孤独な蟹

文字数 229文字

 孤独な蟹が、虚空へ向かって、鋏を必死に動かしていた。砂浜を散歩していた神様が、偶然それを見つけて、
「何をしているの」
 と孤独な蟹に尋ねた。
 孤独な蟹は、
「水平線をちょん切ろうとしています」
 と答えた。
「どうしてそんなことするの」
 と神様は尋ねた。
 孤独な蟹はただ、
「色々あって」
 とだけ答えた。
 神様は孤独な蟹を拾い上げ、自分の家へ連れ帰った。
 蟹は孤独ではなくなった。
 蟹は今、神様の家で、神様の眉毛を整えたり、封筒の封を開けたりする仕事を任されている。
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