。一発勝負で成績に響くからしっかり取り組めよー。それと今回からテストの順位の貼り出しも一緒に行うからなー」
 いつも通りこっちの緊張感をそぐような間延びした言い方で、結構重要な連絡事項が担任の先生から伝えられる。
 先生の連絡で教室内が喧騒に包まれる中
「じゃあ解散!」
 先生の号令によって、放課後となる。
 何とか一言でも話が出来ればと思ったんだけれど、蒼ちゃんはすぐに教室から出て行ってしまう。中学の時以来の付き合いで、学校で一日中一緒にいて一言もしゃべらなかったのは初めてかもしれない。
 一方実祝さんの方もすでに机の上は綺麗に片付けられている。
 また二人ともいなくなってしまったから、蒼ちゃんの所には夜電話しようと決めて、実祝さんがいるであろう図書室のへ
「あーあ。彼氏が出来たとたんに余裕ですか」
「“姫”もテスト勉強は必要なしですか」
 例のグループがあからさまな悪意を男子も女子も関係なく、教室中に広める。
 ただ救いなのは女子は一定数“同調”している人がいるのに対し、男子は眉をひそめている人の方が多い。何にも知らない例のグループにカチンと来た私が文句を言おうと、後ろに向こうとした所に
「――」
 腕に何かが当たる。その元をたどると咲夜さんが廊下に出ろとの合図。
 前に咲夜さんが言っていた言葉を思い出してカバンを持って教室を離れる。
「愛美さんって結構喧嘩っ早い?」
 場所変わって食堂にての一言目。
「喧嘩っ早いとかそう言うんじゃなくて、友達の悪口言われたら気分悪いよ」
 そりゃ咲夜さんは蒼ちゃんと仲良くなって日は浅いかもしれないけれど、
「でもその友だちの蒼依さんも彼氏が出来たとたんこれでしょ?」
 こっちは蒼ちゃんとは中学の時からの5年来の付き合いなのだ。
「好きな人と一緒にいたいって思うのは普通の事なんじゃないの?」
 何度だって同じことを言う。
 私は蒼ちゃんの事も知っているから、クラスの同調圧力にも流されない。
「でも、今まで一緒にご飯してきた友達に一言も相談なく放っておいて?」
 再び咲夜さんの言葉に険が混じり始める。
「それにそれだけだったら、みんなに自慢する必要なくない?」
 混じり始めた咲夜さんの険が強くなる。って言うか、蒼ちゃんが自慢……あのあれだけ話題に上がるのすら恥ずかしがっていた蒼ちゃんが……どう考えてもおかしい。
「それ、蒼ちゃんから聞いたって事?」
 蒼ちゃんの性格からしてほとんどあり得ないのだ。
「そう言えば蒼依さんからは聞いてないなぁ。でもあたしが来た時にはクラスの大半が知ってたよ」
 咲夜さんの話を聞いて大体の目星はついた。
「それって蒼ちゃんが来る前には広がってたって事だよね」
 金曜日の夜に蒼ちゃんから連絡があって、一昨日・昨日の土日に広まるとはいくら何でもないと思う。となると、心当たりは必然一人になる。
「だとしたら誰か? 戸塚君?」
 私と同じ結論にたどり着く。
「じゃあ蒼ちゃん悪くないよね」
「愛美さんは蒼依さんと仲が良いからそう思うかもしれないけど、普通これだけあからさまだったら引くって」
 それは金曜日の夜の電話相談を、不安に思っている事を聞いた話をしていないからと言うのもあると思う。でも、朝の感じだとこの話をするとまたおかしな捉えられ方をされてしまいそうで話したくても話せない。
 それにあの日蒼ちゃんは家で、私しか話を聞いていない事をケータイにかけてまで確認して、話しにくい、誰にも聞かれたくない話をしてくれた内容を私が話すわけにもいかない。
「自分で自慢したんじゃなくても、あたしなら引くわー」
 ……つい先日までお昼を一緒していた相手でも、たった一つ知らない事。言えない事があるだけで、これだけ視点や受け取り方が違ってしまうものなのか。
 私にはそれがとても恐ろしく、同時に寂しくも感じた。

「まあ愛美さん“の”友達にこれ以上言うのは辞めとく。あたしは別に愛美さんとケンカしたいわけじゃないし」
 それだけ言って帰って行ってしまう。
“あのグループとはあんまり関わらない方が良いよ”とだけ言い残して。

