お母さんのカレー

文字数 285文字

「お母さんのカレーが食べたい」
 と中年男は思った。
 しかしお母さんはもう死んでいるのであまり無理はさせられない。そこで男は母の墓前に、一日に一つだけ、カレーの材料を置くことにした。
 まず一日目、カレールウを置いた。
 二日目、牛肉を置いた。前日のカレールウはそのままそこにあった。
 三日目、タマネギを置いた。ルウも牛肉もまだそこにあった。
 四日目、ジャガイモを置いた。
 五日目、迷ったが、苦手なニンジンも置いた。
 男はそれから毎日、カレーが出来るのをじっと待った。
 しかしいつまで経ってもカレーの匂いがしてこなかった。
「お母さん何かあったのかな」
 と中年男は不安になった。
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