第27話 合わさる視線<動く心>

文字数 8,129文字

 教室前の廊下では衆目を集めるって事で、何故か一緒にお昼を食べる事になって中庭の方へ移動する。
「突然教室に押しかけてごめんね」
 良く晴れた日の中庭。木陰になっている2人で腰掛けられる長椅子を探す。
 テスト前と言う事でみんな昼休みも自分の机で参考書を広げているのか、中庭にいる生徒の数はまばらだ。
「や、それは大丈夫だけれど空木君が来るの珍しいよね」
 無言にならない程度にポツポツと会話をしていると、ちょうどよい長椅子を見つけたからどちらともなくその長椅子に腰掛ける。
 私は頬が腫れているのをあんまり見られたくなかったから、空木君の左側に位置を取ろうとしたのに、
「そっちよりもこっちの方が日陰だよ」
 笑顔で反対側を進めてくる。
 マスクをしているだけでも恥ずかしいのに、今は日焼けの気遣いより、頬の気遣いをして欲しかった私がどうしようかと迷っていると、
「じゃあ僕がそっちに座るね」
 そう言って空木君が右にずれてくれる。
「ごめんね。ありがとう」
 やっぱり気遣いが出来る男の人って良いなって思いながら改めて、空木君の左側に腰掛ける。私がお弁当の包みを開けたところで
「その頬なんだけど、昨日保健室へは?」
 少し心配そうに私の頬を見つめてくる空木君。
「ううん。家でもやる事あったから、そのまま家に帰ったよ」
 その空木君にほんの少しだけ嘘を混ぜて返す。でもどうして空木君はこの頬が昨日の学校での事だって分かったんだろう。
「岡本さんは優しいね。見せかけだけの優しさじゃないってわかるよ」
 私がお弁当箱を開けるのを目で追いながらそう穏やかに言って、前と同じように空木君がはにかむ。
「や、そんな事無いよ? 今日の統括会でも言うけれど、園芸部がちょっとね」
 ――それにあの子に負けるのも嫌だし――
 空木君相手でも相手はどこで誰が聞いているかもわからないから、金髪の子の事は言わずに言葉の最後は濁してしまう。
「岡本さんって、繊細だけど……天然だね」
 え。今この流れでそれ言う必要あったのか。私の顔を見て、笑いながらと言うのか、いや微笑みながら説明してくれる。
「僕は見かけは気にしないから、マスクを取らないとね? そうしないと弁当食べれないよ?」
 空木君の説明に私は全身が熱くなるのを感じる。
 そうだよ。お弁当箱を開けて、マスクも取らずに、お箸を持ってどうやって私はお弁当を食べるのか。
「……」
 あぁっ……どうして私は空木君の前でばっかり失態を晒すのか。こっちの隙の方がよっぽど恥ずかしい。
 普通気付くよね。外すよね……しかも笑顔でと言うのか、微笑みながらと言うのか、気付いていない私に説明してくれたもんだから、反論も、怒ることも出来ないし……どうすれば良いのか。
 こんなの恥ずかしすぎて今更マスク取ってご飯なんて食べられない。恥ずかしすぎるに決まっている。
 思わず二回同じことを思うくらい恥ずかしいのに、
「岡本さんが恥ずかしいなら、僕が背中を向けようか?」
 私がしようとしていた事と、同じ事をしようとする空木君のその気遣いで、私の心の中はもう大変なことになってしまっている。
 でもね、空木君。せっかく二人で並んで食べてるのに、片方が背中を向けていたらものすごく目立つと思うよ。それはそれでやっぱり寂しいから
「ううん。食べる時はマスク外さなきゃだしね」
 自分の口から出た言葉にギョッとする。
 今まで私、こんな喋り方したことないよ。普段の私ならこうだよ
『食べる時くらいは外すよ。でないと食べられないし』
 なのに、いつどこでこんな喋り方を覚えてきたのか。私は。
「本当、岡本さんって統括会とそれ以外じゃ全然印象違うよね?」
 そう言って微笑んでくるのはちょっと待ってほしい。そんな事は自分でも分かってるんだってば。普段の私とは全く違う事は自分が一番よく分かってる。
「統括会の時の岡本さんも悪くはないけど、今の方がもっと喋り易くて良いよね」
 三度こっちに笑いかけてくる空木君。
