第46話
文字数 1,575文字
夕方に寝たせいか、何やら夜の時間に目覚めてしまった。
……ミロク、仏教のおさらいをしなさい。
夢からお告げがあった僕は仏教の修行を最初からやり直そうと思った。
「……宗泉寺に行ってみようかな」
そう思い立った僕は次の日、新幹線に乗って、実家まで帰って来ていた。
「母さん、ただいま」
ガラガラガラと玄関のドアを開ける。
「まぁ、ミロク?? どうしたの一体。電話もしないで急に来るなんて」
母さんはびっくりしていた。
「うん、ちょっとお寺に用があってね。急に来てごめん……」
「あら、そうなの? お前にしては珍しいね。急に信心に目覚めたのかい? お前もようやく仏様のお気持ちがわかる年頃になったんだねぇ。ま、そういうことなら上がっていらっしゃい」
「ほっといてくれよ、母さん」
僕はアタッシュケースを昔の僕の部屋に置いた。
「はあ、疲れた」
僕はお風呂でシャワーを浴び、仏壇で仏様に手を合わせてから布団で休んだ。
……思い返せば。
今まで色々あったよなあ……。
誰が見ても何も無いように見える人生だ。不登校になってから十年。引きこもりの生活だったけれど心の中では本当に色々あった気がする。そうだ、内面の世界が重要なんだ。僕は内面の世界で、大冒険をしていたんだ。
「そうか」
「一番大事なのって内面だったんだ……」
僕は引きこもってはいたけれど、実は内面を見つめる修行をしていたんだ。
……仏教の修行をずっとしていたんだなあ。
「そう思うと、引きこもってたことも悪くなかった気がするんだよな」
ーーそう思えれば誰も苦労はしないよ。
……。
(いいですか……このことをよく覚えていなさい……どんな場所でもどんな境遇でも、悟ることができるのです……これを衆生と呼びましょう)
(お釈迦様、衆生とはこのような意味だったのですね、命ある全てのもの、人間をはじめとする全ての生き物は全て救われるようになっているんだ)
……全ての人間は救われる資格がある。
「もしかしたら、僕にも救いというものがあるのかな」
よし、こうしてても始まらない。宗泉寺に行ってみよう。
僕は服に着替えて、宗泉寺へと向かった。
歩いて三十分の距離にお寺はある。そういえば夢の中では念仏を唱えて向かったんだった。
「はは、それにしても面白い夢だったなぁ」
……。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
しばらくするとお寺が見えてきた。
「あら、ミロク君。いらっしゃい」
僕はこの言葉に驚きを隠せなかった。
「え!? おばあちゃん、僕のことを覚えていらっしゃるんですか?」
「あら、当然じゃない。ミロク君、ハンサムだったもの。面影が今でも残っているわ」
「あ、ありがとうございます」
僕は素直にお礼の言葉を述べた。
「千佳に会いに来たの? あの子はねえ、都会に行ってしまったのよ。三年前にね、会いに来てくれたなら残念なことだわ」
「いえ……」
僕は、仏教の修行に来ただけなので……と言うと千佳のおばあちゃんは、お寺の住職に会わせてくれた。
(おう、ミロク!)
(俺の寺に何の用なんだ?)
