第25話 2方向の視線<敵意と優しさと>

文字数 8,016文字


 午前中は咲夜さんから聞いた話を確認していた事もあり、実祝さんとも蒼ちゃんとも喋る事は出来なかった。そんな昼休みをどうしようかと考えていると、珍しくお弁当を持って大方こっちへ来ようか辞めておこうかでオロオロしている蒼ちゃんが視界に入ったから、
「蒼ちゃん一緒にお昼しよ」
 教室の中で手を振って蒼ちゃんを呼ぶ。
 私が蒼ちゃんを呼ぶと、教室の中が少し静かになる。クラスの一部が蒼ちゃんを意識しているのは丸分かりだったけれど、私にはそんなの関係ない。
 でも、人一倍周りを気にする蒼ちゃんは、オロオロしていた態度をアワアワさせながらこっちへ来て
「愛ちゃん声大きいよ」
 やっぱりオロオロしながら、食堂へ行ったのだろう私の前の人の席に腰掛ける。
「なんで? 何も悪い事はしていないんだから堂々としていれば良いよ」
 あまりにも蒼ちゃんが自分の教室に居辛そうだったから、その分私が堂々としていようと思う。前回の週末の活動の時、朱先輩目当ての周りの男の人に押されて一歩引いた時、朱先輩からその引いた一歩を埋めるように踏み込んできてくれた朱先輩に、男の人には申し訳なく思う気持ちの反面、確かに心が温かくなる安心感が生まれたのをもう私は知っているのだから。教えてもらったのだから。だったら私もこの朱先輩に教えてもらった安心感を蒼ちゃんにも少しでも良いので伝えたいなって思う。
 もう1年切った学生生活、私と一緒にもっと学生生活を送りたいって言ってくれた蒼ちゃんにも卒業する時には笑顔でこの学校・このクラスで良かったって思って欲しい。
「ホント、今からでも愛ちゃんの彼女になりたいよ」
 蒼ちゃんが包みを開けたお弁当からおかずを一つ、小さな口の中に入れて上目遣いでこっちを見て、モゴモゴ喋る。その一つ一つの動作・言葉にあざとさを感じないと言うか無いのが蒼ちゃんらしい。
 でもちょっと待って、これだけは訂正しないといけない。
「蒼ちゃん。私は女だから蒼ちゃんの彼氏にはなれないよ」
 蒼ちゃんは必ず私を彼氏にしたがる。そりゃ蒼ちゃんに比べたら女の子っぽくは無いかもしれないけれどさ。でも“自分が女であることを忘れるなよ”と言わんばかりに、今回も体はだるいし、お腹の違和感も続いているのだ。
「……」
 私が蒼ちゃんを呼んでからこっち、教室内がいつもの休み時間に比べてこっちを窺っているのが分かるくらいには静かだ。それでも例のグループやクラスの女子からの嫉妬が全てでは無いのだ。一部では男子も騒いでいるし、女子グループも姦しくしている所もある。
 だから敢えて私はこういう言い方をする。今苦しめている人がクラスの全部じゃないって事を伝えるために、学校全体で見ればもっといろんな意見を持ってる人もいるって蒼ちゃんに伝えるために。
「蒼ちゃんのその上目遣いを他の男子にしたら、絶対に人気爆発するよ」
 ――あんな自分の彼女の意見すら聞かない男を選ばなくても――
 もう毒を食らわば皿まででもある。私は蒼ちゃんにいろんな意見や考え方があるって伝えたかったんだけれど、蒼ちゃんはそう取らなかったみたいで
「愛ちゃんって自分には鈍感だよね。まるで男の子が主人公のアニメみたい」
 もう半分以上なくなった私のお弁当を見ながら、ため息をつく。
 なんか蒼ちゃんの為に色々しているつもりなのに、鈍感でおまけに男の子みたいって。実祝さんや咲夜さんは私を一応女の子扱いはしてくれるんだけれどなぁ。
「私、女の子に見えない?」
 そりゃ蒼ちゃんからしたらまだまだかもしれないけれど、私だって家事炊事できるのに。
「そんなの分かってるよ。愛ちゃんの乙女力は蒼依じゃ足元にも及ばないんだから」
 そう言う割には、さっき私を彼氏にしようってしてたよね……あれ。乙女力ってなんで。
「乙女力って? 女子力じゃないの?」
 もう少しで聞き逃すところだった。
「愛ちゃんさぁ。また料理の腕上げたよね?」
「え? なんで? 私今週に入ってからテスト勉強しかしてないよ? それを言うなら新作のお菓子を作ってる蒼ちゃんの方がよっぽど女子力は高いと思うけれどなぁ」
 私には心当たりがない。
「愛ちゃん。お昼ご飯に貝類を使うって冷食じゃないならかなり難しいよ?」
 思い当たる事が無いと言う私の表情を読み取って少し具体的に教えてくれる。
 ああ、この朱先輩に教えてもらったアヒージョもどきの事かぁ。ようやく私はお弁当箱の中に忍ばせた密閉タッパの事に至る。
「まぁ、これはまだお試し中だしね」
 貝類は確かに腐りやすいので腐らないように密閉して量も少なめにして……味もまだまだ試行錯誤中なのだ。朱先輩の味に出来る自信もないけれどね。
「愛ちゃんならさ、その料理の腕ならどんな男子の胃袋も簡単につかめると思うけどなぁ」
 蒼ちゃんの妙に具体的な話に対して、空木君も料理上手な子が良いのかなぁ。でも、この前空木君本人も台所には結構立つって言ってたし。
「……」
 だとしたら空木君と一緒に料理を作るなんて――っ。
「……愛ちゃん。今誰のこと考えてたの? 絶対男の子だよね?」
 むーって可愛い顔で私を睨んでくる蒼ちゃん。
 どうして私は自然に空木君の事を考えたのか。空木君には雪野さん……がいるのに……。
「そ、そんな事無いよ? ただ私の作ったものでも、そんな男子いるのかなって思っただけだよ」
 顔が赤くなっていない事を祈りながら、平静を装う。
「愛ちゃんは男子から人気が高いんだから、愛ちゃんの彼氏さんは苦労するよ。絶対他の男子から嫉妬の目で見られるに決まってる」
 そろそろ昼休みも終わろうかと言う事もあって、そう言いながら蒼ちゃんがお弁当箱を片付け始める。それは人気の高いらしい彼氏と付き合っている蒼ちゃんの実体験だからか、妙に説得力を持っていた。
「でも私は蒼ちゃんみたいに今まで告白されたことないけれどなぁ」
 だから、男子から人気が高いと言われてもピンとこないし、当然だけれど朱先輩と一緒に活動していても、私には一度も男性から目を向けられたことも声を掛けられた事もない。
「色んな人に好かれるより、一人で良いから自分の好きな人に好かれるのが一番嬉しいよ。絶対」
 それもまた、ほとんど知らないけれど人気の高いらしい戸塚君から告白されて、周りからの嫉妬に苦しんでいる蒼ちゃんだからこその説得力を持った一言だった。
「じゃあ蒼依は行くね。ありがとう。愛ちゃん」
 そうこうしているうちに、結局女子力と乙女力の違いを聞けないまま、蒼ちゃんが自分の席へ戻る。


