陽はまた昇る

文字数 784文字

 いつも共通の話題で盛り上がり尽きることを知らない。生き生きとしていて何物にも代え難い至福の時間。嗜好がよく似ていると改めてひしひしと感じる。お互いにその雰囲気を失わないように大事にしている。下向きな気持ちは欠片ほどもなく、一秒でもその持てる時間を大切にしたいと心から思う。

 育ってきた環境は異なるが、内面に育んできた、世の中の善悪論のような哲学的な思考が似通っている。とても不思議な感じがする。紆余曲折を経て、成熟しきった精神の交歓の時期が偶然に一致したのだろうか、それとも生まれ持つ魂の有り様が似ていたからであろうか、まるで見当はつかないが、心が癒されていることは真実として存在する。

 当然、お互い成熟した大人であるから、意見が分かれ、ぶつかり合うと予測できる状況では回避する術を身に付けている。だから、衝突を避けるためにどちらかに合わせてしまうような側面はあるかもしれない。ただ、それを差引き勘定しても、似通っている部分が大半を占有し心地が良い。



 そんなあなたと親しみあえる時間はもう残り少ない。

 あと、どれくらいあなたの姿を見ることができる。
 あと、どのくらい親しく話せる。
 あと、どれほど笑いあえる。
 あと、どれだけ悲しめばいい。
 
 残された時間はわずかなのに、每日が早足で駆け抜けていく。僕の辛苦の想いなど気に留めることなくお構いなしに。

 陽はまた昇る。とうとう時計の秒針すら直視できなくなる。

 現実をまだ受け容れることができない。あなたがいなくなることを心が拒絶する。それでも受け容れなければならないときは必ず訪れる。

 ここにいつまでもいてほしい
 ここにいつまでもいてほしい
 いつまでも

 寂寞の想いが五月雨のように降り止まない。

 心に咲いた美しい花が春を忘れてしまったように枯れてしまう。
 
 あなたといつまでも共に過ごすことができる人を心からとても羨む。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み