第27話
文字数 1,355文字
そして夜になった……。
噂のその妖怪とやらを拝みに僕とチカはこっそりお寺を抜け出すことに成功をする。
「謙信には一緒に行くのは断られたけど、こうやって夜に外に出るのはやっぱり怖いもんだなあ」
「だけど、本当にそんな妖怪が出るのかなあ?」
「だな、出ないほうがいいとは俺も思うけど、もしそんなものがいたとしたら退治しちゃった方が町民の不安も解消されるからな、これも修行のうちになるって」
「修行ねえ、戦国時代って妖怪が多かったらしいからリアルだなあ、落武者みたいな奴だったりして……」
「……まさか、へへ」
チカは何かにビビっている様子だ。
ま、とにかく行ってみようぜ、とチカが先を急がす……せっかちさんだなあ。
そして僕らは妖怪が出るという噂の神社にたどり着いた。
ここか……と僕は神社の御神木がある近くの茂みに隠れて様子を見ることにした。
「さあ、来るなら来い!」
僕は手に力が入る。手のひらが汗でいっぱいになる。チカも神社の周りの様子をじーっと凝視している。
すると、旋風が吹き、辺りの様子が変わる。
薄暗い青紫色の炎が神社の周りに充満する。
「おい、なんか様子がおかしくないか?」
シーッと僕は唇に指を当てる。
すると、なんだか囁き声が聞こえてきた。
「……信長のやつはどうだった?」
「魔王様の為に、信長のやつに取り憑いて天下を乗っ取るということに協力するという話はどうなったのだ?」
「分かっている、だから喧嘩騒ぎを起こして奴の様子を探っていたんじゃないか、そう焦らすでない……」
「天下を取ることに協力するといった話は嘘ではない、だがな……あやつ、ただの男ではないぞ。下手な隙あらば斬り殺されないと思うような眼力でこちらをたまに見てくる。なかなか尾張という国は一筋縄ではいかないと思うのだが……」
「そんなことでどうする」
……。
「おい、そこにいるのはだれだ!?」
!!
見つかった。チカ逃げるよ! と声をかけようと横を見ると……チカは既にいなかった。
「あいつ!」
僕は一心不乱に神社から全力で逃げ出すのであった。
神社から大分に離れたところにチカはいた。
「おい!」
「ひぃ! なんだミロクか……」
チカはフーッと息を吹く。
「なんだ、じゃないよ。やっぱりお前はこういう奴だったんだな。見損なったぞ、もうお前と一緒には二度とこんなことはしないからな」
「ごめん、ごめん。だって俺は妖怪が出るって言うからここまで調査に来ただけなんだ。まさか本物の武士が出るとは思わなかったんだよ。悪かったよ、ミロク……」
知るか! と僕はそっぽをむく。ごめんごめんとチカはひたすら、謝ってくる。
「でも、やっぱりあの二人が犯人だったんだな、ミロク。妖怪なんてやっぱりこの世にはいないんだよ。あの魔王とかが見えたという話も何かの夢さ、あんま気にすんな!」
「そうなのかなあ……」
「でもさ、あいつらなんか面白いこと言ってたな、魔王の天下取りに協力するとかなんとか……」
それだよ、と僕はチカには教えておこうと話す。
「あいつら、魔王様は尾張国の清州城というところに行くって言ってた。そこで信長に一生取り憑くって……」
「へ? 何言ってるんだ。魔王?」
「だから、清州城を何とかすればこの乱世は無くなるのかも知れない」
「よし、信長……いや、魔王に会いに行こう」
噂のその妖怪とやらを拝みに僕とチカはこっそりお寺を抜け出すことに成功をする。
「謙信には一緒に行くのは断られたけど、こうやって夜に外に出るのはやっぱり怖いもんだなあ」
「だけど、本当にそんな妖怪が出るのかなあ?」
「だな、出ないほうがいいとは俺も思うけど、もしそんなものがいたとしたら退治しちゃった方が町民の不安も解消されるからな、これも修行のうちになるって」
「修行ねえ、戦国時代って妖怪が多かったらしいからリアルだなあ、落武者みたいな奴だったりして……」
「……まさか、へへ」
チカは何かにビビっている様子だ。
ま、とにかく行ってみようぜ、とチカが先を急がす……せっかちさんだなあ。
そして僕らは妖怪が出るという噂の神社にたどり着いた。
ここか……と僕は神社の御神木がある近くの茂みに隠れて様子を見ることにした。
「さあ、来るなら来い!」
僕は手に力が入る。手のひらが汗でいっぱいになる。チカも神社の周りの様子をじーっと凝視している。
すると、旋風が吹き、辺りの様子が変わる。
薄暗い青紫色の炎が神社の周りに充満する。
「おい、なんか様子がおかしくないか?」
シーッと僕は唇に指を当てる。
すると、なんだか囁き声が聞こえてきた。
「……信長のやつはどうだった?」
「魔王様の為に、信長のやつに取り憑いて天下を乗っ取るということに協力するという話はどうなったのだ?」
「分かっている、だから喧嘩騒ぎを起こして奴の様子を探っていたんじゃないか、そう焦らすでない……」
「天下を取ることに協力するといった話は嘘ではない、だがな……あやつ、ただの男ではないぞ。下手な隙あらば斬り殺されないと思うような眼力でこちらをたまに見てくる。なかなか尾張という国は一筋縄ではいかないと思うのだが……」
「そんなことでどうする」
……。
「おい、そこにいるのはだれだ!?」
!!
見つかった。チカ逃げるよ! と声をかけようと横を見ると……チカは既にいなかった。
「あいつ!」
僕は一心不乱に神社から全力で逃げ出すのであった。
神社から大分に離れたところにチカはいた。
「おい!」
「ひぃ! なんだミロクか……」
チカはフーッと息を吹く。
「なんだ、じゃないよ。やっぱりお前はこういう奴だったんだな。見損なったぞ、もうお前と一緒には二度とこんなことはしないからな」
「ごめん、ごめん。だって俺は妖怪が出るって言うからここまで調査に来ただけなんだ。まさか本物の武士が出るとは思わなかったんだよ。悪かったよ、ミロク……」
知るか! と僕はそっぽをむく。ごめんごめんとチカはひたすら、謝ってくる。
「でも、やっぱりあの二人が犯人だったんだな、ミロク。妖怪なんてやっぱりこの世にはいないんだよ。あの魔王とかが見えたという話も何かの夢さ、あんま気にすんな!」
「そうなのかなあ……」
「でもさ、あいつらなんか面白いこと言ってたな、魔王の天下取りに協力するとかなんとか……」
それだよ、と僕はチカには教えておこうと話す。
「あいつら、魔王様は尾張国の清州城というところに行くって言ってた。そこで信長に一生取り憑くって……」
「へ? 何言ってるんだ。魔王?」
「だから、清州城を何とかすればこの乱世は無くなるのかも知れない」
「よし、信長……いや、魔王に会いに行こう」