第十八話

文字数 310文字

嫌いなものを好きになれたのは
きみがそれを食べたから

帰り道を好きになれたのは
きみが一緒に笑ってくれたから

夕暮れを好きになれたのは
きみが一段と美しく輝いたから

孤独を恐れるようになったのは
きみが一緒にいてくれたから

きみはそっと僕の手を握ってくれた
ぼくが臆病者だって
知っていたから

ぼくはそっと君の手を離した
ぼくが臆病者だって
知っていたから

孤独に底がないなんて
知る由も
なかったから

今はもう
僕の手を握ってくれるひとはいない
苦痛っていう名前の
こいつの他は

こいつの手は冷たいが
こいつの手は離せない

なぜならこいつが
さんざんぼくを痛めつけ
悩ませた後

遠くから
ぼんやりと
きみのあたたかな手が
ぼくを待っていてくれるような

そんな気がして
止まないから

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