 そんな咲夜さんを見送ってから気を取り直して実祝さんのいるであろう図書室へと向かう。今回もいつも通りの席に座っていた実祝さんの正面に腰掛ける。
「今日も遅かったけど、教室でまたあたしの事、何か言ってた?」
 それを待っていたかのように、実祝さんがペンを置いて聞いてくる。
 但し今回は実祝さんだけじゃなくて、蒼ちゃんの事も言われている。
「……あたしは愛美さえ分かってくれれば良いから、別にそれでも良いけど」
 私がどう伝えようかと迷っているのを肯定と受け取ったのだろうけれど
 ――もう少し夕摘さんも喋り易かったらなぁ――
 実祝さんの言葉と同時に、咲夜さんの言葉を思い出す。
 蒼ちゃん以外にも同じように思ってくれているクラスメイトだっている。
 それを知らない
「中間テストの時間割も出たけれど、実祝さんいつなら都合良い?」
 実祝さんは蒼ちゃんの事も咲夜さんの事も当然話題には出さない。
「あたしはテスト前になるけど、総復習と見直しと言う意味で土曜日が良い」
「分かった。じゃあ土曜日の日に何時にどこで待ち合わせする?」
 本当は今だから、この教室の雰囲気だから蒼ちゃんと仲良くして欲しい。
 実祝さんのショックも分からなくはないけれど、実祝さん自身が友達が欲しいと言うのはこの前ので分かっていたから、
「じゃあ午前11時に駅の改札口の所で待ち合わせ」
 私は“夕摘さんがもう少し喋り易かったらなぁ”と言っていた
「もう一人誘いたい人がいるんだけれど良いかな?」
 咲夜さんの言葉を思い出して実祝さんに声を掛ける。
「悪いけど、あたしは防さんを信用できない」
 あの時のショックがなかなか抜けないのは分かる。
 まだ仲良くなり切る前だったから。
「それに防さん彼氏がいるんだろうし、彼氏と勉強するんじゃ?」
 でも、実祝さんまでクラスのあのグループと同じように思っていたのはショックだった。
 本当に友達って分からないものだなって思う。
「蒼ちゃんは彼氏が出来たからって私たちを放っておく子じゃないよ」
 私は今は距離を開けるのは仕方なしに受け入れてはいるけれど、蒼ちゃんを穿った見方をするのだけはして欲しくなかった。
「前にも言った通り、愛美の言う事だから理解はしても納得は出来ない」
「違うよ。前にも言った通り今は無理に蒼ちゃんと仲良くしてとは言わない。その代わりに月森さんと一緒にって言うのはどうかなと思って」
 本当は無理やりにでも蒼ちゃんと今すぐ仲良くして欲しい気持ちを飲み込んで咲夜さんの名前を三人目として呼ぶ提案する。
「月森さんって、最近愛美と一緒にいる?」
 そう言った実祝さんの雰囲気に剣呑さが混じる。
「そう、蒼ちゃんじゃないから実祝さんも抵抗ないよね?」
 即答してしまう蒼ちゃんよりかはマシな気がする。
「ひょっとして愛美は私と二人は嫌?」
 あーどうしてそう思うんだろうか。
「私は二人でももちろん良いんだけれど、前に言ったかもだけれど、咲夜さんも実祝さんと仲良くしたいって言ってくれているクラスメイトだから」
 実祝さんに一人でも多くの友達、理解者がいてくれると、それだけ例のグループの一言に耳を貸す人も減ると思う。
「……愛美の言いたい事は分かったけれど、今回だけは愛美だけでお願い。月森さんとの事は改めて考えさせてほしい」
 私の提案には反対だったけれど、その言葉の中には前向き考えてくれている事、さっきまでとは違う雰囲気も混じっていたから、これ以上食い下がるのは止めておく。
「分かった。じゃあ今週の土曜日駅前に11時に集合でね」
「うんありがとう愛美」
 そして元々二人だったという話の通り、二人だけの勉強会の日取りを決めて、下校まで集中して中間対策の勉強をする。



―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――

       「ちょっと慶! あんた最近ちょっとだらけ過ぎ!」
           ますますだらける弟の生活リズム
        「また職員室まで来てもらっても良いか?」
            再びの担任からの呼び出し
         「先生? さっきの視線はセクハラですよ」
           呼び出された話とは何だったのか

      「違うよ。わたしたちは友達じゃなくて親友。違う?」
         そして放課後にだけ現れる金髪の女の子


            23話 交わらない視点<奔走>
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