第10話

文字数 851文字

「おじさん、いい匂いがしてる。なんだかお腹すいてきたなー」
「いい匂いだろう。おじさん特製の鍋だ。野菜も肉もたっぷりある。たくさん食べろ。大きくなるにはたくさん食べないとダメなんだぞ」
「はい、いただきます……うん、おいしい」
 
 ようやく、リクは警戒心を解いてくれたようだ。
「おじさんはすごいね。なんでも一人でできちゃうんだね。魔法使いみたいだ」
「魔法使い?」
「うん。お母さんに読んでもらった絵本があるんだ。なんでも願いが叶うランプの使い」
「あぁ、その話ならおじさんもちょっと知ってるかもな。ランプの使いの話……」
「へー、そうなんだ。でも魔法使いっていないよね……いたらいいなって思うけど……」
「そうだな、いないかもな。人間には知恵というものがあってな、ほかの動物より頭で物を考えて答えを導き出すことができるんだ。その答えが常に正しいとは限らないが……自分の頭で考えて行動することが大事なんだ。リクもどうしたらいいかわからなくなった時は、落ち着いてまず、考えろ。一日、一日、無駄な日はないんだ。人は幾つになっても、いろんな経験をして成長していくんだよ。それでも、悩んでしまってどうしても答えがわからない時は友達に相談するんだよ。いいか、ここが大事なとこだ。一人で抱え込んではいけない。友達を頼れ。そのための友達でもあるんだからな」
「うん、わかった」
「なぁ、リク。おじさんと出会ってたった二日だが、出会う前に、こんな未来を想像してたか?」
「してない」
「そうだろ。ほら、リクはちゃんと成長してるじゃないか。知らないおじさん家で風呂に入って食事して泊まろうとしている」
「うん、ほんとだね。僕はちゃんと考えておじさんと友達になった。友達になったから今ここにいる……ってことだね」
「そうだ。リクは頭がいいな。よし、ご飯を食べ終わったら歯磨きしてトイレにいって寝なさい。おじさんの布団の隣だ。湯たんぽ入れといたからゆっくり休めよ」
「湯たんぽ?」
「知らないのかーーまぁ、布団に入ればわかるさ。おやすみ」
「おやすみなさい」
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