第十話

文字数 298文字

窓一枚隔てた
向こう側で
じとじとと
陰鬱な雨が降り続いている

止みそうで
止みそうにない 雨

こんな日は
私の心が
妙に
疼きだす

子々孫々
受け継がれてきた古傷が
赤子のような泣き声を上げて
私を苛める

やがてそれが
パックリと口を開ける頃
しらじらしいまでの
透明な膜を張った泡が
内側から
一つずつ
浮かんできては
消えていく

手に入れては
失ってきたもの

選択した後の
挙句の果ての
代償

手に入れてきたものと
失ってきたものを
天秤にかけてみても
その答えは
いつも
分からない

分かっているのは

太古から現在に至るまで
取捨選択を繰り返し
様々な変遷を経て

私という存在が
ある

ということだけ

それから
さめざめと泣き続ける 古傷

いつ止むかも分からない 外の雨

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