CARD 36

文字数 2,503文字

「ドローしてエネルギーチャージ!」

 さっきのトリガーカードの効果で手札に加えておいた、《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》を召喚した。バトル中、相手のドラゴンの効果を無効にできるカードだ。

「これなら、《エクスティンクション・ティラグーン》の破壊身代わり効果は発動できない! 私は……」
「そうはさせません。トリガーカード、《デススキップ》発動! 私の場のドラゴンを全て破壊する代わりに、あなたのアタックステップをスキップします」

 破壊耐性のない《エクスティンクション・ディメトロレドーム》は破壊。

「ですが、《エクスティンクション・ティラグーン》は? 当然あなたのドラゴンに身代わりになってもらいます!」

 強いコンボ。相手の反撃のチャンスを摘み取ると同時に、ドラゴンも奪う。

「た、ターンエンド……」

 弱い声で自分のターンの終了を告げた。しかし実はまだ諦めていない。

(場に、《エクスティンクション・ティラグーン》以外のドラゴンがいない状態で除去するか、破壊を介さない除去か! そのためのカードは…)

 直線にドローしたので、手札にある。だが、絢音がそれを警戒しないわけがないだろう。《エクスティンクション・ティラグーン》にはハンデスとランデスの効果がある。もしそれで選ばれたら、もう巻き返すことは不可能に近い。

「では、私のターン! まずはコスト二の《エクスティンクション・アノマロブマリン》を召喚します。そして攻撃はしません。《エクスティンクション・ティラグーン》の効果を! 発動!」

 まず絢音はエネルギープールのカードを先に選んだ。エネルギープールは公開情報なので、強そうなカードを墓地に送っておく。そして次は手札。手札は非公開情報であり、見ないで選んで捨てさせる。

「うーん…。右端のカードですかね? それを捨ててください」
「……!」

 ギリギリ。反撃のキーカードは、選ばれたカードの隣にあった。

「これで私はターンを……」
「の前に! トリガーカード発動! 《フラワークラッシュ》!」

 それは、自分の場にドラゴンが存在しない場合にのみ発動できるカード。相手の疲労状態のドラゴンをエネルギープールに置き、そのドラゴンのコスト以下のコストを持つドラゴンを、自分の墓地から出せる。

「しまった? 効果を逆手に取られた!」

 そう。先ほど絢音は、エネルギープールから強そうなドラゴンを墓地に送った。そのコストは十。よって《エクスティンクション・ティラグーン》を駆除しながら蘇生させることができるのだ。

「甦れ! 《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》!」

 突然のドラゴンの降臨に、何も手出しができない絢音。

「た、ターンエンドです……」

 無理もない。彼女は切り札を失ったのだから。

「私のターン!」

 ここから一気に逆転に移る。《ビオランドラゴラ・フェランドラル》を召喚して戦力を増強、それから攻撃。

「バトル! 私は《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》で直接攻撃!」
「《エクスティンクション・アノマロブマリン》でブロックします。そのバトルは結果に関わらず、相手のドラゴンを破壊します」
「いいや! 《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》はバトル相手のドラゴンの効果を無効にできる! それは不発よ!」

 そして、《ビオランドラゴラ・フェランドラル》の直接攻撃。

「ううっ、あああ!」

 絢音に六点のダメージが入り、これで残り体力は十五点。一気に盤面も体力も逆転。

「やったぁ!」

 思わずガッツポーズをする菖蒲。これで勝ったも同然か。
 だが、

「どうやら、真の切り札を出さないといけないようですね……! いいでしょう、呼んでさしあげましょう!」
「ん? 今何を…?」

 意味深な言葉を発した。

(ブラフ? それとも二枚目以降の《エクスティンクション・ティラグーン》が? でも、私の場にはバトルする時、相手の効果を無効にできる《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》がいる! そんなに怖い相手は来ないはず…!)

 しかしこれは、強がりでもなければ《エクスティンクション・ティラグーン》の再臨でもない。

「私はコストを十支払い! 召喚! 現代に蘇りし暴君が、唯一恐れた存在…。その絶対的な力の前には、全てが無力! 《エクスティンクション・スピノジュラス》!」

 絢音が隠し持っていた真の切り札。それは見るからに強力な効果を持っている。

(でも、私の手札にはトリガーカードの《(ひかり)呼吸(こきゅう)》がある! その効果を使えば、攻撃してきた相手のドラゴンを打ち取れる!)

 それを握っているだけで安心できるのだが、

「《エクスティンクション・スピノジュラス》の効果発動です! 私のエネルギープールの枚数以下のコストを持つ相手ドラゴンを一体選び、効果を無効にしてそのコントロールを得る!」
「何ですって!」

 ここに来ての、コントロール奪取。これは防ぐ手がない。

「もちろん選ぶのは、《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》…。そして疲労状態のドラゴンでも私の場に移動すると、その効果で回復します。そしてバトル! あなたの《ビオランドラゴラ・フェランドラル》に攻撃!」

《エクスティンクション・スピノジュラス》が戦闘で相手のドラゴンを破壊すれば、そのドラゴンのコスト以下のドラゴンを、自分のエネルギープールから出せる効果が発動される。

「その攻撃には、《光呼吸》を発動…。相手の攻撃を無効にし、アタックステップを終了させる」
「でも確かそれって、自分の場のドラゴンをエネルギープールに送らないといけないんでしたよね?」

 だから菖蒲は《ビオランドラゴラ・フェランドラル》をエネルギープールに置いた。一応これでこのターンは凌いだのだが、これからが問題だ。今、絢音の場には、奪われた《ビオランドラゴラ・グルコシノレート》と疲労状態の《エクスティンクション・スピノジュラス》の二体。対して菖蒲の場は空。
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