第19話 お花見と短歌
文字数 1,248文字
九尾の狐先生をお招きする前に……
現在、私の生息地ではすっかり桜は終わってしまいました。
今（4/27）は北海道の網走、釧路あたりが満開でしょうか。
桜の話題は時期を逃した感がありますが、ゆるく眺めてください。
天気がいいので、三匹は村をお散歩しながらお花見。
妖怪は「匹」と数えるらしいので、妖怪もどきの海ちゃんも「匹」で。
最近、桜を題材にした短歌を見たな。
君じゃない人と歩けば降りそそぐこれは祝福の桜ではないな
（千種創一）
なんか切なくて素敵だネ。
ＢＬ設定でもいいかも、妄想がふくらむ。
ウサギはＢＬ好き。
このお方の短歌でな、めちゃくちゃ気に入っている一首があるんじゃ。
人生が何度あっても間違えてあなたに出会う土手や港で
（千種創一）
この短歌にわしは撃ち抜かれてのう……
「間違えて」も「土手や港で」も、たまらんのじゃ。
短歌はパラレルな万華鏡みたいじゃな。（意味不明）
いいねえ……
ウサギのお気に入りの短歌もご披露するよ。
愛された犬は来世で風になりあなたの日々を何度も撫でる
（木下龍也）
おお……！
震えがくるくらい良いな。
俺がグッときた短歌はこれ。
奪われた 心の一部は 今きみの もとで元気に やっていますか
（土門蘭）
魔法からなんで呪いに変わったの？ あなたの名前 あなたの笑顔
（谷川電話）
いとおかし……心のミットにド直球じゃ、痺れるわい。
恋愛あるあるだ、海ちゃんはやっぱりロマンチストだネ。
……あとはよ、短歌じゃねーけど、お気に入りのフレーズがあるんだ。
ﾓｼﾞﾓｼﾞ
海ちゃん、焦らさないで、リリース、はよ。
欲しがるネ、黒猫さん。
みんな、笑うなよ！
愛されることには失敗したけど、愛することなら、うまくゆくかも知れない。
そう、きっと、素晴らしい泡になれるでしょう。
（寺山修司『人魚姫』）
いいではないか……！
汚れた心が浄化されるようじゃ。
（海ちゃんは、なんだかんだ言って、人魚の姫ちゃんを気にかけているんだネ）
夕暮れ時になり、今度は悪魔の兄ちゃんと鬼ちゃんがお花見デート。
ウサギさんたち、お気に入りの短歌の話をしたんだって。
俺も好きな短歌あるよ。
ゆうぐれの森に溺れる無数の木 つよく愛したほうがくるしむ
（木下龍也）
じゃあ僕も同じ作者で。
後ろから抱きしめながらするキスはあなたがくるしそうでうれしい
（木下龍也）
そのまま後ろ向いていて。
こんな感じかな？
待って、こんなところでだめだって、まだ日が落ちていないし、あっ。
一方その頃。
タケノコご飯と、菜の花とアサリのさっと煮を仕込み中のウサギ。
ふと虫の知らせで耳がぴくぴく、窓の外を見やると……
あっ、兄ちゃんと鬼ちゃん、人目もはばからず桜の下であんなことを……！
海ちゃんに見られたら大変、厳重注意しとかなきゃ。
ラストに、桜といえばこの短歌じゃな。
「はなびら」と点字をなぞる ああ、これは桜の可能性が大きい
（笹井宏之）
この作者は身体表現性障害という難病を抱えておっての、２６歳のときインフルエンザにより心臓麻痺で夭折したそうじゃ。
今も天国で、素敵な短歌を詠んでいるんじゃろうな……