 そうかぁ、そうなんだね空木君。空木君は私をからかって遊んでるんだね。でも、そんな空木君の表情も私の願望かも知れないけれど、少し顔が赤いからね。 
 それと咲夜さん、空木君は“癒しの副会長”じゃなくて“からかいの副会長”だよ。後から思うと自分でもどうかしていたとしか思えない。顔が熱いからって理由を自分の中で勝手に付け加えて
「恥ずかしいからあんまりこっちを見ないでね」
 私はマスクを取り払ってお弁当をいっぺんに食べようと
「……痛っ」
 口を大きく開けるのを諦める。
「……(くすっ)」
 そして隣からは笑い声。もう昨日からホントに踏んだり蹴ったりだよ。
「空木君笑うなんてひどい……私だって女の子なのに」
 なんか恥ずかしい事を口走った気がしないでもないけれど、もう恥ずかしさのメーターを振り切った私はお弁当を食べるのを諦めようと片付け始めたところで
「ごめんごめん。怒らせたなら謝るからちょっと待って」
 怒ったわけではなく恥ずかしさから私が逃げ――帰ろうとするのを制止してから
「今日岡本さんに昼休みに会いに来たのは、これを渡したかったからなんだ」
 空木君の言葉で、今まで空木君の要件が完全に抜けていた事に思い至る。
 どれだけ私は舞い上がってるんだろうね……いや舞い上がってる訳じゃないけれど。でも、そのことを見抜かれるとまたからかわれるのは分かっているから、出来るだけ顔には出さないようにする。
「これって?」
 私が警戒している間に空木君がちょっとした大きさの箱みたいなお弁当箱を出してくる。
「良かったら食べてみてよ」
 そう言ってもう一度私の方へお弁当箱を渡そうとしてくる。
 その空木君のお弁当箱を開けると
「これ、サンドイッチ?」
 今の私でも食べられるように考慮してか、かなり小さめに一口サイズに切り分けられたサンドイッチが何種類か入っていた。
「クルミパンを薄くスライスして、パンがパサつかないように薄くココナッツオイルを塗ってベリー系のジャムを挟んだつもり」
「……」
 空木くんの説明に驚きを通り越して、無言になる私。
 そんな私のマスクを取って隠すものが無くなった私の顔を見ながら
「消炎効果の高い食べ物だけを使ってみたんだけど……ほら岡本さんも女の子だしやっぱり少しでも早く引くと良いなと思って」
 私の無言に慌てて照れながら、言葉を付け足す空木君。
 でもこれはまずい。この空木君の気遣いを私はどう受け取れば良いのか。そんな気遣いをしてもらったら、たとえからかわれていても言い返せない。
「う……あ、ありがとう……」
 迷ってはいてもこの気遣いを突っ返すなんてことが出来るはずもなく、自分のお弁当を諦めて空木くんのサンドイッチを口に――
「――っ?!」
 した瞬間びっくりする。
「これ、空木君が?」
 朱先輩が作ってくれたサンドイッチに引けを取らないくらいに美味しい。
 酸味があるはずのベリーはほんのりとだけ甘く、くどくない。一方パンの方も固いけれどパサついているわけではないから、小さく切り分けられた大きさにもかかわらず、形も崩れていないし、今の私でも食感を楽しみながら食べることが出来た。
「僕も料理は得意だからね」
 私の質問に少し自信をのぞかせる空木君。そんな初めて見る空木君に私は思わず視線を逸らす。
「岡本さんに喜んでもらえて良かったよ。じゃあ僕は先に教室に戻るから。また統括会の時に」
 そう言っていつの間にか食べ終わったお弁当箱を手に一人教室に帰っていく空木君を見送る。
「これ、私が空木君に胃袋つかまれてない?」
 意図せず漏れる言葉に
「――!」
 自分自身で驚く。議長・雪野さんの事もあるし、第一私は今までそう言うのを意識して来なかったはずなのだ。ただ、こういう気遣いが嬉しかったのだろうと、家の男二人、慶とお父さんを思い浮かべる。
「あ? このお弁当箱どうしよう?」
 食べ終わった空の容器を見て気づく。もちろん洗って返すのは当たり前なのだけれど、でもそれはもう一度この容器を返すために、まさか雪野さんの目の前で返す訳にもいかないから。でもそれはもう一度統括会以外で空木君と会うと言う事でもあって
