CARD 40

文字数 2,342文字

(アイツも厄介な効果を持っていたか! ならば除去だ!)

 リュウシはそう考えた。しかしそれこそが、才林の思うつぼ。

(アレは、見失っている目だ。最優先で除去するべきドラゴンが何であるのか、見えていない。リュウシ君、君は私の策略にはまった! 次に君は、《節足竜目ビートル・ドラグーン》を除去しようとするだろう。だがそう思ってしまった時点で、また一歩君の【リヴァイムート】を縛る《節足竜目センチピード・ヒドラ》から遠のく。それでは勝てないのだよ…!)

 ターンはリュウシに回る。

(よし! いいドローだ!)

 引いたのは、《リヴァイムート・メガラニカ》。ドロー効果ではなくバウンス効果を持っているドラゴン。そしてそれを召喚し、攻撃の代わりに疲労状態にして効果を発動。選んだのは、《節足竜目ビートル・ドラグーン》。そしてこの時に《リヴァイムート・アクエリアス》を代わりに疲労状態にする。

「これで、やっと直接攻撃ができるぜ…! 《リヴァイムート・メガラニカ》!」
「受けよう」

 均衡状態であった体力が、やっと減った。才林の体力は残り二十一点。

(この返しのターン、才林! お前は当然今バウンスされた《節足竜目ビートル・ドラグーン》を出すよな? それ以前に《節足竜目ソースタッグ・バハムート》の攻撃で破壊されちまうが、ワンテンポ遅らせられてる! 行ける!)
(……と、思っているのだろう、リュウシ君? しかし違う。君は私が、《予定(よてい)孵化(ふか)》でデッキトップに置いたカードを忘れている。このターンはそれを出す!)

 才林が前のターンに手札に加えていたドラゴン。それは、

「支払うコストは十だ。闇夜が訪れる時、それは動き出す。《節足竜目マンティス・リンドヴルム》!」

 効果は強大。リュウシの場のドラゴンのコストの合計、つまり二十以下になるように手札から節足竜目をコストを支払わずに場に出せるのだ。当然デメリットもあり、

「ただし、この効果で場に出したドラゴンは攻撃できず、このターンが終わると手札に戻る」
「それでも強力なドラゴンか……!」

 まずは先ほど手札に戻された、《節足竜目ビートル・ドラグーン》を場に。まだ十四コスト余っているので、コスト九の《節足竜目シケイダ・ゴルイニチ》、さらにコスト五の《節足竜目スパイダー・ヘイロン》を展開。

「まずは《節足竜目スパイダー・ヘイロン》の、場に出た時の効果! 相手のドラゴンを一体選んで疲労状態にする。君の場に残っている、疲労状態でないドラゴンは、《リヴァイムート・レムリア》だけ。それを疲労させる。さらに私は、《節足竜目シケイダ・ゴルイニチ》の効果発動! 一ターンに一度、自分の場のドラゴンを一体手札に戻し、三点の体力を回復する!」

 その時、リュウシは気づいた。

「まさか戻すのは、《節足竜目マンティス・リンドヴルム》…?」
「正解だ! 私はこれを手札に戻し、体力を二十四点へ回復。ではアタックステップだ。私は君の《リヴァイムート・アクエリアス》へ、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》で攻撃」

 ブロックできるドラゴンはいない。リュウシはその攻撃を通した。

「私はこれでターンエンドだ。さ、君のターンを行いたまえ」
「………ああ、オレのターン…」

 この時点で、リュウシのエネルギープールも十枚。これで手札にある《リヴァイムート・ニヴルヘイム》を召喚できるのだが、

(出せない! それをすれば、手札に戻った《節足竜目マンティス・リンドヴルム》の効果で大量に展開される!)

 手札は七枚。召喚して一枚減っても、六枚。そこから《リヴァイムート・ニヴルヘイム》は手札の数だけコストが上がるので、場では十六。才林の手札は六枚。内、四枚はさっき戻った節足竜目たち。残る二枚がまだ見ぬ節足竜目だったら…。

(大型のドラゴンは、出さない方がいいのか…? だが…)

 リュウシの場には、バウンス効果がある《リヴァイムート・メガラニカ》がいる。しかし、《節足竜目マンティス・リンドヴルム》の効果を考えるとワザと場に残されたのだ。コストの高いドラゴンが相手の場にいなければ、効果が腐ってしまうからである。

「オレは、《リヴァイムート・メガラニカ》の効果でお前の《節足竜目ソースタッグ・バハムート》をバウンス。これでターンエンド」

 まさかの、ドラゴンを展開しないでターンを終わらせた。

(ふ~む、気づいたか…? この状況、打開する術は一つだけ。リュウシ君は気がついたのか!)

 問題は、そのトリガーカードを握っているかどうかである。

「私のターン。まずはドローしエネルギーチャージ…」
「オレは、トリガーカード発動! 《デススキップ》!」

(やはり、持っていたか!)

 リュウシの場のドラゴンを全て破壊し、この才林のターンのアタックステップはスキップ。

「それだけじゃないぜ? オレの場にドラゴンさえいなければ、《節足竜目マンティス・リンドヴルム》は展開効果を使えない!」

(それが正解…! よくたどり着けたな、リュウシ君!)

 それだけでもない。エネルギープールの枚数を見れば才林はこのターン、手札のドラゴンを何でも一体は出せるように見えるが、実は違う。《節足竜目スパイダー・ヘイロン》も場に出た時に効果を使えないので、出せない。《節足竜目シケイダ・ゴルイニチ》は、戻したくないドラゴン=《節足竜目センチピード・ヒドラ》を手札に戻してしまうために、出せない。このターン攻撃はできないので、《節足竜目ソースタッグ・バハムート》と《節足竜目ビートル・ドラグーン》は、出す意味が薄い。
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