 午後の授業もつつがなく終わった放課後“先生に呼ばれてるから、蒼依行くね”そう言って教室を出ていく蒼ちゃんを見送って、朝の件を担任に聞きに行こうと
「愛美さん。おつかれ」
 教室を出ようとした私を、周りに人気が減ってから……正確に言うと例のグループがいなくなったの確認してから、咲夜さんが声をかけてくる。
「咲夜さんともお昼一緒したかったのに」
 お昼休みの時、私と蒼ちゃんを窺っていたのを知っている私は、挨拶もそこそこにお昼の話をする。
「いや~ごめんねー。どうしようかとも思ったんだけど、例のグループの目がきつくて」
 咲夜さんみたいな誰とでも仲良くやって行こうとする人にとっては、今のこのクラスの雰囲気だと中々難しいのかもしれない。今も例のグループがいなくなってからこっちに来ているくらいだし。
「それでどうしたの?」
 そこまでして私に伝えたい事があるのは分かる。
「あのね、例のグループまた何かやらかしそうだから、先に愛美さんに伝えておこうと思って」
 教室内を少し見渡してから、私の質問に耳を近づけて小声で教えてくれる。
「またか。またあのグループか!」
 咲夜さんが伝えてくれた内容にため息が漏れる。
「愛美さん喧嘩は駄目だって。ホントあのグループに関わってもロクな事無いから」
 私がどうしたいのか分かったのか、慌てて私を止めにかかる。
「咲夜さんも分かってるんだよね?! ただの八つ当たりにしても度が過ぎてるって」
「ちょ?! ちょっと愛美さん怖いって、後声抑えて?」
 私の雰囲気が変わるのを感じ取って、重ねて私を宥めにかかる。ただですらイライラしやすいってのに。
「分かった。取り敢えずここじゃなんだから食堂へ移動しよう」
 私をなだめるのが無理と悟ったのか、場所を変えようと食堂へ移動する。