「……」
 腫れている以外の理由で頬が赤くなっているのが分かるけれど、いくら待ってみてもそれは腫れているのと変わりなく熱も赤みも引く事がないから、私は諦めて少しだけ空木君の匂いの残っているお弁当箱も持って、午後の授業のために教室へと向かう。
 ……頬が腫れていて、赤みが取れない事に感謝しながら。


 放課後、テスト週間も佳境に差し掛かっていると言う事もあり、特に伝えられる連絡事項もなく、すぐに終礼も終わる。
 統括会の連絡に関しても昨日からの先生とのやり取りに堪えたのか、はたまた完全に忘れているのか、一言もなかった。
「さて愛美さん。少しお時間よろしいかしら?」
 私は放課後になってすぐに出て行った蒼ちゃんに続くように、役員室へ向かう為に部活棟の方へ
「癒しの副会長とはいかがでして?」
「咲夜さん怒るよ?」
「だって愛美さんがあたしの事無視するから~それに愛美さんの方があたしに話があるって言ってたのにー」
 口調がおかしい時の咲夜さんはちょっと警戒しないといけないから、聞こえないふりをして教室を出ようとしたのだけれど、咲夜さんの言葉に思わず立ち止まってしまう。
「無視って……私。今日は統括会。だから話はお茶する日にしよう」
 努めて表情には出さずに返したのに、
「出て行く時は弁当箱1個。帰って来た時は弁当箱2個」
 とても楽しそうな表情で事実確認をしてくる。ホントに細かい所までよく見てるよ。
「して、その中身は?」
「そんなの言うわけないよ」
「ほほ~う。癒しの副会長の情報は私だけのモノってやつですな?」
 なんて言い方をするのか。ただ私への気遣いが詰まった中身を他人に言う必要はないと思うのだけれど……あれこれって咲夜さんの言う通りなのか。
「それより咲夜さん。もう来週テストだけれど、なんにも質問なくて大丈夫?」
 今日は金曜日。もう週が明けたらテストなのに1回も今回の試験範囲の質問がない。
「この土日、一緒にやって頂けたりは……」
 咲夜さなんが両手をすり合わせるように、私に伺いを立ててくるけれど
「私が恥ずかしがるのを分かってて聞いてくるって事は咲夜さん……私で楽しんでるよね?」
 当然仕返しはさせてもらう。
 空木君に完全に色々な醜態をさらし、見抜かれていたからその憂さ晴らしも少しさせてもらおうと思う。
「そんな事言わないで、あたしにも幸せのおすそ分けを頂戴よー」
 ところが咲夜さんが私にしがみついてくる。頬と首筋が痛いのだから揺らすのは許して欲しい。しかも幸せのおすそ分けって……
「別に付き合っているわけでも無し、ただ私のケガが心配で様子を見に来てくれただけだってば」
 言いながら咲夜さんを引きはがすも嘘は言ってない。
「じゃあなんで愛美さんはそんなに嬉しそうなのさー」
 無理やりに引きはがしたからだろうか、不満タラタラな咲夜さん。
「そりゃ誰かさんみたいにネタとしてからかって来るんじゃなくて、本当に心配してくれたら嬉しくなるのは人間として当然だと思うけれど?」
 そう言って咲夜さんを見返すと、またニヤニヤしながら
「真剣に心配……ねぇ」
 今度は空木君の方をいじり始める。この場にいない人間をいじるって言うのも、ある意味すごいスキルな気もするけれど、ものすごく無駄な気がする。
「ま、咲夜さんがそう言う人だってのは分かってるから」
 私がそう言い返すと
「ちょ?! あたしだって愛美さんのこと心配したじゃん!」
 咲夜さんが必死になって言い返して――
「岡本さん、いる?」
「あっ、岡本先輩」
 ――会長と総務の子が私の事を呼ぶ。
 私はこれ幸いとばかりに、咲夜さんの元から会長と総務の子の所へ行って
「どうしたの? 今から統括会だよね?」
 確認すると
「空木の奴が岡本さんのケガがきついって言ってたから、様子を見て一緒に行こうと思ってな」
「……アタシは会長が行くって言うから一緒についてきただけなんですけどね」
