CARD 42

文字数 1,901文字

(今! 才林の手札には《節足竜目マンティス・リンドヴルム》がある! 返しのターンの大量展開からの盤面のひっくり返しを狙っているんだ! オレの場のドラゴンの合計コストは三十九! そこから減らしたくないんだ! だから攻撃前に《攻撃擬態》を使って、オレに攻撃を躊躇わせているんだ! ならば、オレは!)

 迷いを吹っ切った。

「オレは《リヴァイムート・サルガッソー》で、お前の《節足竜目モスキート・ドレイク》に攻撃!」
「いいのか? 相打ちになるぞ?」
「構わないぜ。お前の手の上で踊らされるよりはな!」
「…!」

 双方のドラゴンが破壊された。

「そして《リヴァイムート・ネプチューン》で直接攻撃!」

 ブロックはしない。まさにリュウシの読み通り。この一撃で、才林は六点の体力を失い、残るは二十三点。

「さらに《節足竜目ライス・テュポーン》で直接攻撃だ」
「それはブロックさせてもらおう! これで一気に十二点のダメージ! 君の残り体力は七点……」
「オレは《リヴァイムート・ムー》で今、疲労状態になった《節足竜目ローカスト・ジャバウォック》に攻撃!」
「自滅だと…?」

 三点の体力を失い、これで残るは四点。

「だがこれで、場のドラゴンの合計コストは十七! さっきよりも大幅に下がった。これじゃあ《節足竜目マンティス・リンドヴルム》を出してもおいしくないんじゃないのか?」
「そうか…。やはり見抜いていたか、私の手札を」

 才林は一度自分の手札を見て、それから顔を戻した。リュウシの思った通り、五枚ある手札の内、左端のカードは《節足竜目マンティス・リンドヴルム》。他の手札も全て節足竜目だったので、もしリュウシが攻撃していなければ、一発で逆転できる爆発的展開を見せつけられた。もっと言うなら、手札にある《節足竜目スコーピオン・ヨルムンガンド》は自分の節足竜目のコストの合計分だけ、他の節足竜目のコストを上げられる。それで攻撃すれば、《節足竜目ライス・テュポーン》が先に強制ブロックを行って、ダメージが生じて才林の勝利だった。

「やはりカードゲームはこうでなくては盛り上がらないな…! だが! 勝つのは私だ! 私のターン!」

 状況を整理すると、リュウシは才林に展開させたくないがために体力を消費してしまった。おまけに盤面も酷い有様で、全てのドラゴンが疲労状態という最悪の状況。

(それでもなお、勝負を諦めていない目…! 素晴らしい! 去年戦った枝垂の時も燃え上がってしまったが、同じ興奮を感じる! 感じるぞ! 不思議だ、ここから彼がどうやって勝つのか、私のターンをどう凌ぐのか、楽しみで仕方がない!)

 まずはコスト三の、《節足竜目バタフライ・ワイバーン》を召喚する。そして残った十コストで、やはり《節足竜目マンティス・リンドヴルム》を召喚。

「《節足竜目マンティス・リンドヴルム》の効果! コストの合計が十六以下になるように、私の手札から節足竜目を場に出す! コスト七の《節足竜目スコーピオン・ヨルムンガンド》、コスト八の《節足竜目ホーネット・ファフニール》!」

 本当はもう一枚、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》を出したかったのだが、コストがオーバーしてしまうために却下。

「まず、《節足竜目バタフライ・ワイバーン》の効果発動! 私は自分の場のドラゴンを選択。このターン、選ばれたドラゴンが攻撃する時、相手はブロックできなくなる。さらに《節足竜目スコーピオン・ヨルムンガンド》の効果も発動!」

 その二つの効果に選ばれたのは、《節足竜目マンティス・リンドヴルム》。コストの合計はそれを除くと、二十五。

「よって! ブロックできないコスト三十五の《節足竜目マンティス・リンドヴルム》が誕生だ!」
「コスト三十五……!」

 ゴクリ、と唾を飲んだ。即、敗北の二文字を刻めるコストだ。

「さあ、最後のバトルを始めよう! 私は《節足竜目マンティス・リンドヴルム》で、君の《節足竜目ライス・テュポーン》へ攻撃!」
「それはどうかな?」
「何?」
「オレは……トリガーカード、《レイクサイド・ビーコン》を発動するぜ!」
「トリガーカード、だと!」
「ああ! オレのドラゴンがバトルする時、そのバトルの間だけ、バトル相手のドラゴンのコスト分上昇する! ただし、このバトルが終われば選んだオレのドラゴンも破壊される」

 これで逆転。一コストのドラゴンが一瞬だけだが三十六に。返り討ちにあったのは、才林の《節足竜目マンティス・リンドヴルム》の方である。一点体力が減り、二十八点。
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