 今回は私には何も言わずに、聞かずに目の前に咲夜さんがパックのジュースを置く。私はそれを断ろうとしたけれど、
「もうあたしの分も買ったし、取り敢えず飲んでよ」
 前回を学習したのか、先に咲夜さんが自分のパックのジュースにストローを刺してしまう。
 それを見て、咲夜さんやこのジュースに責任は無いと思い直して頂く事にする。
「ひょっとして愛美さんって、怒らせるとすごく怖い?」
 ジュースを頂き始めた私を見て、恐る恐ると言った体で聞いてくるけれど、それを本人に聞いて、聞かれた方はどう答えろと言うのか。
「そりゃ腹立つよ! あれから何日経ってる? しつこいにもほどがあるでしょ」
「あれからってまだ4日……」
 私の雰囲気に押されっぱなしの咲夜さんが小さく何か言うけれど
「ん? 何か言った?」
 声が小さくて聞き取れなかったから、私が聞き返すと
「いや、なんでもないっす」
 自分が言った事を取り消す。
 こっちはやっと昨日蒼ちゃんから本音を聞き出せたって言うところなのに。
「大体なんで面と向かって1対1で言って来ないで、こんなやり方するの? もうこのクラスで一緒に過ごすのに1年も無いんだよ?」
 統括会で頑張ってる身にもなって欲しい。
「アタシもやり過ぎだと思うから、先に愛美さんに言っておこうと思って」
“まさか愛美さんって絶対怒らせちゃダメなタイプだとは思わなかったけれど”
 小声で言ったつもりなんだろうけれど、ばっちり聞こえてるからね咲夜さん。
「大体ね、一人で話できない人? 集団でしか何かを言えない人って自分にコンプレックスがあるから。そのコンプレックスを他人への嫉妬に変えて、相手を叩く事で自己満足を満たしているだけ。だからそう言う相手にはこっちからガツンと言って私ではあなたの自己満足を満たせないって事を教えてあげると解決するんだよ」
 これは実体験なんだけどね、と前置きした朱先輩から聞いた話だ。
 私の話を聞いて、驚いた表情をする咲夜さん。そんなに特別な事を言ったつもりはないけれど。でもふと思案顔になって
「でもそれって、蒼依さんが“自分で”言えないと解決できないって事だよね?」
 そう……そうなんだよ。だから私が腹を立てているのだ。
 蒼ちゃんは言い返せない性格をしているのを知って、標的にしているのだから。それでも、昨日の夜の広場で話してくれたように、ちゃんと蒼ちゃんにも自分の考えがあるのだ。
「……」
 あーイライラする。
 でも、その繊細さと穏やかさもまた蒼ちゃんの一部なのだから、そこはやっぱり友達として大切にしたいと思う。
「で? 咲夜さんは?」
「え? あたしがなに?」
 私の質問に虚を突かれたような反応をする咲夜さんに、
「今日のお昼は来なかったけれど、明日からはどうするの? また3人で食べる?」
 今度は分かり易く問いかけると、頭から汗を一筋垂らすと
「い、いや~、時と場合によるかな?」
 視線を逸らしながら答える咲夜さん。
「じゃあ“月森さん”は一緒に食べないんだね?」
 これだけ話してもやっぱりこうなるのか。本当に“同調圧力”っていうのは厄介だよ。
「や、ちょ、ちょっと待って。今はこうやってちゃんと情報回してるじゃん! 今後何かわかったらすぐに連絡するし、私は今回の事は絶対に参加しないから」
 参加しないと言っても、見て見ぬふりは集団のいじめと同じだと思う。それだと蒼ちゃんが悲しい思いをすることに変わりは無いのだ。
「さっき月森さんが“愛美さんって絶対怒らせちゃダメなタイプだとは思わなかった”
 って言ってたの聞こえてるからね?」
 私の牽制に対して目に見えて狼狽する咲夜さん。
「分かった。誰もいない所ではちゃんと蒼依さんのフォローもするから」
 私の一言に追加の案を出してくる咲夜さん。これじゃ私が咲夜さんをイジメているみたいだ。
「もう一回言っておくけれど、蒼ちゃんが自分から戸塚君との事を自慢したわけじゃないよ」
 周りからの余分な嫉妬の半分はここにあると思ってる。だからここは最低限押さえておかないと、根本の解決にはならないと気がする。
「愛美さんのその表情で、まだ疑う人はいないっす」
 なんか咲夜さんの喋り方がおかしなことになっている。
 まあでも咲夜さんにも人間関係がある事を考えると、ありがたい話なのかもしれない。やっと冷静さが戻ってきた私は、担任の先生の所に行かないといけない事を思い出す。いや、こっちから約束を取り付けたのだけれど。
「じゃあ“咲夜さん”テスト明けのお茶、楽しみだね」
 そう言って先生の所に向かおうと席を立ったところで
「間違いなく愛美さんがある意味一番女の子してるよ」
 咲夜さんの方から何か聞こえた気がしたので
「どうしたの?」
 声をかけただけなのに
「い、いや~何でもないっす。それより用事あるんだよね?」
 少し慌てた様子ではあったけれど、
「ありがとう。じゃあ私行くね……そうそう、私を女の子扱いしてくれてありがとう」
「……」
 咲夜さんの言葉に甘えるようにして、職員室へと向かう。


