第八話

文字数 356文字

きみが逝ってしまってから
また 一年が過ぎようとしています

きみのことを忘れたことは
一度たりともありません

でも未だに
お墓参りには行けていません

慰霊とは一体何なのでしょうか

死者を
悼む行為でしょうか?

それとも

忘れてしまうのを
恐れての行為でしょうか?

どちらにせよ
 
それは 
どこか
ひどく
歪んだ愛情であるような気が
するのです

押し入れから取り出した
アルバムの中にいるきみは
どれも笑顔で

目を閉じて
思い出されるのは
どれもきみの笑い声で

それは きみが
限りある人生を
一生懸命生きた証だと思われるのです

きみが
今どこにいるのかは
分かりません

でも
一つの時代を生き抜いた きみを

わたしの都合で
ひとところに
縛りつけようとする行為は

どうしようもなく
愚かに思われて

きみを手放すのも
一つの愛情であるような気がして

わたしは
どうしても
好きにはなれないのです

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