第7話

文字数 694文字

 玄太は家に戻るとビニール袋に板チョコを一枚入れて玄関においた。それからストーブをつけてコタツに潜り込んだ。
(もうすぐ昼か……何か温かいものでも食べようかな……)
 時計を見ながらそんなことを考えてみるが、リクの顔が頭に浮かび、やはり食べる気にはならなかった。体が暖まってくると、年末からあまり眠れなかった疲れが一気に睡魔として襲ってきた。玄太はコタツに入ったまま、いつの間にか寝入ってしまった。
 玄太はゆり子の夢をみていた。二人で裏山に登り畑作業をしている。すると突然、青空が真っ暗になり、雷雨になる。そして畑はみるみる水が溜まり大きな沼が現れ、ゆり子と二人、沼に吸い込まれていくーーという夢だ。それは一瞬怖い夢のようだが、なぜか沼に吸い込まれていく二人は楽しそうに笑っているのだ。ゆり子の体が見えなくなり、次は自分が吸い込まれるーーというところで胸が苦しくなり目が覚めるのだ。
 玄太は大声を出した自分に驚いて目を開けた。苦しくて肩で息をしていた。
(またあの夢か……)
 玄太は水道からコップ一杯の水を飲んだ。
 時計を見ると二時を回っていた。
(おっと、いかんいかん……寝過ぎてしまった。おやつを買いに行かないと……)
 玄太は玄関を出ると空を見上げた。雪は止んでいた。
(今夜は冷えそうだな……ゆり子、行ってくるよ)
 車のウィンドウに積もった雪を手袋で払いエンジンをかけた。国道に車は一台も走っていなかった。正月から雪の中、出かける人はそうそういないといことだ。道はすいていて、ますますリクのことが心配になった。三時ちょっと前に商店街に着いた。
(どうかリクがいませんように……)
心の中で祈った。
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