「遅くなってすいません」
 咲夜さんと話して遅れた私は、まず頭を下げる。
「いや、別に大丈夫だぞ。他にやる事もあったからな」
 対して先生の方はあんまり気にしていないのを確認できたところで、本題へ移る。
「で、先生。園芸部とサッカー部はどうだったんですか?」
「取り敢えず分かったのは園芸部について言ったのは学校側ではないって事だ」
 先生の答えだと学校側は何の関与もしていない事って事なのか。
「じゃあ質問を変えますね。学校側は園芸部とサッカー部をどう処分する予定ですか?」
 それにしても園芸部だけ名前が上がってくるのは腑に落ちない。どうしても昨日最後まで名前を出し渋った学校側の反応が頭から離れない。
「多分だが、園芸部はテスト後から1週間から10日間ほど部活停止になると思う」
「……」
「……」
 園芸部の話の後、サッカー部の説明を待っていても説明してくれる気配がない。
「……先生サッカー部の方の話は?」
 先生が、かいてもいない汗を拭う仕草をする。
「……つまり処分無しですか?」
 今度は両足をしっかり揃えてスカートもちゃんと伸ばし、第一ボタンが止まっている事も確認する。
「分かりました。これが先生の言う信頼関係ですね」
 そう言ってソファから立ち上がったところで
「もう良いのか?」
 明らかにほっとしたような表情をする先生。
「はい。これ以上は私一人ではどうすることも出来なさそうですので、明日の統括会の時に、みんなでどうするのか決めたいと思います」
 ただそれもつかの間。私の言葉に先生が慌てる。
「昨日岡本は他言しないって言ったじゃないか」
 確かに私はそう言った。でも先生は自分の保身のために、こう訂正して言ったはずなのだ。
『いやそっちじゃなくて――』
 ――私の膝・スカートを凝視していた方を他言しないで欲しい――
「先生は私の膝・足・スカートに向けていた視線の事を他言しないで欲しいと言いましたよね?」
「……」
 先生が三度口を閉ざす。
「先生なら今更な話だとは思いますが、統括会では生徒間での扱いの差を基本“是”としていないのでみんなで話し合って、今度は統括会として改めて話をさせてもらいます」
 私が今度こそ、パーティションを出ようとしたところで
「さすが統括会の書記をしているだけの事はあるよ。ホント前の書記もそうだったけど書記って言うのはもう先生要らないんじゃないか?」
 担任の先生が半ばあきらめた表情で、理由を話してくれる。
「大推だよ。スポーツ推薦。人、一人の人生がかかってるんだ。学校としては応援するのが筋だろ? 統括会の理念にも反していないはずだろ?」
 サッカー部のお咎めが無い理由を。だったら統括会の方針も変わる。
「でも先生。園芸部の3年にとっても、遅くとも秋までしか活動は出来ませんよ?」
 私は立ったまま先生の方に振り返る。
「一芸で社会に認められるって言うのはほんの一握りしか認められないって事だぞ? それはもう才能なんだ。その才能の芽を統括会は摘んでしまうのか?」
 やっと先生の表情が真剣になる。初めからこうやって話してくれればこっちも真剣に話し出来るのに、どうして躱そう躱そうとするのか。
「先生。私たち統括会は生徒間での扱いの差を“是”としないんですよ」
 だからこっちも真剣に話をする。
「……ん?」
 先生は私の言わんとしている事にピンと来ていないみたいだ。
「生徒間での差を“是”としていないだけなんです。どうして、ペナルティのある園芸部の方に合わせようとするんですか? ペナルティの無い方へ合わせればいいと思うんです」
 そう。サッカー部へのペナルティを科すのではなく、園芸部の方のペナルティを無くせば良いのだと思う。それだけで生徒間の扱いの差は無くなると思うんだけれど。
「それだと、部活停止期間の意味が……」
「先生は終礼の時に仰っていましたよ? 余程の事が無い限りって。顧問の先生や園芸部員の人たちにちゃんと余程の事が無かったか聞きましたか?」
「……」
 もう何回目になるだろうか、先生が私の質問・言葉に答えられないのは。
 私だって統括会のメンバーなのだ。確かに言葉も交渉もあんまりうまくないかもしれない。それでも、伊達に学校側と生徒側の緩衝・折衝組織をしているわけじゃない。学校側との交渉だって多少はこなすよ。
「あ、それとこの事は先生から聞いたんじゃなくて、もう噂で広がっている生徒から聞いたって形にするので他言無用の件は大丈夫です。それが信頼関係だと思うので」
「……」
 これくらいの皮肉は許されると思う。
「ではお忙しい所失礼しました」
 私はそれだけを言って、最後まで無言だった先生を背に、次は園芸部の活動場所に足を向ける。


