第13話

文字数 536文字

 それから二人は自宅に戻り身支度をして、軽トラに乗り商店街を目指した。昨晩はぐっすり眠れたようだ。心なしか晴れやかな顔をしているように見えた。商店街の駐車場に車を停めると、リクは自分からサッサと歩き出した。ポケットにはチョコレートが入っている。今日から開店している店がほとんどで、町は朝から活気づいている。リクは暖かみのある商店街に少しホッとしたようだった。
中央の自販機の辺りまで来ると、リクがいきなり走り出した。
「あっ、お母さんだ」
リクは、髪が肩くらいのピンクのワンピースにショートコートを羽織った女性に飛びついた。
「お母さん、おかえり」
「あっ、リク……ただいま。リクのことを探していたらメモを見つけて……待ってたのよ」
「あのね、あのおじさんが親切にしてくれたの……」 
リクは振り返って指をさしたがだれもいなかった。
「あれ?おじさん……?……」
「リク、あなたが無事ならいいわ。さぁ、行きましょう。今日は泊まれるところがあるから……さあ……」
 玄太はそっと車の陰に隠れて親子の前には現れなかった。
「リク、あばよ。母ちゃんの手を離すなよ……戻ってくるんじゃねえぞ」
玄太は手を引かれながら何度も振り返るリクを、後ろ姿が見えなくなるまで見送った。
(もしもの時は友達を頼れよ……)
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