 顔は笑ってはいるけれど、目には余裕がない気がする。
「ちょっと顔を打って腫れているだけだから、そんなに大騒ぎしなくて大丈夫だって」
 はた目から見てても総務の子の気持ちがわかるから断ったのに、
「せっかくここまで来たんだし、たまには一緒に行こう! 良いよな? 霧華も」
「え? でも岡本先輩は……」
「なんだ、岡本先輩と一緒は嫌か?」
 総務の子が一瞬私の方を無表情に見て、
「いやそう言うわけじゃないけど……分かった。会長がそう言うなら」
 あれ。総務の子の事、名前で呼んでるのに、気づいてないのか。
「えぇ……」
 何故か咲夜さんが困ったような声を上げるのを背に、私は仕方なく3人で役員室へ向かう。


 3人で役員室へ入ると、先に空木君と雪野さんが来ていて二人で談笑していたみたいだったけれど
「お顔をケガしたって聞きましたけど、岡本先輩大丈夫ですか?!」
 私の顔を見るなり心配して駆け寄って来てくれる。
「うん。ちょっと頬と首筋か痛いけれど打ちつけただけだから、しばらくしたら治ると思う。ありがとう」
 前回私の落ち度で辛い思いをしたのに、今日はその私を心配してくれる。やっぱり雪野さんはまじめで良い子だと思う。
 昼休みからこっちなかなか下がらなかった頬の熱も、ここに来てようやく落ち着いて来た気がする。だからこそ余計に誤解を招かないためにも、ここではお弁当箱を返せないなと思う。
「えーっとそれじゃ全員揃ってるから、そろそろ始めようか」
 会長の号令で今日の統括会が始まる。
「それでは今日の議題は皆さんご存知だとは思いますけど、部活禁止期間中の部活についてでいかがでしょう?」
 議長が今日の議題を出して、それを空木君に目で確認をする。
「じゃあ今日はそれで行こうか」
 確認を受けた空木君の号令で、今日の議題が決まる。
「アタシが言っといてなんですが、これってでも、議題になります?」
「と言うと?」
「そもそも先生方から先に禁止期間中についても罰則についても予告して頂いてますよね?」
 空木君の確認にすぐに雪野さんが意見する。
「でも事情があれば部活動は認めるんでしょ? だったら統括会としては部活停止するならその理由も明らかにするべきじゃ?」
 すかさず総務の子が酌量の余地の話をしてくる。
「そもそもどの部活が処分されるのか知ってるのか?」
 会長の質問に対して
「園芸部ですよね」
“そりゃいくら後輩でもそれくらいの情報は持ってますよ”と。こっちは総務の子が。
 二人ともある程度は分かってはいるみたいだけれど、先生との約束の事もあるからサッカー部の話は確実に回ってないだろうから、こっちからは迂闊に話しにくい。
「特段の事情が無かったから、公表されて無いんだと思いますけど? 顧問の先生も何も言ってないみたいですし」
 そう言えば咲夜さんもそこまでは言ってたっけ。
「でも、あの教頭先生と生活指導の先生の前で言うのは大変だと思うよ。一番良いのは部活していた該当生徒に話を聞けるのが一番良いんだけれどね」
 元々はそれを調べるために、あそこに足を運んだのに――あれ、そう言えば……なんであの子があそこにいたんだろう。あの時私が振り返ってから、声色が変わったから私を追いかけて来たって事は無いだろうし。
 あの時はむき出しの敵意と、平手打ちの事で基本的な事が抜け落ちていた事に今更ながら気づく。
「あの生活指導の先生こっちの話全然聞いてくれないって!」
「ルールを破った人の意見なんて聞く必要あります?」
 だとすればわざわざ部活停止期間にもかかわらず、園芸部の活動場所まで足を運ぶ理由。
「冬ちゃんそれはいくらなんでも頭固すぎだって。警察でも事情徴収するのに」
「確かにそうだけど」
 ――アンタ、わたしをチクリに来たのか?――
 ひょっとして……私の中で何かが繋がりかける。
「普段ならテスト明けまで公表は先送りにされるのに、今回は学校側の公表早かったですよね」
「今回は学校側からの公表じゃないよ。部活動間での生徒の間から広まった話だからね」