 初めはサッカー部の方も見に行こうかとも思ったのだけれど、処分の理由としては私は妥当だと思えたから、見に行くのをやめて園芸部だけを見に行くことにする。
 ただ、私一人の意見だけで決められるわけじゃないから、もちろんみんなには相談する事になるとは思うけれど。
 考えながら歩いているといつのまにか、園芸部の活動場所についていた。
 今は部活禁止期間だから誰もいないのはもちろんだけれど、園芸部の活動エリアを一人で見渡す。プランターや植物などが植えてある庭、何かを育てているであろう小さな畑。
 そしてその作業用具などを入れる倉庫。土や肥料・農具などを保管する保管庫など。一通りを見て考える。園芸部が活動停止のリスクを負ってまで活動していた理由を。どのくらいそうやって辺りを見ていたのか、恐らくはそんなに長い時間ではなかったと思うのだけれど、
「アンタ……何やってんの?」
 突然の呼びかけにびっくりして振り返ると――




―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――

            「へぇ、少しは頭回るんだ」
             乱暴ともいえる言葉遣い
        「うっせーなって?! その顔どうしたんだよ?!」
             愛ちゃんの顔に驚く慶
          「誰でもないって。自分で打ったの」
            始めから用意している文言

            「愛美さん、ご指名で~す」
         そこに顔を出すのはいったい誰なのか……

        26話 理解できない視線<体の痛み・心の痛み>
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み