紅葉の樹の下で

文字数 624文字

 朝日の眩しさと暖かさの中で目が覚める。
 カーテンを開けると空は高く、まるで海のような青さで澄んでいるのが窓越しにでもはっきりとわかる。

 夢であなたに会えなかった寂しさに少し胸を焦がした。
 でも、大丈夫。すぐにあなたに会えるから。

 昨日より、一昨日より、過去の私より可愛くなっていく今の私を見てほしい。
 鏡に映る私を眺める。輝いているだろうか。 
 あなたの目に映る私はキラキラしているだろうか。
 自信を持って。強く自分に暗示をかける。
 あなたに解けることのない魔法をかけるために、念入りにお化粧をする。
 あなたの好きな洋服はリサーチ済み。
 その中でもこの服が一番私を綺麗に見せるのはわかっている。

 家を出て、待ちあわせ場所である駅のそばのもみじが赤々と美しく彩る樹の下で、あなたは近付いてくる私を見つけ、私から目線を外せずに、きっと燃えるように頬を紅くして私を見つめているだろう。待ち合わせ時間に少し遅れた私は、伏し目がちにあなたに駆け寄り、はにかみながらあなたを見上げて、゛お待たせ゛と笑顔で話しかける。゛なぜ、そんなに頬が赤いの?゛と私が尋ねると、あなたは゛寒さのせいさ゛と顔を背け答える。
 今日は朝から暖かい日なのに。

 想像はどんどんと大きくなる。私の胸の高鳴りと同じように膨らんでいく。
 切なさで息が出来ないような気持ちになる。

 早く、早く、あなたに逢いたい。
 私の心を適切な温もりで柔らかく溶かしていくあなたの声を聴かせてほしい。
 
 
 
 
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