第六話

文字数 447文字

窓の隙間から入り込んできた陽光が
薄暗い部屋の中を
執拗に照らしてくる

干渉されるのは好きじゃないと
だんまりを決め込むが
そのあまりのしつこさに
辟易し 憔悴し
仕方なく起き上がる

顔を洗いに
洗面所へ行くと
鏡の中に
顔を顰めた
見知らぬ中年の男がいた

灼熱の太陽に
背中を押されるように
外へ

川沿いをあてどなく歩く

一本の細長い川も 
後に 幾つもの支流と繋がり合い
やがて 大きな川となって
大海へと流れ出るだろう

随分と遠くまで来てしまった

様々な
ひとやものが
私の横を通り過ぎて行った

手を伸ばせば
掴めたものもあったのかもしれない

だけど 私はその流れに戸惑うばかりで
ただ 佇むばかりで

気づけば 独り
行き場を失っていた

川面を覗けば
やるせなさを抱えた
一人の瘦せさらばえた
老人の姿が見えたような気がして
ぞっとして目を逸らすと

一羽の鴉が
頭上高く
冷たい笑い声を上げた

どん詰まり! どん詰まり!

見れば
川面は太陽に照らされ
きらきらと輝いていたが
その ちょうど真ん中あたり
落ち葉が 一枚
川の流れに乗れず
岩に阻まれ
同じところをくるくると回っていた

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