 ――週末の雨でバラバラになった土を直してくれたんでしょ?――
 ――わたしなんてあの雨でどうなってるか
                 なんて全く考えもしてなかったんだから――
 ひょっとしてあの二人は園芸部なんじゃないのか。
「それって自分たちで広めて、自分たちが被害者だってアピールですか? それって、自作自演なんじゃ」
「冬ちゃんさすがにそれは無いでしょ。学校側の反感を買ったら禁止期間が延びるかもしれないのに」
「僕もそう思うよ。さすがにそれは考え過ぎじゃないかな?」
「……あの、この中に園芸部と知り合いの人いない?」
 それを辿って行けばあの金髪の子と“カナ”って子にたどり着くとは思うんだけれど
「園芸部は元々人数も少ないからなぁ」
 誰一人として会長の言葉に異を唱える人がいない。
 つまりはそう言う事なんだと思う。もしそこにたどり着かなかったとしても、
「もし、園芸部の知り合いがいたらどうするんですか?」
 雪野さんが質問してくれるから、一応私の考えを説明する。
「園芸部の処分を軽くする。もしくは無くしてもらえるような、よほどの事情に当たる理由が聞けた場合には、学校側と交渉できると思う」
 私の説明を聞いて、雪野さんがため息交じりに
「岡本先輩ってきっちりしている割には、他人には甘いですよね」
 指摘をする。
「あのな雪野。今日の議題は部活停止のクラブをどうするかって言うのは、この場合は園芸部だけど、いかにしてペナルティを軽くするのかって言う事と同じだからな?」
 会長が私のフォローを入れてくれる。
「ま、アタシもその意見には賛成だけどね。やっぱり民主主義ならちゃんと話は聞くべきだよ。あ、でも冬ちゃんの意見が間違ってるってわけじゃないよ」
 会長の意見に追随する様に総務の子も、議長のフォローも忘れずに同意を示す。
「僕の方も何人かに声をかけてみるよ」
 空木君も一瞬こっちに視線を合わせてから
「……」
 総務・会長に同意を示す。
「じゃあ園芸部の処遇に関しては、部員の伝手を当たって何とか学校側との交渉材料を見つけるって事で良いですか? 会長」
 意見がある程度で尽くした所で、議長・雪野さんがまとめたのを会長がOKを出す。
「じゃあそれで行こうか。今回は急を要するから、テスト終了後の2日の火曜日の日にもう一回みんなで集まろうか。みんな悪いが予定を開けておいてくれ」
 そう言ってテスト直前と言う事もあって、
「じゃあ会長一緒に帰りましょう」
 早々にみんな帰宅の準備を始める。
「岡本先輩も帰るんですよね?」
 そんなみんなを横目に、私は議事録をまとめ上げていく。
「帰るけれど、議事録をまとめるのにもう少し時間がかかるから、先に帰って良いよ。戸締りもこっちでしておくし」
 私の個人的な用事で待ってもらうのもアレなだから、帰っても良いって伝えると、
「じゃあ副会長もご帰宅ですよね?」
 私に不満顔を向けた後、空木君に声をかける。
「帰るけどトイレ行ってから帰るから、先に帰っていて良いよ」
 でも空木君もまた雪野さんの誘いをやんわりと断る。
「……分かりました。じゃあお先に失礼します」
 雪野さんが固い声であいさつをして、役員室を出て行った。






―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――

            「じゃあいつもの始めよっか」
              二人だけの時間が始まる
       「空木君のそのピンク色の花のアクセサリ、可愛いね」
         そのアクセサリは誰のものか、誰からのものか
          「アンタコソコソ何嗅ぎまわってんの?」
                 怒りの矛先は

          『愛さん。電話での第一声。泣いてたよね』

           28話 見通せない視線<届かない思い1>
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