第39話
文字数 1,506文字
「うう、体が……やはり慣れないものですね」
焦らないことですよ、ミロク……と観音様にたしなめられ僕は毎日、少しずつでも禅の形をマスターしようとしていた。
「ミロク……いいですか、最初に調身……体を整えることが大事なのです」
「何も考えてはいけません。坐禅中に色々なことを思いますが、難しいですが、色々なことを思う……思ったままにしておくと、よく言われています。一つのことを思うと、次のことを思います。また一つのことを思う。思いがどんどん膨らんでいく……気がついたら思いを断ち切ると言いますか、ストンと辞める。浮かんだら落とす。そういう形で坐禅に入ります……」
「丹田……おへその下のお腹を前に突き出すような感じで、胸もやや張り、背筋も伸ばします」
「後ろから誰かに見ていただいてるイメージで、時々チェックすることが必要です」
「目は閉じない、目は開けたまま、半眼で……やや斜め下の方に視線を落ろし、あまり下げすぎないように、また目を向かないように、ゆったりした目の位置に収めます。次に調息です。息を調える。鼻の息を微かにして、ゆったりとゆっくりと息を吐きます。吐ききったところで静かに息を吸います。ゆっくり吐いてスーッと吸う。口を閉じて、鼻でそれを致します。呼吸の長さはその人、その人に合わせて、無理にならない程度の呼吸を致します。この時に力むと肩に力が入ったり、致します。背筋は伸ばしつつ、全身を脱落して、力を抜いてゆったりと安定させます。息を調える。最後に調心、心を調える……」
「調身、調息、調心。最初に体を調え、息を調え、心を調えるのが大事です」
僕は言われた通りにした。坐禅の形を組む。
「いいですか、ミロク。こういうことをイメージしてください」
……? 僕は坐禅をしながら静かにその声を聞いていた。
「何も考えていない人はモテます」
!?
「スポーツなどで体を思いっきり、動かしている人は、何故か安心感があるでしょう? 何も考えていないからです。そういう人は怖くないのです。いいですか、このことをよく聞いてください」
「この人は何を考えているのか? と疑うから人付き合いが怖くなるのです。お互い、この感覚で付き合うと、コミュニケーションが全く、うまく行きません……。人は考え事が怖いのです。隠し事をするから、うまく行かない。隠し事をしない事です。いいですか……。ミロク? 私に何か隠している事はございませんね?」
「ご、ございません!!」
「本当ですね?」
「は、はい!!」
僕は背筋が凍った。な、なるほど、考えているから人は怖い。人は何を考えているか分からない。だから人付き合いがうまく行かない……。何も考えていない人は確かに安心感がある。僕は観音様に、そういう境地を目指せと言われている気がしたのだった。
「これは、人と付き合っていく上での真理だと私は、思います。何も考えていない人は怖くない。それだけで、信頼されると言いますか、私の言っている事が、分かりますね?」
分かります! と返事をして、僕は坐禅に集中する。観音様はたまにさらりと怖い事を言う……。僕は、涙が出そうになってしまった。
「それさえ、マスターできればあなたはいつか女の子にモテモテになるでしょう、いいですね?」
「はい!!」
僕は尊敬にも似た気持ちを観音様に抱き、座禅。頑張ろう……と固く思うのだった。
「よろしい、それでは明日は魔と縁を切る方法を教えます。この世は本当に魔が多い……それを打ち破るにはどうすればいいか教えていきます……」
魔と縁を切る方法……。そ、それは一体、どういった事だろう……あ、余計なことは考えない……僕はフーッと息を吐くのであった。
焦らないことですよ、ミロク……と観音様にたしなめられ僕は毎日、少しずつでも禅の形をマスターしようとしていた。
「ミロク……いいですか、最初に調身……体を整えることが大事なのです」
「何も考えてはいけません。坐禅中に色々なことを思いますが、難しいですが、色々なことを思う……思ったままにしておくと、よく言われています。一つのことを思うと、次のことを思います。また一つのことを思う。思いがどんどん膨らんでいく……気がついたら思いを断ち切ると言いますか、ストンと辞める。浮かんだら落とす。そういう形で坐禅に入ります……」
「丹田……おへその下のお腹を前に突き出すような感じで、胸もやや張り、背筋も伸ばします」
「後ろから誰かに見ていただいてるイメージで、時々チェックすることが必要です」
「目は閉じない、目は開けたまま、半眼で……やや斜め下の方に視線を落ろし、あまり下げすぎないように、また目を向かないように、ゆったりした目の位置に収めます。次に調息です。息を調える。鼻の息を微かにして、ゆったりとゆっくりと息を吐きます。吐ききったところで静かに息を吸います。ゆっくり吐いてスーッと吸う。口を閉じて、鼻でそれを致します。呼吸の長さはその人、その人に合わせて、無理にならない程度の呼吸を致します。この時に力むと肩に力が入ったり、致します。背筋は伸ばしつつ、全身を脱落して、力を抜いてゆったりと安定させます。息を調える。最後に調心、心を調える……」
「調身、調息、調心。最初に体を調え、息を調え、心を調えるのが大事です」
僕は言われた通りにした。坐禅の形を組む。
「いいですか、ミロク。こういうことをイメージしてください」
……? 僕は坐禅をしながら静かにその声を聞いていた。
「何も考えていない人はモテます」
!?
「スポーツなどで体を思いっきり、動かしている人は、何故か安心感があるでしょう? 何も考えていないからです。そういう人は怖くないのです。いいですか、このことをよく聞いてください」
「この人は何を考えているのか? と疑うから人付き合いが怖くなるのです。お互い、この感覚で付き合うと、コミュニケーションが全く、うまく行きません……。人は考え事が怖いのです。隠し事をするから、うまく行かない。隠し事をしない事です。いいですか……。ミロク? 私に何か隠している事はございませんね?」
「ご、ございません!!」
「本当ですね?」
「は、はい!!」
僕は背筋が凍った。な、なるほど、考えているから人は怖い。人は何を考えているか分からない。だから人付き合いがうまく行かない……。何も考えていない人は確かに安心感がある。僕は観音様に、そういう境地を目指せと言われている気がしたのだった。
「これは、人と付き合っていく上での真理だと私は、思います。何も考えていない人は怖くない。それだけで、信頼されると言いますか、私の言っている事が、分かりますね?」
分かります! と返事をして、僕は坐禅に集中する。観音様はたまにさらりと怖い事を言う……。僕は、涙が出そうになってしまった。
「それさえ、マスターできればあなたはいつか女の子にモテモテになるでしょう、いいですね?」
「はい!!」
僕は尊敬にも似た気持ちを観音様に抱き、座禅。頑張ろう……と固く思うのだった。
「よろしい、それでは明日は魔と縁を切る方法を教えます。この世は本当に魔が多い……それを打ち破るにはどうすればいいか教えていきます……」
魔と縁を切る方法……。そ、それは一体、どういった事だろう……あ、余計なことは考えない……僕はフーッと息を吐くのであった。