第十六話

生きているだけで偉い
生きているだけで素晴らしい

巷はそんな言葉で溢れている

クドイヨ

まるで満たされない何かを
押さつけえようとしているみたい

我慢さえしていれば
いつか向こうからやって来るであろうと
期待して

生きてさえいれば……

持っていないものに目を背け
持っているものにしがみつく

命を持て余す

「欲しがりません。勝つまでは」

じゃあ、一体いつ勝つの？
何も欲しがらずに勝つなんて

耐えることを
忍ぶことを
美徳とする愚かしさ

骨の髄まで染み込んだこの国民性に
ほとほと嫌気がさす

生きているだけで偉い
（お金が欲しい）
生きているだけで素晴らしい
（愛が欲しい）
生きているだけでマシだもの
（諦めているだけじゃない？）

欲さねば
革命の心は育たない
勝利の味も分からない

自分を誤魔化し　欺き
安定という言葉と引き換えに
平和という言葉に甘えていては

明日は来ず
太陽の輝きも知らぬまま
また同じ
昨日という今日を

やり過ごすだけ