「チカ!?」
……。
「空耳か……」
しばらくすると住職さんが仏堂の間に入れてくれた。
「いらっしゃい、参拝をご希望ならご自由にどうぞ。教えを聞きたいなら夜にやっているので、またいらっしゃってください」
僕は仏像の前で坐禅を組まさせてもらうことになった。
「はい、ありがとうございます」
すると、住職が驚いた顔で言った。
「君……その歳で結跏趺坐を組めるのかい!? 驚いた、千佳と一緒だねえ、いやあ最近は仏教をやる若者がめっきり減って、残念な思いだったのだけれど、君のような若者がいれば未来に希望が持てるねえ。ありがとう。仏教に興味を持ってくれてねえ」
「はあ、こちらこそ……僕も頑張ります」
そうして、話が終わり、僕は仏像の前で坐禅を組んでいた。
……ミロク、仏教のおさらいをしなさい。
夢からお告げがあった僕は仏教の修行を最初からやり直そうと思った。
「……宗泉寺に行ってみようかな」
そう思い立った僕は次の日、新幹線に乗って、実家まで帰って来ていた。
「母さん、ただいま」
ガラガラガラと玄関のドアを開ける。
「まぁ、ミロク?? どうしたの一体。電話もしないで急に来るなんて」
母さんはびっくりしていた。
「うん、ちょっとお寺に用があってね。急に来てごめん……」
「あら、そうなの? お前にしては珍しいね。急に信心に目覚めたのかい? お前もようやく仏様のお気持ちがわかる年頃になったんだねぇ。ま、そういうことなら上がっていらっしゃい」
「ほっといてくれよ、母さん」
僕はアタッシュケースを昔の僕の部屋に置いた。
「はあ、疲れた」
僕はお風呂でシャワーを浴び、仏壇で仏様に手を合わせてから布団で休んだ。
……思い返せば。
今まで色々あったよなあ……。
誰が見ても何も無いように見える人生だ。不登校になってから十年。引きこもりの生活だったけれど心の中では本当に色々あった気がする。そうだ、内面の世界が重要なんだ。僕は内面の世界で、大冒険をしていたんだ。
「そうか」
「一番大事なのって内面だったんだ……」
僕は引きこもってはいたけれど、実は内面を見つめる修行をしていたんだ。
……仏教の修行をずっとしていたんだなあ。
「そう思うと、引きこもってたことも悪くなかった気がするんだよな」
ーーそう思えれば誰も苦労はしないよ。
……。
(いいですか……このことをよく覚えていなさい……どんな場所でもどんな境遇でも、悟ることができるのです……これを衆生と呼びましょう)
(お釈迦様、衆生とはこのような意味だったのですね、命ある全てのもの、人間をはじめとする全ての生き物は全て救われるようになっているんだ)
……全ての人間は救われる資格がある。
「もしかしたら、僕にも救いというものがあるのかな」
よし、こうしてても始まらない。宗泉寺に行ってみよう。
僕は服に着替えて、宗泉寺へと向かった。
歩いて三十分の距離にお寺はある。そういえば夢の中では念仏を唱えて向かったんだった。
「はは、それにしても面白い夢だったなぁ」
……。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……」
しばらくするとお寺が見えてきた。
「あら、ミロク君。いらっしゃい」
僕はこの言葉に驚きを隠せなかった。
「え!? おばあちゃん、僕のことを覚えていらっしゃるんですか?」
「あら、当然じゃない。ミロク君、ハンサムだったもの。面影が今でも残っているわ」
「あ、ありがとうございます」
僕は素直にお礼の言葉を述べた。
「千佳に会いに来たの? あの子はねえ、都会に行ってしまったのよ。三年前にね、会いに来てくれたなら残念なことだわ」
「いえ……」
僕は、仏教の修行に来ただけなので……と言うと千佳のおばあちゃんは、お寺の住職に会わせてくれた。
(おう、ミロク!)
(俺の寺に何の用なんだ?)
「チカ!?」
……。
「空耳か……」
しばらくすると住職さんが仏堂の間に入れてくれた。
「いらっしゃい、参拝をご希望ならご自由にどうぞ。教えを聞きたいなら夜にやっているので、またいらっしゃってください」
僕は仏像の前で坐禅を組まさせてもらうことになった。
「はい、ありがとうございます」
すると、住職が驚いた顔で言った。
「君……その歳で結跏趺坐を組めるのかい!? 驚いた、千佳と一緒だねえ、いやあ最近は仏教をやる若者がめっきり減って、残念な思いだったのだけれど、君のような若者がいれば未来に希望が持てるねえ。ありがとう。仏教に興味を持ってくれてねえ」
「はあ、こちらこそ……僕も頑張ります」
そうして、話が終わり、僕は仏像の前で坐禅を組んでいた。